憧れていたヒーローになったけど熱烈なファンに猛アタックされる俺の話

多崎リクト

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32、『新番組 水の戦士ブルー』

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 ※※※


『新番組 水の戦士ブルー』

 大好きだった『炎の戦士フレイム』の最終回は涙なしには見られなかった。途中で渡されたハンカチで涙どころか鼻水まで遠慮なく拭き取り、新番組の予告を眺める。こんなに面白かったフレイムの次だ。ハードルがめちゃくちゃ上がるに決まっている。
 涼太としてはもう次は見なくてもいいかなと思っていた。だってフレイムが終わったのが悲しすぎる。まだフレイムの最終回を受け入れられない。

 そう考えているうちに次回予告が進んでいく。
 水の戦士ブルー。フレイムに憧れてヒーローになったが、フレイムは消えてしまったらしい。生き残っていたエタニティ側の新キャラアッシュ。と思ったら謎に宇宙人が出てきて、魔法少女が……え、フレイムは出ないの?
 カオスすぎる予告をいつの間にか前のめりになって見ていた。なになに、どうなるんだ、これ。


「意外と面白そうじゃん」
「涼太さっきまで絶対見ないって言ってたのに」
「ま、まあ一話くらい見てから考えてもいいかな」



 ※※※


「青さん、大丈夫ですか?」

 体力には自信があったのだが、こればかりは慣れない。普段使わない筋肉を使ったりもするので体のあちこちが痛い。
 今回も青が気絶している間に怜央――レオンが、後始末をしてくれていたらしい。体の中も外もドロドロだったのが綺麗になっていて、見知らぬパジャマを着せられていた。これも青いからレオンが用意していたのだろう。サイズがぴったりすぎて何だか恐ろしいがそこには触れないでおく。

「……大丈夫だ」

 ヒーローとして、体が痛いとは言いたくない。腰が抜けてしまっているからベッドに寝転んだままではあるが。
 レオンに体力で負けているかもしれないという疑惑には目を瞑る。まあ、相手は宇宙人だし。まだ負けても仕方ないと思える。

「そういえば大ダコが人間を襲って、それを魔法少女が倒してたけど、あれってお前の仲間なの?」
「クルトのペットですかね。知り合いではありますが、あまり仲間というのも……」
「ふーん」

 宇宙人にも色々いるらしい。

「僕は直接性エネルギーを貰う方が好きですし」
「ふー……ん?」

 待て、こいつおかしなことを言わなかったか?

「性エネルギー?」
「やっぱり僕たちとっても相性がいいですね。それに両想いだとエネルギーの質も良いんですよ。青さんのエネルギーは甘くて、本当はひとり占めしたいくらいなんですが」

 なるほど、だからわざわざ他の人間を襲う必要はなく、また青とレオンが両想いであればエネルギーの質も保たれるのでそれだけで足りる、ということか。
 両想い……なのか?

「お前って変なペットいるの?」
「いませんよ」
「そうか」

 とりあえず触手を使ったプレイとかそういうことはされないようだ。良かった。



 ――問題無いです。僕には青さんがいるので。

 あれはつまり、そういうことだったのか。
 恋人で、性エネルギーを提供するパートナーで、もしもレオンが人を襲うならそれを止める者。それが今の青の役割だったのか。

 少し前の自分だったら、「お前俺の体目当てなのか」とヒステリックに詰め寄ってみたりしたかもしれないけれど、今はそんな風に思わなかった。レオンが青のことを好きなのがあまりにわかりすぎてしまっていたから。
 むしろレオンのことだから、『もし別れれば他の人間を襲う』という脅しのためにこの事実を伝えている気さえする。
 本当の目的はエネルギーの回収ではなく、青が自分を犠牲に他の人間を守るためにレオンと居るようにすること。

 ……いや、考えすぎだろう。



「……で、他の人間を襲わないためにはどのくらいしたらいいんだ」
「毎日ですかねえ」
「はっ!?」


 ……やっぱり青がセックスを断れないように言っているに違いなかった。



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