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第4話 四人目のメンバー⑵
しおりを挟む(なんだ? こんな校舎裏に……誰かいんのか?)
天木田の旧校舎の裏は、今は無い園芸部の名残の荒れ果てた花壇があるだけだ。喫煙目的の不良以外は滅多に近寄らない。
近づくと、やはり誰かがいるようで、会話らしき声が聞こえてくる。
「はい。じゃあ、野球に必要なのは1チーム何人?」
「え~と、投げる人と捕る人の他に……1、2、3」
雷が校舎の陰から覗いてみると、新入生らしき生徒が三人、地べたに座り込んでいる。
そのうちの一人は、まだ声変わりの来ていなさそうな声で、残る二人のうちの小柄な方になにやら教え込んでいる。
その二人に背を向けて、残る一人は面白くなさそうな顔でキャッチャーミットの手入れをしていた。
「6、7……き、9人?」
「正解! 霧原くんが人数を覚えた!」
野分は手を叩いて快哉を叫んだ。
「おい、野分」
大変な快挙を成し遂げたかのように喜ぶ野分に、痺れを切らした晴がとがった声を出す。
「霧原に構っている暇があったら、部員を集める方が先じゃねえのか?」
「う……で、でも……」
晴のもっともな突っ込みに野分は口ごもる。
もちろん、野分だって部員を勧誘してはいる。だが、
「甲子園8年連続出場の大海原高校のせいで、みんなやるだけ無駄って雰囲気なんだよね」
野分は肩を落として溜め息を吐いた。
「あーあ。どこかに“運動神経抜群にもかかわらずその粗暴な性格ゆえにアメフト部もバスケ部もクビになって「チームプレーがなんだくだらねえ。俺は一人で生きてくぜ」って斜に構えている一匹狼”みたいなやつが通りかからないかなー」
(俺のことじゃねーか!)
まるきり今の自分の状況とぴったりな野分のひとりごとに、雷は心の中で突っ込む。
(なんだこいつら? 野球部? 三人ぽっちで甲子園を目指すとか、アホか?)
野分の言う通り、この辺りで甲子園を目指す生徒はほとんどが大海原や他の強豪校に進んでしまう。
逆に言うと、甲子園を目指すとか言っている癖に野球部の無い天木田に入学した意味がわからん。と、雷は首を捻った。
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