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⑦「お前の相手は俺だろ?」

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 フレイムへの不満はあった。
 いくらブルーが一人前になるためだったとしても、雑魚やアッシュの相手はブルーに任せきりだし、ねぎらいの言葉をかけてくれるわけでもなければ、ほとんど話したこともない。フレイムの正体どころか連絡先の一つも知らなかった。
 灰田にはああ言ったが、本当はサボっているだけなんじゃないかと思ったりもした。

 でも、

「お前の相手は俺だろ?」

 こうしてブルーのピンチに駆けつけてくれる、やはりこの男は誰よりもブルーの憧れるヒーローだった。

(カッコイイっ!)


 ブルーのものと同じで鶴見博士が作った強化スーツなのに、どうしてこんなに力に差が生まれるのだろう。見た目は色が違うくらいでほとんど同じなのに。

「――闇よ、行け」

 ブラックナイトの放つ黒い光がフレイムへ向かってくる。フレイムはただ黙って右手を黒い光へかざす。
 フレイムの手から赤い光が放たれ、光は黒い光を飲み込み、すぐに溶けるように消えた。

 何だ、あの力は?

 ブラックナイトは既に赤い光のことを知っていたのか、やはり驚きもせず、こちらへ向かってゆっくりと歩き出す。

「その新人に任せきりで鈍ったんじゃないか」
「そう思うなら試してみるか」

 最早ブルーのことは完全に蚊帳の外で、二人だけの戦いが始まろうとしている。
 フレイムに庇われた時点で、この場のブルーはヒーローとは言えなかったのだけど。


 ブラックナイトが舞うように攻撃し、フレイムがそれをよける。フレイムの放つ炎をブラックナイトがひらりとかわす。ブラックナイトが向けた剣をフレイムが己の剣で受け止める。

 何だか二人でダンスでもしているようで、綺麗だなとのんきに思ってしまった。

 ……ブルーもいつか、あんな風に戦えるようになるのだろうか。
 下っ端の相手ばかりさせてフレイムはサボっているのではないかと疑っていた自分が恥ずかしくなった。フレイムの強さは変身したから手に入っただけの力ではなく、血のにじむような努力で手に入れたものだったろうに。
 そうなりたいと思ったらブルーだってちゃんと努力しなければいけなかったのに。トレーニングはしていたが、もっともっと努力するべきだった。与えられた力に満足していたのだ。ブラックナイトがまだダメでも、せめて、まずはアッシュを倒せるようにならなければいけなかったのに。


 それなのに、そんなブルーを助けに来てくれて。フレイムは誰よりも、ブルーよりも、ずっとずっとヒーローだった。


 そして自分もそんなヒーローになりたいと強く思った。



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