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第4話 四人目のメンバー⑴
しおりを挟む「うるっせえなあ! なんで点入れて文句言われなきゃなんねえんだ!」
怒声と共に、ボールが壁に叩きつけられる音が体育館内に響く。隣のコートで練習していたバレー部の部員達が何事かとそちらに注目した。
バスケットコートの真ん中で、背の高い男が仁王立ちになって他の部員と睨み合っていた。
彼が壁に叩きつけたボールが、跳ね返ってきてコート内に転がりこむ。部員達の中から一人が進み出て、転がったボールを拾い上げて男に向き合う。
「雷。お前がすごいのは認める。だが、バスケはチームワークを重んじるスポーツだ。ワンマンプレーしか出来ない奴をレギュラーにする訳にはいかない」
静かに、だがはっきりと述べられた通告に、雷と呼ばれた男は忌々しそうに眉を吊り上げた。
「けっ、なんで俺がヘタクソどもに合わせなきゃなんねえんだ」
バスケは点を入れて勝つスポーツだ。誰よりも得点力の高い自分が責められる謂れはない。パスを回さないのは誰も雷についてこれないからだ。ヘタな奴にシュートを打たせて外されるより、自分で投げた方が確実に点が入る。悪いのはヘタクソな連中であって、自分ではない。
「あー、クソがっ! やめてやるぜ、こんな部!」
イライラと髪を掻き上げ、雷は悪態を吐いて部員達に背を向けた。荒々しい足取りで体育館を後にする姿に、一部始終を目にしていた者達が囁き交わす。
「また雷だぜ。こないだアメフト部もクビになってたよな」
「サッカー部でも問題起こしてたし」
「協調性が無いんだよ」
背後で交わされるそんな声に、雷は思い切り不快そうに舌打ちをした。
(けっ。高校の部活がなんだ、くだらねー)
外野共の言う通り、雷がああした形で部活を辞めたのは先程のバスケ部で四つ目だ。どこも同じような理由で雷を責め、部から追い出す。
(雑魚共が、オレの実力に敵わねえからって徒党を組みやがって)
雷は子供の頃から運動神経抜群だった。スポーツならなんでも得意だった。
だが、中学二年の時にサッカー部の三年生と喧嘩になって停学になった。高校でも最初はサッカー部に所属したが、やはり先輩達と衝突した。
中学の時で懲りているので、本格的に喧嘩になる前に自主退部した。
以来、同じことを繰り返している。
(俺は強い。運動神経抜群で、どの部でも活躍してきた。なのに、あいつらは俺を認めやがらねえ)
憤懣を抱えながら歩く雷の横を、陸上部員が楽しげに笑いながら通り過ぎる。一瞬、陸上ならどうかという考えが過ぎる。チームではなく個人競技なら、誰かとぶつかる心配はないかもしれない。
だが、雷はすぐにその考えを打ち消した。もういい。また新しい部活に入って他人にとやかく言われるのは面倒だ。
(けっ。せいぜい弱者同士で仲良くやってろよ)
悪態を吐きながら人気のない方へと歩みを進める雷の耳に、男子高生にしては高めの声が聞こえてきた。
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