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52、密命!
しおりを挟む期末試験を乗り切って、いよいよ夏休みだ。
ちなみに期末試験の成績は学年で二位だった。ルイスに負けたー。くそう。
ニチカ? 知らないわ。だって、この学園、上位十位までしか名前が張り出されないんだもん。もうちょっと頑張れよヒノモント王家のプリンセス!
「レイシール、準備は出来たか?」
一緒に帰省するお兄様が迎えに来てくれる。
「じゃあね、レイシール」
「レイシール様、また!」
ティアナとマリヤに手を振って、私はお兄様とアンナと共に久々の北の領地へと舞い戻ったのだった。
領地ではお父様お母様はじめ、使用人一同が盛大に出迎えてくれた。
「おかえりレイシール。学園は楽しいか?」
「はい。とっても」
「ヒョードル。監督生としてのレイシールはどうです?」
「よくやっておりますよ。さすがレイシールです」
久々の一家団欒を過ごし、ゆったりとくつろいだ。
しかし、安穏と過ごしてばかりもいられない。夏の長期休暇は社交シーズンでもあるのだ。
うちは元々父も母も社交に熱心ではないので、どうしても出なきゃいけない催し以外はスルーしていたのだが、お兄様が学園に入学してからは両親は頑張って社交に励んでいる。次期公爵となるお兄様のためにね。学園に入学することが一人前の貴族として認められるイコール社交界デビューとなるので、今年からは私も夜会だのなんだの顔を出さなくちゃいけないのだ。
という訳で、先に派遣した使用人達が整えてくれている中央都のタウンンハウスへ一家で移動し、夜会に参加するための準備をする。
初めての夜会は大公が主催するものだ。夜会を開く権利は大公位にある家とその配下の侯爵家にしかないので、北南西の貴族は招かれるだけだ。
なんかいろいろ権力のバランスとか悪巧み防止みたいな意味合いがあるんだろうなぁ、たぶん。
「そういえば、レイシールは十歳の頃、突然ドレスをねだらなくなったのよね」
夜会の準備をしながらお母様が首を傾げる。
「その後はドレスを仕立てようとしても平民が着るような服ばかり欲しがって……いつぶりかしら、こんなちゃんとしたドレスを仕立てたのは」
白いドレスを眺めて溜め息を吐くお母様に、私は苦笑いを浮かべた。
純白のドレスの裾にはきらきら光る糸で雪の結晶が刺繍されている。身につける宝石もダイヤや青いサファイアで、まさに北の公爵令嬢といったいでたちだ。
「レイシールや。ちょっといいか」
準備を整えたところで、お父様が部屋に滑り込んできた。
「夜会の前に、お前に密命を与える」
あらやだ。北の公爵の悪巧みかしら?
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