転生したら悪の組織の幹部だったけど、大好きなヒーローに会えて大満足だった俺の話

多崎リクト

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⑫焔は早速しでかした

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 結論から言おう。焔は早速しでかした。

「星野光を振った!?」

 帰ってきた焔に興味本位で用事は何だったのかと聞いてみれば返ってきたのはそんな事実だったのだ。

「だって俺は甲斐のことを愛してるし」

 涼しい顔で言うものだからうっかり聞き流しそうになるが、まだ正門を出たばかりで、生徒もまばらに歩いている。こんなところでなんてことを言うんだ。誰かに聞かれたらどうする気だ。

 だが今はそれよりも、焔の言葉の意味を考える。
 星野光を振った。振ったというからには告白されたと考えられる。
 そうだった。フレイムがブラックナイトの名前を呼んでくれる一大イベントが楽しみすぎて忘れていたが、星野光が正岡焔に告白するイベントもあるのだった。
 本来はその場で返事をするわけではなく、まず考えさせてほしいと一旦保留にする。正義の味方フレイムとして一般人を巻き込むわけにはいかない。だが、襲われそうになる星野光を前に、フレイムとしてではなく焔として護りたい人間を見つける――話だったはずなのだが。

「星野光を振った……?」
「だからそう言ってるだろ。心配しなくても俺は甲斐以外好きにならないよ」

 甲斐はフレイムの恋愛パート自体はそこまで好きなわけではなかった。だがフレイムにとって星野光は必要不可欠。正義感だけのフレイムに人間らしさを与えるのは星野光だからだ。
 星野光がいるからこそフレイムのまだ見ぬ顔が見られる、そんな超重要人物が星野光である。

 そんな、星野光を、焔は振ってしまった。

 もしこのまま話が続くとどうなってしまうのだろうか。




「甲斐、どこに行きたい?」
「……もう帰りたい」
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