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73、除雪の決意

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「ニチカは私だけど?」

 もぐもぐ団子を食べながらニチカが言う。

 この子、アルベルトの前だけど、すっかり素が出ているみたいだけどいいのかしら。

 まあ、アルベルトも団子食ってるから別にいいか。

 レベッカはニチカと私を交互に見ると、少し話せないかと提案してきた。別に断る理由もないので、ニチカの襟を摘んでレベッカと共に少し離れた場所に移動した。

「こんなこと私が口にするべきではないのですが……」

 レベッカは言いづらそうに口を開いた。

「実は、私と同じクラスのある方が、レイシール様とニチカ樣のことでおかしなことを言っていらして、もし、お耳にされていたらと思うと……」
「それって、私が悪役令嬢の命令で髪飾りを盗んで壊したってやつ? 新学期になってから学園の中で噂になっているんでしょ」

 ニチカが苛つきを隠さずに言った。

「悪役……? ええ。そのような内容のことを……もちろん、誰も信じてはおりませんわ。万一、レイシール様のお耳に入ったとしても、そんなことを信じている者はいないと知っていただきたく」

 ふむ。

 レベッカは気を遣って伏せているけれど、私とニチカの悪評を振りまいているというのはリリーナ・オッサカーに違いない。

「何か誤解していらっしゃるのでしょうけれど、少々変わった方で、忠告しても聞き入れてもらえず……ご不快に思われるでしょうが、どうか寛大な御心で穏便に収めていただけないでしょうか」

 レベッカの反応を見るに、リリーナはあまりクラスに馴染んでいないようだ。
 それでも、レベッカは公爵令嬢の怒りを買うかもしれないクラスメイトを案じてこんなお願いをしているんだな。親切な人だわ。

 見る目あるなジョージ!

「なんで、悪役令嬢が何もしないのに、リリーナが私を陥れようとするのよ」

 レベッカを見送った後で、ニチカがぶつぶつとそんなことを呟いた。
 私はそれを聞いて首を傾げた。

 ニチカはリリーナを知っているのだろうか。

 そういえば、このゲームは流行った当時結構な数の関連書籍が出たのよね。私も設定資料集やノベライズのいくつかは購入したけれど、すべてに目を通した訳ではない。

 そうそう。ゲームの世界のその後を描くそれぞれのルートの後日談が出た時も、攻略し終えた対象とのイチャイチャに興味がないからスルーしたんだ。

 西ルートの後日談であれば、ガウェインの従兄弟のリリーナが登場した可能性はある……?

 もしかしたら、ニチカは後日談にも目を通していてリリーナを知っているのかもしれない。
 そのニチカがリリーナの態度が不自然だと感じているのならば、やはりリリーナが転生者である可能性は高い。しかも、アホの子ニチカと違って悪意を持ってヒロインと悪役令嬢を陥れようとしている。

 そうと決まったわけではないけれど、もしもそうだとすれば。

 そんな悪意、跳ね返してみせるわ。私にはジェンスやお兄様やアンナ達、味方がたくさんいるし、雪かきで鍛えた腕と根性で、降りかかる悪意も除雪してやるから!



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