憧れていたヒーローになったけど熱烈なファンに猛アタックされる俺の話

多崎リクト

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28、「問題無いです。僕には青さんがいるので」

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 鶴見に貰った休みが終わり、またヒーローの仕事をすることになった。怜央とはあれ以来会ってないが……会うことになるだろうな、とは思っていた。

 灰田に「仲直りしたら」と言われたけど。結局のところ悪いのは宇宙人なことを隠していた怜央であって、青が譲歩してやる必要は無いのだ。

 なのに、どうしてこうなったんだろう。


 アッシュが逃げてしまったため、怜央と二人きりになった。久しぶりというのもあるけれど、今までどうやって会話していたのか急にわからなくなる。
 俺も逃げたい、と思った時には怜央に腕を掴まれていた。うん、そうなるよな。

 何か色々言われたような気がしたけど良く思い出せない。お買い得だからそばに置いて、みたいな。

「青さんになら利用されてポイ捨てされても本望ですから」
「それ、お前にメリットはあるのか」
「青さんのそばにいられますね」

 まっすぐ向けられる視線に込められて熱。嘘は無い、と思う。

「……お前が他の宇宙人みたいに、人を襲わないという保証は?」
「隣に置いてくれればそんな暇はありません。それに、青さんは強いので僕なんて簡単に倒せますよ」

 そうだろうか?
 アッシュに向けられた魔法のような力を思い浮かべる。アッシュにさえ勝てない青が、あれに勝てるだろうか。



「……まあ、何やらかすかわからないし見張っておいた方がいいのか」

 呟いた言葉に怜央の目が輝く。

「見張ってくれるんですか!」

 喜ぶところなのか、それは。なのに、ありもしないしっぽをちぎれるほど振っているように見えて、気がつけば怜央の頭を撫でていた。



 そんなわけで、一人で戦っていたヒーローは犬を飼うことになりましたとさ。



 めでたしめでたし――と、終わりたかったのだけど。



「そういえば、お前たちは何で地球に来たんだ?」
「故郷のエネルギー問題ですね。人間を襲っているのもそういった事情です」

 と、いうことは怜央も結局人間を襲う必要があるのではないか?
 青の目が光っている間にはさせないつもりだけど、それで大丈夫なのだろうか。

「問題無いです。僕には青さんがいるので」

 にこにこしている怜央に、もっとよく聞いおくべきだったと後で悔やむことを、青はまだ知らない。
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