21 / 114
21、協力者を集めよう
しおりを挟む入学したばかりの一年生が三年生の教室へ行くと目立つ。
じろじろ見られるのを我慢しながら、私は三年Aクラスを訪ねた。アルベルトがいるから本当は嫌なんだけどね。
「あのー……」
「レイシー!俺に会いに来たのか!?」
しまった。ジェンスもこのクラスだったか。飛びかかってきたジェンスを右から左に受け流して、私は近くにいた女子生徒に声をかけた。
「あの、フレデリカ・エヒメン様はどちらでしょう?」
「なんだ?私に用か」
がっしりした体格の、中性的な印象の令嬢が私の前に立った。
フレデリカ・エヒメン。
ゲームの中では三年の監督生だった生徒だ。私が凍死要員二人を救ってしまったため、三年の監督生の席を埋めてしまった。
ゲームの中でのもう一人の三年の監督生はDクラスのピーター・コーチ。
その二人を教室から連れ出して、私は本題を切り出した。
「昨年と一昨年の朗読会についてお聞きしたいのです」
私がそう告げると、フレデリカとピーターは目を瞬いた。
「なぜ、我々に?三年の監督生に聞けばいいだろう。あそこにいるキミの婚約者とか」
フレデリカが指さす方向には、柱の陰から恨めしそうにこちらを見るジェンスがいる。
「目を合わせないようにしてください。二、三年の監督生には頼らずにやり遂げたいのです。お二人はとても優秀な方だとお伺いしたものですから、ご意見をお聞きしたいと思いまして」
「ほう。それは光栄だな。私でよければ協力するよ」
「僕も。できることがあれば言ってくれ」
フレデリカとピーターが請け合ってくれたので、私は笑顔でお礼を言った。
協力者二人、ゲットだぜ。愛媛と高知。せっかくだから香川と徳島も探そうかしら。
「レイシー!一年の教室まで送るっ……ふぐっ」
「なんだ。来ていたのかレイシール。三年の教室に何か用か?」
「もう済みましたわ。お兄さま、ごきげんよう」
Bクラスから出てきてジェンスを絞めるお兄さまに手を振って、私は三年の教室を後にした。
「おい、ホーカイド」
一年の教室に戻る途中で、担任の教師に声をかけられた。ステファン・クシマフ先生よ。たぶん、福島。
「朗読会のメンバーだがな。遅くとも、会の十日前までには決定して提出するように」
そうなのよね。まずは朗読者を各学年から選ばないといけないんだ。一応、「参加したい人は一年監督生まで」と呼びかけてもらっているが、まだ立候補はない。まあ、そのうち集まってくるだろう。
私はその時、まだ楽天的に考えていた。
13
お気に入りに追加
1,163
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢なので舞台である学園に行きません!
神々廻
恋愛
ある日、前世でプレイしていた乙女ゲーに転生した事に気付いたアリサ・モニーク。この乙女ゲーは悪役令嬢にハッピーエンドはない。そして、ことあるイベント事に死んでしまう.......
だが、ここは乙女ゲーの世界だが自由に動ける!よし、学園に行かなければ婚約破棄はされても死にはしないのでは!?
全8話完結 完結保証!!
執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
全ては望んだ結末の為に
皐月乃 彩月
恋愛
ループする世界で、何度も何度も悲惨な目に遭う悪役令嬢。
愛しの婚約者や仲の良かった弟や友人達に裏切られ、彼女は絶望して壊れてしまった。
何故、自分がこんな目に遇わなければならないのか。
「貴方が私を殺し続けるなら、私も貴方を殺し続ける事にするわ」
壊れてしまったが故に、悪役令嬢はヒロインを殺し続ける事にした。
全ては望んだ結末を迎える為に──
※主人公が闇落ち?してます。
※カクヨムやなろうでも連載しています作:皐月乃 彩月
【完結済】悪役になりきれなかったので、そろそろ引退したいと思います。
木嶋うめ香
恋愛
私、突然思い出しました。
前世は日本という国に住む高校生だったのです。
現在の私、乙女ゲームの世界に転生し、お先真っ暗な人生しかないなんて。
いっそ、悪役として散ってみましょうか?
悲劇のヒロイン気分な主人公を目指して書いております。
以前他サイトに掲載していたものに加筆しました。
サクッと読んでいただける内容です。
マリア→マリアーナに変更しました。
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
転生したら乙ゲーのモブでした
おかる
恋愛
主人公の転生先は何の因果か前世で妹が嵌っていた乙女ゲームの世界のモブ。
登場人物たちと距離をとりつつ学園生活を送っていたけど気づけばヒロインの残念な場面を見てしまったりとなんだかんだと物語に巻き込まれてしまう。
主人公が普通の生活を取り戻すために奮闘する物語です
本作はなろう様でも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる