33 / 57
番外編
誕生日の話②12/25焔の場合そのいち
しおりを挟む
正岡焔は生まれて初めて自身が正義のヒーローであることを呪った。
元々正義感は強い方だったけど、愛する人を守るために始めた仕事だ。それをきっかけに甲斐と恋人になれたのだから、感謝している。
だけど、せっかく大好きな人と恋人になれて初めてのクリスマスイヴ……そして、初めての誕生日ぐらいは、二人でゆっくりと過ごしたい。そう思ってもバチは当たらないだろう。
クリスマスイヴはダメだった。
甲斐の所属する悪の組織エタニティは休みだったのに、どういうわけか謎の怪人が現れた。
悲鳴を無視するわけにもいかず、倒しに行くと、どうも独り身の男がカップルたちを妬んで怪人になって暴れ回っていたらしい。倒した後によく話を聞いてみると、鶴見博士から怪人になれるアイテムを貰ったという事実が判明した。
……あれ、あの人、正義の側の人間じゃなかったっけ?
「いやあ、僕は願いを叶えてあげただけだよ?つまりサンタクロースだよね」
などと、訳の分からない持論を振りかざす博士も、ちゃんと懲らしめておいた。
そんな風にクリスマスイヴが慌ただしく終わって、今日はクリスマス。そして、焔の誕生日だった。
昨日は台無しになってしまったが、まだ今日がある。また鶴見が悪さをしないように昨日から縄で縛り付けてあるので大丈夫なはずだ。
「……焔、どうした?」
険しい顔をしていた焔を、甲斐が不安そうに見つめてくる。そんな顔も可愛くて、やっぱり好きだなあと思う。
「ううん、昨日はごめん。せっかく約束してたのに」
「仕事なら仕方ないって。今日は大丈夫そうだし」
「……まあ、原因は捕まえたからね」
「?」
甲斐にはまさか真犯人は正義側の博士でしたなんて言えるわけもなく。
「……俺以外の奴と戦うのは正直妬けるけど、一般人の目線で焔が正義の味方してるのを見れるのは悪くないな」
……冒頭で言ったことは無かったことにしよう。
正岡焔は、正義の味方であることを神に感謝した。
甲斐が照れながらもそんなことを言ってくれるのだから、もう、焔は昨日のことなんて一瞬で忘れてしまった。クリスマスイヴなんてただの『前日』だ。大事なのは今日だし、自分たちはキリスト教でも何でもない。
どんな日であれ、大事な恋人と過ごせれば、特別な日なのだ。
「で、まずは誕生日プレゼントなんですけど」
「あ、はい」
「左手、出して」
緊張している様子の甲斐につられて、焔の方も緊張してしまう。言われるままに左手を甲斐の前に出すと、そっと薬指に触れられる。
「……受け取って、くれますか」
真剣にこちらを見つめてくる甲斐に、もちろんと頷く。
シンプルな指輪が左手に贈られる。
「ありがとう、甲斐」
お返しに、もう片方の指輪は焔が甲斐の指にはめる。それから、焔と揃いのそれに、そっと唇で触れた。
「この指輪に、誓います――ずっと一緒にいよう」
「……俺も、誓う」
真っ赤になった甲斐が、焔の手を取って、真似をしてくる。人にされて気づくのだが、キザだっただろうか。少し恥ずかしくなってくる。
「誕生日おめでとう、焔」
来年も再来年もずっと、こんな風に一緒に過ごせますように。
元々正義感は強い方だったけど、愛する人を守るために始めた仕事だ。それをきっかけに甲斐と恋人になれたのだから、感謝している。
だけど、せっかく大好きな人と恋人になれて初めてのクリスマスイヴ……そして、初めての誕生日ぐらいは、二人でゆっくりと過ごしたい。そう思ってもバチは当たらないだろう。
クリスマスイヴはダメだった。
甲斐の所属する悪の組織エタニティは休みだったのに、どういうわけか謎の怪人が現れた。
悲鳴を無視するわけにもいかず、倒しに行くと、どうも独り身の男がカップルたちを妬んで怪人になって暴れ回っていたらしい。倒した後によく話を聞いてみると、鶴見博士から怪人になれるアイテムを貰ったという事実が判明した。
……あれ、あの人、正義の側の人間じゃなかったっけ?
「いやあ、僕は願いを叶えてあげただけだよ?つまりサンタクロースだよね」
などと、訳の分からない持論を振りかざす博士も、ちゃんと懲らしめておいた。
そんな風にクリスマスイヴが慌ただしく終わって、今日はクリスマス。そして、焔の誕生日だった。
昨日は台無しになってしまったが、まだ今日がある。また鶴見が悪さをしないように昨日から縄で縛り付けてあるので大丈夫なはずだ。
「……焔、どうした?」
険しい顔をしていた焔を、甲斐が不安そうに見つめてくる。そんな顔も可愛くて、やっぱり好きだなあと思う。
「ううん、昨日はごめん。せっかく約束してたのに」
「仕事なら仕方ないって。今日は大丈夫そうだし」
「……まあ、原因は捕まえたからね」
「?」
甲斐にはまさか真犯人は正義側の博士でしたなんて言えるわけもなく。
「……俺以外の奴と戦うのは正直妬けるけど、一般人の目線で焔が正義の味方してるのを見れるのは悪くないな」
……冒頭で言ったことは無かったことにしよう。
正岡焔は、正義の味方であることを神に感謝した。
甲斐が照れながらもそんなことを言ってくれるのだから、もう、焔は昨日のことなんて一瞬で忘れてしまった。クリスマスイヴなんてただの『前日』だ。大事なのは今日だし、自分たちはキリスト教でも何でもない。
どんな日であれ、大事な恋人と過ごせれば、特別な日なのだ。
「で、まずは誕生日プレゼントなんですけど」
「あ、はい」
「左手、出して」
緊張している様子の甲斐につられて、焔の方も緊張してしまう。言われるままに左手を甲斐の前に出すと、そっと薬指に触れられる。
「……受け取って、くれますか」
真剣にこちらを見つめてくる甲斐に、もちろんと頷く。
シンプルな指輪が左手に贈られる。
「ありがとう、甲斐」
お返しに、もう片方の指輪は焔が甲斐の指にはめる。それから、焔と揃いのそれに、そっと唇で触れた。
「この指輪に、誓います――ずっと一緒にいよう」
「……俺も、誓う」
真っ赤になった甲斐が、焔の手を取って、真似をしてくる。人にされて気づくのだが、キザだっただろうか。少し恥ずかしくなってくる。
「誕生日おめでとう、焔」
来年も再来年もずっと、こんな風に一緒に過ごせますように。
18
お気に入りに追加
2,727
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)


義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる