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⑧フレイムの剣先がブラックナイトへ向けられる
しおりを挟む元々、たった一人でエタニティと戦っていたあのフレイムだ。いくら少しの間ブルーに仕事の大半を丸投げしていたからって、それくらいで弱くなるはずもない。
二人の剣が何度も交差し、耳の痛くなるような音が続き、やがてブラックナイトが剣を取り落とす。
「……俺の勝ちだな」
フレイムの剣先がブラックナイトへ向けられる。
そのままとどめを刺すのかと凝視していたが、「そのようだな」とブラックナイトはマントをひるがえし、消えていった。
そして、後にはフレイムとブルーだけが残された。
「あ、あの……」
そのまま立ち去ってしまいそうなフレイムに、勇気を出して話しかける。お互い変身したままの姿のため、相手の感情が読めない。
迷惑と思われていないだろうか。不安だったが、それでもどうしても伝えたかった。
「助けてくれて、ありがとうございます」
「ああ……こっちこそ、いつもエタニティの相手をありがとう」
「俺、もっと強くなります!」
あなたみたいにと言いたかったけれど、それは言ったら叶わない気がしてやめた。
「なれるさ、きっと」
※※※
「……カッコイイ」
フレイムのブロマイドを手に、ため息を吐く。ヒーローを目指していた頃は買っていたが、こうして自分がヒーローになってからは何となく遠ざけていたものだ。
そんな青が久しぶりにブロマイドを買おうと思ったのは、ついこの間生フレイムを拝み、同じヒーローとしてはとても情けないことに、守ってもらったからに他ならない。
「……やっぱりフレイムは俺の目標だ…………これはイメトレに必要なアイテムなのだから仕方がない」
そう自分に言い聞かせながら、自分の持っていない種類を探す。ううむ、これは持っていた気がするが、枕の下に敷く用として買ってもいいかもしれない。こっちのポスターは壁に貼って眺めながらトレーニングしよう。
「――あ、あの……あなたもフレイムファンですか?」
「はい?」
夢中でカゴに色々入れていると後ろから声をかけられ、振り返ると見知らぬ男子高校生がいた。見覚えのある制服を着ていたが、もしかしたら青の母校のものかもしれない。
「……あ、すみません。俺は黒川甲斐って言います。俺、フレイムの大ファンで! それで周りに仲間があんまりいなかったからつい……」
「そうなんだ……。俺は室田青。俺も、フレイム好きなんだ。カッコイイよね」
「そうですよね!」
甲斐が嬉しそうに頷く。
こんなふうに思ってもらえて、フレイムが羨ましい。悲しいことにブルーのブロマイドは店のどこにも無かったから。
ブルーにもいつか、一途に思ってくれるようなファンが現れるだろうか。
甲斐と連絡先を交換しながらそんなことを考えた。
青は佐藤怜央のことをすっかり忘れているのだった。
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