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②「ブルーさん、好きです!」
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室田青は幼い頃からヒーローに憧れていた。将来の夢は成長してもずっと変わらず、高校生の頃には担任に呆れられた。
たしかに世界は平和で、敵なんて存在はどこにもいない。青の望むヒーローはテレビの中にしか存在しなかった。
それでも、いつか、その時が来た時のために。
いつか、ヒーローとして戦えるように。そうずっと思っていた。
それが一年ほど前から変わり始めた。
悪の組織エタニティ。平和を脅かす存在。そしてそれを倒すもの。
炎の戦士フレイムが現れたのだ。
ずっと一人で孤独に戦うフレイムを追いかけ、ようやく、二人目のヒーローとして認めてもらうことが出来た。
これからは自分がフレイムを支え、一緒に平和を守っていくのだと思っていたのに……。
「なんで、また俺だけなんだ!」
最近、フレイムが仕事しない。
……いや、さすがに幹部が出てくると戦ってくれるが、普段の雑魚や新人のアッシュの相手はもはやブルーしかしていない。ブルーを信頼しているのだと考えれば良いのかもしれないが、はたして本当にそうだろうか。
とはいえフレイムの連絡先も、正体も、何も知らないし。ブルーは一人で戦うしかないのだ。
フレイムだったらアッシュだってもう倒せているだろうに。いや、フレイムはブルーがアッシュを一人で倒せるようになるのを信じて待っているのだろうか。ちゃんと話したこともないし、とにかくフレイムの考えている事がわからない。表情も読めない。これは色違いのマスクであるブルーも同じではあるが。
雑魚に当たり散らすように攻撃し、一通り倒す。周囲を見回すが、今回はアッシュも出てこないようだ。怪我人もいないようだし自分の仕事は達成できている。先輩への不満はまだまだあるが、ずっと憧れていたヒーローに慣れたことは単純に嬉しい。
本当はフレイムなんて追い越してしまいたいのだけど新人相手に苦戦しているブルーではまだ遠い。
「……もっと強くならないとなあ」
ため息混じりに呟いてから、物陰で変身を解く。水の戦士ブルーから、室田青という一人の青年へ。
今日のトレーニングメニューを考えながら、さて帰ろうと顔を上げたところで、目の前に見知らぬ男が立っていることに気づいた。
「ブルーさん、好きです!」
「……は?」
もしかしてブルーのファンということだろうか。だが、今の彼は室田青である。つまり正体がバレたということになる。
まずい。ヒーローといえば正体は秘密なものだ。だが、どうして秘密なのか青は知らない。知らないが、とにかくまずいのだ。
どうにかして誤魔化さないといけない。でも、どうやって?
すっかりパニック状態になった青の両肩に手が置かれる。身長は少しだけ男の方が高い。上から押さえつけられるようで得体の知れない怖さがある。
一見細身でやわらかな印象のある男なのに、肩に置かれた手はびくともせず、青はすっかり動けずにいた。
「先週、ブルーさんが助けてくださって……それから毎日ブルーさんのことを考えてました」
「は、はあ」
たしかに先週も出動したが、この男を助けたかどうかは思い出せない。危険な場所にいたらたしかに助けただろうなとは思う。線の細い美人という見た目だからだ。腕も腰も細いのに、どこにそんな力があるのだろう。
「…………可愛い、ブルーさん」
うっとりと青の顔を見つめたかと思うと、男の整った顔がどんどん近づいてくる。頭突きされるのかと思ったが、違う。気づけば男の息が唇に触れそうになるほど近づいていて、反射的に突き飛ばしていた。
たしかに世界は平和で、敵なんて存在はどこにもいない。青の望むヒーローはテレビの中にしか存在しなかった。
それでも、いつか、その時が来た時のために。
いつか、ヒーローとして戦えるように。そうずっと思っていた。
それが一年ほど前から変わり始めた。
悪の組織エタニティ。平和を脅かす存在。そしてそれを倒すもの。
炎の戦士フレイムが現れたのだ。
ずっと一人で孤独に戦うフレイムを追いかけ、ようやく、二人目のヒーローとして認めてもらうことが出来た。
これからは自分がフレイムを支え、一緒に平和を守っていくのだと思っていたのに……。
「なんで、また俺だけなんだ!」
最近、フレイムが仕事しない。
……いや、さすがに幹部が出てくると戦ってくれるが、普段の雑魚や新人のアッシュの相手はもはやブルーしかしていない。ブルーを信頼しているのだと考えれば良いのかもしれないが、はたして本当にそうだろうか。
とはいえフレイムの連絡先も、正体も、何も知らないし。ブルーは一人で戦うしかないのだ。
フレイムだったらアッシュだってもう倒せているだろうに。いや、フレイムはブルーがアッシュを一人で倒せるようになるのを信じて待っているのだろうか。ちゃんと話したこともないし、とにかくフレイムの考えている事がわからない。表情も読めない。これは色違いのマスクであるブルーも同じではあるが。
雑魚に当たり散らすように攻撃し、一通り倒す。周囲を見回すが、今回はアッシュも出てこないようだ。怪我人もいないようだし自分の仕事は達成できている。先輩への不満はまだまだあるが、ずっと憧れていたヒーローに慣れたことは単純に嬉しい。
本当はフレイムなんて追い越してしまいたいのだけど新人相手に苦戦しているブルーではまだ遠い。
「……もっと強くならないとなあ」
ため息混じりに呟いてから、物陰で変身を解く。水の戦士ブルーから、室田青という一人の青年へ。
今日のトレーニングメニューを考えながら、さて帰ろうと顔を上げたところで、目の前に見知らぬ男が立っていることに気づいた。
「ブルーさん、好きです!」
「……は?」
もしかしてブルーのファンということだろうか。だが、今の彼は室田青である。つまり正体がバレたということになる。
まずい。ヒーローといえば正体は秘密なものだ。だが、どうして秘密なのか青は知らない。知らないが、とにかくまずいのだ。
どうにかして誤魔化さないといけない。でも、どうやって?
すっかりパニック状態になった青の両肩に手が置かれる。身長は少しだけ男の方が高い。上から押さえつけられるようで得体の知れない怖さがある。
一見細身でやわらかな印象のある男なのに、肩に置かれた手はびくともせず、青はすっかり動けずにいた。
「先週、ブルーさんが助けてくださって……それから毎日ブルーさんのことを考えてました」
「は、はあ」
たしかに先週も出動したが、この男を助けたかどうかは思い出せない。危険な場所にいたらたしかに助けただろうなとは思う。線の細い美人という見た目だからだ。腕も腰も細いのに、どこにそんな力があるのだろう。
「…………可愛い、ブルーさん」
うっとりと青の顔を見つめたかと思うと、男の整った顔がどんどん近づいてくる。頭突きされるのかと思ったが、違う。気づけば男の息が唇に触れそうになるほど近づいていて、反射的に突き飛ばしていた。
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