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第4話 四人目のメンバー⑶
しおりを挟む「あ。じゃああれをやればいいんじゃない? ほら、で、でこぽん酢とレンコン?」
「デモンストレーションね!」
ここ数日ですっかり日和の言い間違いに慣れてしまっている野分を見て、そんなことばっかり上達してどうする、と晴は溜め息を吐いた。
「こんあ調子じゃ、あと六人集めるなんて無理だ。諦めろ。そして転校しろ」
「なんで晴はそういうことばっかり言うんだよ!?」
ことあるごとにやる気を削ぐような発言ばかりする晴に、野分が食ってかかる。
なんでもくそも、普通に考えて男子校に女子がいちゃだめだろう、と晴は内心で正論を吐くが、野分が聞く耳を持たないのはわかっているので黙っていた。
「よし! 霧原くん、ノックやろう! ノック!」
「わかった。どこを叩けばいい?」
「そのノックじゃなくて! 俺がボールを打って転がすから、それを捕って!」
ぎゃいぎゃいと掛け合いをしながらも、どうにか練習を始める野分達を、雷は馬鹿馬鹿しい気持ちで眺めた。
(こんな狭い場所でおままごとみたいな練習しやがって。甲子園だあ? 無理に決まってんだろ)
雷の目の前では野分がバットで打ったボールを日和がキャッチする練習が行われている。だが、日和はボールを追いかけて右往左往するばかりで、グローブでキャッチするという動きがまったく出来ていない。野分が転がしたボールを押さえて拾うのがやっとの有り様だ。
「霧原くんはバッティングはすごいんだけど、捕球がイマイチだなぁ……」
野分は軽く溜め息を吐いた。初心者の日和に苦手な練習ばかりさせていては、日和が野球嫌いになってしまう恐れもある。野分としては得意なバッティングをメインに練習させてやりたいのだが、いかんせん場所が無い。
こんな狭い場所で日和がかっ飛ばしたら、間違いなく校舎の窓が割れてしまう。人にあたる可能性もある。
どーしたもんかな、と野分が頭を抱える一方で、雷もまた頭を抱えて唸っていた。
(だああ~っ、何チンタラやってやがんだ! なんであんなボールが捕れねえんだよっ! あり得ねえだろっ!!)
日和のあまりの動きの悪さに、雷の堪忍袋の緒は今にも切れそうだった。
(だああ~っ! イライラするっ!!)
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