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しおりを挟むそれからまたしばらく経ったある日、一家の元に国一番のお金持ちとも言われる伯爵家から手紙が届いた。
なんでも、一人娘が来年成人を迎えるため、身の回りの品を新調したい。最高の品を贈りたいので、複数の商人を集めて娘に気にいった物を選ばせる。ということだった。
商人にとっては凄いチャンスだ。サムは張り切って自慢の品を選び、マリッサも夫を手伝った。
ヴァンとキャシーも荷物運びとしてサムについて行き、伯爵家の庭先で父が紹介する品々を並べていた。
すると、伯爵がキャシーを見て「おや」と声を上げた。
「これは、なんと。お嬢さん、その額の痣は生まれつきですか?」
「?はい」
キャシーが首を傾げると、伯爵は目を細めて頷いた。
「祖母に聞いたことがあります。四つ葉の形の痣がある子供は「幸運を呼ぶ子」と言われているそうです。その子を大切にすると、周りの人間に幸福が訪れると」
キャシーは目を瞬いた。
「いやあ、幸運の娘さんがいる商会とは今後も是非お付き合いしたいですな」
思いがけず伯爵に気に入られたサムの商会は、その話が広まるとますます客が増えて盛んになった。幸運を呼ぶという四つ葉の痣を見たくてキャシーに会いに来る客も多かった。
「本当に幸運の女神だったんだなぁ」
サムはマリッサとキャシーを眺めてそう言って笑った。
マリッサは「そういえば」と思った。自分の痣はこんなに薄いから大した幸運を呼べなかったのだろうが、キャシーが生まれてからはニックの実家の商会もどんどん大きくなっていっていた。大口の顧客が次々に訪れて、商談も嘘のように次から次へと上手くいったのだ。
「私が幸せなのはお母さんとお父さんとヴァンがいるからだよ」
キャシー自身は自分は普通の女の子だと言って笑っていた。
それでもこんな話が広がっては幸運を呼ぶキャシーを手に入れようとする輩がいるかもしれないとヴァンがやきもきするので、予定より早めに結婚させてしまおうかと話し合っていた矢先、サムの店にニックとその母親が現れた。
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