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③「な、何するんだよ!」
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「な、何するんだよ!」
「好きって言いましたよね、僕」
唇と唇がくっつきそうになる直前で青に邪魔をされた男は何故か不満そうにしている。
「……好きって、ファンってことだろ?」
「そうです、僕はあなたの大ファンです」
「そ、そうか」
ファンと言われて悪い気はしない。だが、そう言いながらもぐいぐいと迫ってくる男の目が怖い。また捕まってはたまらないと後ずさる。本当は背を向けて一目散に逃げ出したくなるような迫力が男にはあるのだが、ヒーローとしてのプライドがそれを許さなかった。
しかしプライドなんてものは何の役に立たない。結局すぐに壁際まで追い詰められ、逃げ場が無くなった。
どうしてこんなことになったのだろうか。一般人に襲われるヒーローなんて聞いたことがない。
「ブルーさん、可愛い」
「お、俺は可愛くない」
「すごく可愛いです」
男の顔がまた目の前にあって、このままではどうなってしまうのか。きっと先程触れそうになった唇が、今度は本当に触れるのだ。いや、それはまずい。
だが壁際まで追い詰められた青に逃げ場は無い。
逃げるしかない……どうにかして。何としてでも。
どんな手を使っても。
「…………変身」
どうせ正体がバレてるのだ。目の前で変身したところで変わらない。それよりこの状況から一刻も早く逃げ出したかった。
変身アイテムが反応し、青い光が包み込む。目の前の男が眩しそうに目を細める。
「…………やっぱり、変身した姿も素敵だ」
うっとりと呟く男を軽く押し返すと今度ばかりは簡単に離れた。一応相手は一般人なので怪我をさせないように気をつけたつもりではある。
どうしてだろうか、ただの人間なのに、普段戦うエタニティの奴らよりよっぽど怖く感じるのは。
ブルーはマスクの下で思わず涙ぐんだ。素顔の見えないマスクで良かった。ヒーローが怖くて泣きそうになっているだなんて絶対にバレたくない。
「………………」
何か、この男を諦めさせるような言葉を吐くべきだろうか。考えても思い浮かばないし、何より今すぐこの場から逃げ出してしまいたい。正義の味方だって逃げてもいい時がたぶんある。
こちらを舐め回すような目がとにかく恐ろしい。マスク越しに顔を見られているような、ニコニコしているだけに見えるのに、何か恐ろしいことを企んでいるような男の表情がとにかくおぞましい。
逃げよう、今すぐ。
ブルーの能力である瞬間移動を使い、その場から逃げ出した。
……まさか、こんなことにヒーローの力を使う日が来るなんて思わなかった。
「好きって言いましたよね、僕」
唇と唇がくっつきそうになる直前で青に邪魔をされた男は何故か不満そうにしている。
「……好きって、ファンってことだろ?」
「そうです、僕はあなたの大ファンです」
「そ、そうか」
ファンと言われて悪い気はしない。だが、そう言いながらもぐいぐいと迫ってくる男の目が怖い。また捕まってはたまらないと後ずさる。本当は背を向けて一目散に逃げ出したくなるような迫力が男にはあるのだが、ヒーローとしてのプライドがそれを許さなかった。
しかしプライドなんてものは何の役に立たない。結局すぐに壁際まで追い詰められ、逃げ場が無くなった。
どうしてこんなことになったのだろうか。一般人に襲われるヒーローなんて聞いたことがない。
「ブルーさん、可愛い」
「お、俺は可愛くない」
「すごく可愛いです」
男の顔がまた目の前にあって、このままではどうなってしまうのか。きっと先程触れそうになった唇が、今度は本当に触れるのだ。いや、それはまずい。
だが壁際まで追い詰められた青に逃げ場は無い。
逃げるしかない……どうにかして。何としてでも。
どんな手を使っても。
「…………変身」
どうせ正体がバレてるのだ。目の前で変身したところで変わらない。それよりこの状況から一刻も早く逃げ出したかった。
変身アイテムが反応し、青い光が包み込む。目の前の男が眩しそうに目を細める。
「…………やっぱり、変身した姿も素敵だ」
うっとりと呟く男を軽く押し返すと今度ばかりは簡単に離れた。一応相手は一般人なので怪我をさせないように気をつけたつもりではある。
どうしてだろうか、ただの人間なのに、普段戦うエタニティの奴らよりよっぽど怖く感じるのは。
ブルーはマスクの下で思わず涙ぐんだ。素顔の見えないマスクで良かった。ヒーローが怖くて泣きそうになっているだなんて絶対にバレたくない。
「………………」
何か、この男を諦めさせるような言葉を吐くべきだろうか。考えても思い浮かばないし、何より今すぐこの場から逃げ出してしまいたい。正義の味方だって逃げてもいい時がたぶんある。
こちらを舐め回すような目がとにかく恐ろしい。マスク越しに顔を見られているような、ニコニコしているだけに見えるのに、何か恐ろしいことを企んでいるような男の表情がとにかくおぞましい。
逃げよう、今すぐ。
ブルーの能力である瞬間移動を使い、その場から逃げ出した。
……まさか、こんなことにヒーローの力を使う日が来るなんて思わなかった。
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