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69、お弁当を作ろう!
しおりを挟む2学期が始まって、いよいよ遠足当日がやってきた。
「よっし、やるぞ!」
私は学園の厨房の一角を借りて、お弁当作りを開始した。
「うう……お嬢様、あんな馬の骨のためにこんな朝早くから……お労しい」
手伝ってくれるアンナがさめざめと嘆いている。
「お兄様の分も作るのよ?」
だから、ジェンスのためだけじゃないわ。そもそも、私には婚約者がいるから攻略対象に興味はないよーって周りに示すために頑張るのであって、ジェンスのためじゃないから!
「昨夜のうちに下拵えはしてあるし、お米を炊いている間に卵焼きを作って~、それから~」
「うう……お嬢様、そんなに楽しそうに……やはり、あの冬の日に馬の骨を雪に埋めておくべきだった……っ!」
なんのかんのと言いながら、私とアンナはてきぱきとお弁当を作り上げていった。
「作り過ぎじゃありませんか?」
「う……」
ついつい調子に乗って時間と材料の許す限りおかずを作ってしまった。
三段の重箱×2はさすがにちょっと多かったかな?
いいや。余ったら夜食にするから!
「まあ、お嬢様のお弁当を残すだなんて、私が許しませんけどね。では、お嬢様、お気をつけていってらっしゃいませ」
アンナに送り出されて、私は重箱を両手にぶら下げて玄関へ向かった。
「レイシー? すごい荷物だな」
「俺が持つよ。まさか、これ全部、弁当か?」
待っていてくれたジェンスとお兄様が私の手から重箱を一つずつ引き取ってくれる。
「えへへ……ちょっと作りすぎちゃいました」
「レイシー、かわいい! 俺のために頑張ってくれたんだな!」
「お前のためだけじゃねぇ。調子に乗るな」
照れ隠しに小首を傾げてはにかむと、ジェンスがでれでれになる。そのジェンスの頭をお兄様が嫌そうに小突いた。
外は爽やかな秋晴れで、絶好の遠足日和だ。
他の生徒達も友達同士、或いは恋人同士で寄り添って歩いている。
あ、マリヤとテッドだ。仲睦まじいなぁ。あ、テッドが何か言ったのかマリヤが頬を膨らませてテッドをぽかぽか殴っている。テッドは笑いながらマリヤの耳元に何か囁く。途端にマリヤが真っ赤になった。
おいおい見せつけんな! よそでやれ!
ティアナは同じクラスの友達と一緒に歩いているみたい。ルイスは相変わらずデイビットと一緒だ。もっと前を歩いているのか他の攻略対象とニチカとリリーナの姿は見えない。
まあ、ニチカはどうせ後で絡んでくるような気がするな。
バイトを頑張ったご褒美にみたらし団子をわけてあげよう。
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