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京・4
しおりを挟む「ん? …………あああああ! まさか!」
手が膝に伸びてくる。裾を持ち上げられそうになって、慌てて頭を小突いた。
「やめろ」
「膝! 膝を見せて下さい。もしかして副長……」
「見せねぇよ。簡単に見せたりしたら、齧り付かれて肌を舐められて……」
「……そうや。そんで、ぶすりと挿されて仕舞いやねん。よう覚えてたな」
「お前じゃあるまいし! 忘れるわけねぇだろ!」
「はああ。反則やろ、それは。なんで女の子の格好してたん? 俺の初恋、男やったんや」
「不服かよ」
「……かなり。いやもう、ほんと、なんで男なのにこんなに肌がすべすべなん? 騙されたわ~。女狐やわ~」
山﨑はそう言うと、俺の肌を撫で始めた。
(誰が女狐だ!)
「やめろって。くすぐったいな」
「あれ、でも、二度会ってるって……」
「まだわかんねぇのか。ニブチン野郎」
「え……」
山﨑が、じっと見つめてくる。今度は、三味線ひいてやろうか? そう言うと、顔色が変わった。
「もう叩かねぇよ。そんなに怯えるな」
「な……なな……まさか!」
「まさかもなにも」
「確かに、今まで遊里で、あそこまでひどい遊女を見た事はなかったわ。暴言を吐く、自分勝手、挙句の果てには、客に暴力を振るうて……」
「お前が抱けっつってんのに抱かねぇからだ。まあ抱かれても困るけど」
「だからなんで女の格好しとんねん! しかも今度は、遊女やて? いやあ、だから手が出なかったんやな~。危うく男に騙されるとこやった」
「失礼なこと言うな」
「あああ~……忘れられない女達が、どっちも男なんて……死にたくなるぐらいきっついわ~」
「お前が勝手に勘違いしてたんだからな。俺が騙したわけじゃねえからな」
「騙したやろ、吉原では。ああ~今頃さぶいぼ出てきた!」
「お前……態度変わったな、おい」
「だって、俺と相棒になりたいんやろ?」
ニヤリと笑う。ああ、この生意気そうな顔だ。取り澄ました顔より、ずっといい。俺も笑う。
「ようやっと本性を現したな、山﨑」
「そらぁ、不始末起こして消される心配がなくなったんだから、気安い事も言えるわな」
「不始末起こしたら、流石に俺も怒るぞ?」
「けど、あんたは懐に入れたもんは、絶対に壊したりしない、そうやろ?」
「お前みたいな女好き、懐に入れてたまるか。助平が」
「あッ、あッ、美人の副長の事は大好きやけど、そういう気持ちはないんやで? そこんとこよろしくな! 期待されても困るわ~」
ここしばらくは聞いていなかった山﨑の軽口に、心が軽くなる。やっと相棒を手に入れたぞと、非番の山﨑を置いて、局長に報告するべく俺は腰をあげた。
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