32 / 33
32、『新番組 水の戦士ブルー』
しおりを挟む※※※
『新番組 水の戦士ブルー』
大好きだった『炎の戦士フレイム』の最終回は涙なしには見られなかった。途中で渡されたハンカチで涙どころか鼻水まで遠慮なく拭き取り、新番組の予告を眺める。こんなに面白かったフレイムの次だ。ハードルがめちゃくちゃ上がるに決まっている。
涼太としてはもう次は見なくてもいいかなと思っていた。だってフレイムが終わったのが悲しすぎる。まだフレイムの最終回を受け入れられない。
そう考えているうちに次回予告が進んでいく。
水の戦士ブルー。フレイムに憧れてヒーローになったが、フレイムは消えてしまったらしい。生き残っていたエタニティ側の新キャラアッシュ。と思ったら謎に宇宙人が出てきて、魔法少女が……え、フレイムは出ないの?
カオスすぎる予告をいつの間にか前のめりになって見ていた。なになに、どうなるんだ、これ。
「意外と面白そうじゃん」
「涼太さっきまで絶対見ないって言ってたのに」
「ま、まあ一話くらい見てから考えてもいいかな」
※※※
「青さん、大丈夫ですか?」
体力には自信があったのだが、こればかりは慣れない。普段使わない筋肉を使ったりもするので体のあちこちが痛い。
今回も青が気絶している間に怜央――レオンが、後始末をしてくれていたらしい。体の中も外もドロドロだったのが綺麗になっていて、見知らぬパジャマを着せられていた。これも青いからレオンが用意していたのだろう。サイズがぴったりすぎて何だか恐ろしいがそこには触れないでおく。
「……大丈夫だ」
ヒーローとして、体が痛いとは言いたくない。腰が抜けてしまっているからベッドに寝転んだままではあるが。
レオンに体力で負けているかもしれないという疑惑には目を瞑る。まあ、相手は宇宙人だし。まだ負けても仕方ないと思える。
「そういえば大ダコが人間を襲って、それを魔法少女が倒してたけど、あれってお前の仲間なの?」
「クルトのペットですかね。知り合いではありますが、あまり仲間というのも……」
「ふーん」
宇宙人にも色々いるらしい。
「僕は直接性エネルギーを貰う方が好きですし」
「ふー……ん?」
待て、こいつおかしなことを言わなかったか?
「性エネルギー?」
「やっぱり僕たちとっても相性がいいですね。それに両想いだとエネルギーの質も良いんですよ。青さんのエネルギーは甘くて、本当はひとり占めしたいくらいなんですが」
なるほど、だからわざわざ他の人間を襲う必要はなく、また青とレオンが両想いであればエネルギーの質も保たれるのでそれだけで足りる、ということか。
両想い……なのか?
「お前って変なペットいるの?」
「いませんよ」
「そうか」
とりあえず触手を使ったプレイとかそういうことはされないようだ。良かった。
――問題無いです。僕には青さんがいるので。
あれはつまり、そういうことだったのか。
恋人で、性エネルギーを提供するパートナーで、もしもレオンが人を襲うならそれを止める者。それが今の青の役割だったのか。
少し前の自分だったら、「お前俺の体目当てなのか」とヒステリックに詰め寄ってみたりしたかもしれないけれど、今はそんな風に思わなかった。レオンが青のことを好きなのがあまりにわかりすぎてしまっていたから。
むしろレオンのことだから、『もし別れれば他の人間を襲う』という脅しのためにこの事実を伝えている気さえする。
本当の目的はエネルギーの回収ではなく、青が自分を犠牲に他の人間を守るためにレオンと居るようにすること。
……いや、考えすぎだろう。
「……で、他の人間を襲わないためにはどのくらいしたらいいんだ」
「毎日ですかねえ」
「はっ!?」
……やっぱり青がセックスを断れないように言っているに違いなかった。
1
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。
マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。
いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。
こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。
続編、ゆっくりとですが連載開始します。
「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
捨て猫はエリート騎士に溺愛される
135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。
目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。
お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。
京也は総受け。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる