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ブラックナイトの不在(黒川甲斐記憶喪失編)
③誰だ、こいつが正義の味方だなんて言ったの※
しおりを挟む「あっ……っ、んんっ」
ズボンと下着を下ろされて、下半身には何も身に着けていない。シャツのボタンもすべて外されてはいるが手錠に引っかかって脱げはしていない。それがひどく間抜けに思える。
足を大きく開かされ、無防備な場所を焔の前に晒している。これは黒川甲斐の体であって自分の体ではない。だから恥ずかしくないはずだ。自分にそう言い聞かせようとしても羞恥に頬が熱くなった。
アナルを何かヌルつくもので濡らされ、撫でられる度にそこがヒクヒクと何かを求める。自分の知らないはずの快楽をそこはもう知っているようで……そうか、恋人?恋人なのか。
「――ひっ」
濡れたそこに指が押し当てられる。慌てて力を込めようとするがすぐに指の先が入り込んでくる。
「あ、……やっ、やだ……」
「初めてだからビックリしちゃったね。でも、甲斐の体はちゃんと受け入れてくれてるよ」
「ちが、……ちがう」
ローションのせいでそこがベタついて気持ち悪い。そんなところに指なんて入れられたって痛かったり気持ち悪いだけなはずなのに。広げられた足の間で自信が勃起したまま透明な雫をこぼすのが見えた。
「あっ、……抜いて、」
「気持ちよさそうなのに本当に抜いちゃっていいの?」
「ちが…………ひっ!やだ、いたい……」
痛くはなかったけれどそれ以上そこを弄られたくなくてそう言った。だけど焔にはお見通しのようで「じゃあ痛くないようにちゃんと慣らさないとね」とやめてくれないばかりか指まで増やす始末だ。
誰だ、こいつが正義の味方だなんて言ったの。カッコイイし声もいいけど、だからといってこれではレイプ魔だ。いくら黒川甲斐が恋人だったとしてもこちらにはその記憶が無いわけで。
「あっ、やっ……やだっ、こわい」
焔の指が中を自由に動き回る。だめ、そこを抉られたら狂ってしまう。知らないはずなのにわかる。
「俺が恋人だって信じる?」
「しんじる……から」
「じゃあさ、俺の名前呼んで」
「…………まさお、かっ」
「違うよ、甲斐は焔って呼んでた」
「ほむら…………?」
焔。
そう呼びかけると目の前の男は嬉しそうに微笑んだ。胸が熱くなって、自分もそれが嬉しいと感じているようだった。
恋人だから?好き、だから?
でもそれは黒川甲斐であって自分にはその記憶なんて無いのに。
「……そんな顔されたら、やめてあげられないかな」
「へ……?」
そんな顔ってどんな顔だ。
ようやく指が体内から抜かれて、焔の顔が目の前に近づいてくる。反射的に目を閉じるとすぐに唇が触れた。
「んっ…………ふぅ」
またキスだ。
でも、キスは嫌いじゃない。焔の柔らかな唇が触れると心地よくて体の力が抜けていく。唇の隙間から焔の舌が口内に入り込む。
もしもこれが、たとえば別の誰かの舌だったら。きっと噛みついてやったと思う。それなのにそれが焔のものだというだけで体から抵抗する気力が奪われていく。
……恋人だから、だろうか。
そうして甘いキスに溺れている間に、解放されたはずのアナルに熱いものが触れる。
「んんっ、ふっ!」
押し返そうとしても、抗議の声を上げようとしても、キスのせいで力が入らなかった。そこに力を込めようとしたところで押し当てられた熱は難なく突き進んでくる。
「……ううぅ…………」
有り得ないくらい広がって焔のペニスを受け入れていく。本来なら痛いだけのはずなのにあっさりペニスを咥え込んだそこは物欲しそうに焔のものを締め付ける。
「――あっ」
まだ挿入のショックが抜けきらないうちに唇が離れ、行き止まりと思われる場所に先端がこつんとぶつかる。思わず漏れた声は自身の口から出たとは思えないほどに甘く響いた。
「甲斐、甲斐……」
焔が余裕なさそうに甲斐の名を呼ぶ。正岡焔のそんな顔、初めて見る。
そんな、まるで、恋してるみたいな顔。
「……ほむ、ら」
自分も今そんな顔をしているんじゃないかと思った。
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