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第7話 球拾いの天才⑷
しおりを挟む「わー、ゴミ山みたい」
案内された用具室にはさまざまなものが山と積まれていた。
「いらなくなったもん、みんなここに置くんだよ。いっぺん整理しようって言ってるんだけど会長が面倒くさがって……」
ものを避けて足を踏み入れながら木厚がぼやく。
「だー、喚起喚起」
「なるべくきれいなロッカー持っていこう」
窓を開けたり品定めをしたりと細かく動いていると、木厚が何かをみつけた声を上げた。
「あー、先週校長が血眼になって探してたクリスタル校長像。こんなところにあったのか」
「なにその無駄に金のかかったガラクタ」
木厚の手に収まった像は窓から差し込む陽光を受けてきらきら輝いた。
「へー、校長ってこんな顔してんだー」
入学式では野球部のことで頭がいっぱいだったため、校長の話など聞いてもいなかった野分が像を眺める。
その時、雷と一緒にロッカーを持ち上げた日和が木厚にぶつかった。
「わっ、ごめん」
ぶつかられた拍子に、よろけた木厚の手からクリスタル像がすっぽ抜け、開いていた窓から飛び出した。
「あーっ、やばい! 割れたら校長大激怒だっ」
木厚が慌てて身を乗り出すも、像はまっさかさまに落ちていく。
そのまま、像は地面に叩きつけられて粉々になるかと思われた。
しかし、
ぱしっ!
飛び出てきた人影が、地面に落ちる寸前にクリスタル像を受け止めた。
像を受け止めた小柄な少年は、こちらを見上げて言った。
「これ、落としたのあんたら?」
「う、うん」
「割れなくてよかったね。ここに置いておくから」
そう言って、花壇の煉瓦の上に像を置く。
「オーイ、何やってんだ。行くぞ」
背の高い生徒に呼ばれて、少年はそちらへ歩いていく。
「あ、ちょっと……行っちゃった」
野分は窓から身を乗り出して少年の去った方をみつめた。
「誰だろう、あの子」
「ああ、背の高い奴はバレー部のエースの霜枝 晴彦だ」
木厚が答えてくれる。
「あ、知ってる。天才少年って騒がれてたやつ」
雲井がぽん、と手を打った。
「今年は弟が入学してくるって噂になってたから、あの小さいのがそうなのかもな」
「へ~」
話を聞きながら、野分は少年が去って行った方をいつまでもみつめていた。
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