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48、アホの子
しおりを挟むまだ短い付き合いだけれど、なんかニチカって「愚直」って感じがする。
ぶりぶり症候群を患っているのは確かだし、私に理不尽な文句を付けてきたりはするけれど、逆に言うと、これまでにされたことと言えば「きーきー」文句を言われるだけだ。
アルベルトの前で私にひどいこと言われた~とかは言うけど、具体的に罪を捏造して私を陥れようとしたことはない。まあ、まだ入学して間もないし、ニチカの人間性を知っている訳じゃないけど、私に睨まれたくらいで怯む子が、ジェイソンからハンカチを盗んだり出来ないと思うのよね。
うん。やっぱり、どう考えてもニチカに「狡猾」という言葉が似合わないのよ。
アホの子なんだもん。
「皆さん、お騒がせいたしました。ハンカチについては、ただいまイバラッキ様がご説明くださった通りです」
私はジェンスから離れて一歩前に歩み出た。
「薬につきましては、学園内で出回っているものを、私がお預かりしておりました。上級生の皆様にご指示をいただきたく、相談させていただくつもりでおりましたが」
私は掲示板をみつめた。
「どうやら、どなたかが私に悪意を持っているようですね」
ジェイソンからハンカチを盗んだことといい、明らかに私を陥れようと狙っている何者かがいる。
薬を学園の女子の間に回せば、最終的に公爵令嬢で監督生である私の元に渡ってくると予想は出来るはずだ。
「話はわかった。この件は、放課後、皆で話し合おう」
アルベルトがまとめるように声を張った。
ルイスに追っ払われて、人だかりが渋々ながらも散っていく。ニチカもどさくさに紛れて逃げていった。
「レイシール。大丈夫か? まったく俺の妹に誰がこんなことを」
お兄様は怒り心頭のようで、美しいお顔を激しく歪めて全身から冷気を噴き出していらっしゃる。
妹の私ですら凍えちゃいそうだわ。
「レイシール嬢。薬とハンカチを俺が預からせてもらうが、かまわないか?」
「あ、はい」
アルベルトに言われて、頷いた。
一応、証拠品だからね。せっかく刺繍したけど、仕方がない。
ちょっとだけ肩を落とした私を、背後からジェンスがそっと抱きしめた。
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