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第7話 球拾いの天才⑴
しおりを挟む天木田高校野球部では、今日も雷の怒声が響き渡っていた。
「だっかっらーっ!! ボールってのはストライクゾーンから外れた球のことだっつってんだろーがっ!!」
「す……酢の俳句ゾーン?」
「ストライクゾーンっ!!」
「雷先輩、落ち着いて……」
雷を宥める野分も少々疲れ気味だ。日和のアホさについていは晴は我関せずを貫いているので、必然的に雷を宥めるのは野分か雲居の役目となる。
つい先日、成り行きで入部した雲居は日和のために野球のルールをわかりやすくイラスト化する作業に励んでいたが、ふと顔を上げて言った。
「僕が思うに、口でいくら言っても無駄だと思うよ。実際に試合をしてみれば覚えられるはず」
「そんなこと言ったって、試合なんか出来る状況じゃねえだろ」
雷がぼやく通り、部員が五人、うち三名は素人という状態では試合など遠い未来の話だ。
「まあまあ、とりあえず五人集まって部に昇格できたんだし、部室も貰えたことだし」
野分は雑然とした室内を見渡して胸を張った。部室棟の物置と化していた部屋を一室空けてもらえたのだ。
旧校舎の旧野球部室から使えそうな道具を運んできて、新野球部は第一歩を踏み出したのだ。
ゆっくりだが着実に進んでいると野分は思う。素人の三人にしても、雷は素人というハンデを力ずくで覆してしまうほど運動神経がいいし、日和は打撃に関しては文句なしに天才的だ。雲居は運動神経はからきしだが、野球に関する知識は野分以上だ。
一から創った部にしては人材に恵まれていると思う。野分がそう言うと晴などには「楽天的すぎる」と呆れられるのだが、どうせならどんな状況の時も全力で楽しんだ方がいいと野分は考えている。
あと四人! とカウントダウンしているとワクワクしてくるではないか。
さあ今日も頑張って練習するぞーっと意気込みを口にしようとした時、ガラッと音を立てて部室の戸が開いた。
「野球部って、ここ?」
戸を開けた人物は興味なさそうに部室を見渡した。
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