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第7話 球拾いの天才⑽
しおりを挟む一部始終を見守っていた野分は、おそるおそる雨彦に近付いた。
「……霜枝くん、なんだか大変なことになっちゃったみたいで。ごめん、俺のせいで」
自分が勧誘して練習に参加させたせいで、雨彦がバレー部の上級生から目を付けられてしまった。野分は申し訳なくて身を縮こませた。
「いや、遅かれ早かれ言われていたよ。キャプテンは正しい」
雨彦は自嘲の笑みを浮かべた。
そんな雨彦に、野分は手を差し伸べた。
「あのさ、もしよかったら、一週間、野球部に仮入部しない?」
雨彦が顔を上げた。
「暇つぶしでもなんでも、キミが一緒にやってくれると助かる。俺達、捕球がとっても下手でさ」
野分はにっこりと笑った。
雨彦は野分と、その後ろの野球部員達を眺めた。
人数も足りない、環境も良くない、それでも、甲子園を目指すという無謀な連中。
今まで、雨彦はずっと恵まれた環境にいた。天才の兄がいて、そのおこぼれでのんびり球を拾わせてもらっていた。三寒の言う通り、甘えていたのだ。
全然違う環境に身を置いてみれば、甘えた自分を見つめ直せるかもしれない。雨彦はそう思った。
だから、差し出されたその手を、そっと握——ろうとしたのを、何故か割り込んできた晴に阻止された。
「仮、入部な」
「う、うん」
ぎろりと敵意たっぷりに睨まれて、雨彦はたじろいだ。
晴は内心イラついていた。これまで野分の練習相手は自分だけだったのに、天木田に入ってからというもの、野分は日和にかかりきりになったり、雷を口説いたり、雲居と顔を突き合わせて相談していたりと、やたらと他の男と距離が近い。
それでも、日和はアホだし雷は熱血馬鹿だし雲居は見るからに草食系がり勉だから見過ごしてきた。
が、霜枝 雨彦。てめーは駄目だ。
背は低いが球拾いで鍛え上げた均整のとれた肉体と兄譲りのすっきりと整った容姿。
さらに部活の先輩に叱責されて打ちひしがれ陰を帯びた表情を見せてくる。アピールしすぎだ。油断ならない。
「?」
何故か自分の前に立つ晴の背中を眺めて、野分は首を傾げるのだった。
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