上 下
4 / 5

④生まれ変わってもずっと

しおりを挟む



「……ユキさんってもしかして俺のこと好きなの?」  

 夢中でケイを抱いて、気がつけば一日が終わっていた。ソファ、風呂、キッチン、玄関。あちこちで愛し合ったせいで掃除するのが大変だったが、ユキは満足していた。この先、家の中のあらゆる場所でケイが行為を思い出せばいい。
 今はシーツを替えたばかりのベッドに、パジャマ姿のケイを寝かせ、添い寝している。さすがに体力が尽きたようでぐったりしていた。

「それは今更すぎる質問ですね」

 そもそも婚約だってユキが手を回したからだったのに、ケイは気づいていなかったのだろう。小さい頃からずっと、ケイに好かれるためだけに優しく優しく甘やかしていたのに。

「僕はケイ君のことをこんなに愛してるのに。まだ伝わらない? もっと体に教えた方がいいのかな」
「じゅ、十分伝わりました……」

 慌てるケイが可愛くて、もっとからかってやりたくなる。

「……俺も、ユキさんが好きだよ」
「本当に?」

 ケイの知るユキなんてケイにしか見えない偽物のような存在なのに。ケイにだけ優しくて、それ以外は何もいらない。自分の家族も、ケイの家族も、何も。
 ただ穏便に手に入れるために婚約という手段を選んだだけで、それが上手くいかなければケイを誘拐していたかもしれない。あの時のように、ケイを追い詰めていたかもしれない。

「……優しいユキさんが好きだったけど、俺にだけ意地悪なユキさんも好き…………俺だけが知ってるユキさんって感じがするから」
「いじめられるのが好きなんですね、ケイ君は」
「そうじゃなくて!」

 怒り出すケイを抱き締めて宥める。いじめられて悦んでいるのは事実のように思えるのだが。

「……どんなユキさんでも好きってことだよ」
「じゃあ、」
「何」
「生まれ変わっても、好きでいてくれる?」
「うん」

 幸福だ。
 もう、嫌な夢は見ないような気がした。


 ※※※



 啓を目の前で失って、それからの雪は死んだように生きていた。初めて心から愛した人。なのに、拒まれ、目の前で死んだ。
 けれど、また啓に会えるような気がしていた。もしもまた会えたら、絶対にこの手を掴んだまま、逃がさない。

「ケイくん、また怖い夢を見たんですね。怖いことは全部忘れましょう」

 悪夢に魘されるケイを抱きしめて、そう囁いた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(…二度と浮気なんてさせない)

らぷた
BL
「もういい、浮気してやる!!」 愛されてる自信がない受けと、秘密を抱えた攻めのお話。 美形クール攻め×天然受け。 隙間時間にどうぞ!

婚約破棄に異議を唱えたら、王子殿下を抱くことになった件

雲丹はち
BL
双子の姉の替え玉として婚約者である王子殿下と1年間付き合ってきたエリック。 念願の婚約破棄を言い渡され、ようやっと自由を謳歌できると思っていたら、実は王子が叔父に体を狙われていることを知り……!?

側近候補を外されて覚醒したら旦那ができた話をしよう。

とうや
BL
【6/10最終話です】 「お前を側近候補から外す。良くない噂がたっているし、正直鬱陶しいんだ」 王太子殿下のために10年捧げてきた生活だった。側近候補から外され、公爵家を除籍された。死のうと思った時に思い出したのは、ふわっとした前世の記憶。 あれ?俺ってあいつに尽くして尽くして、自分のための努力ってした事あったっけ?! 自分のために努力して、自分のために生きていく。そう決めたら友達がいっぱいできた。親友もできた。すぐ旦那になったけど。 ***********************   ATTENTION *********************** ※オリジンシリーズ、魔王シリーズとは世界線が違います。単発の短い話です。『新居に旦那の幼馴染〜』と多分同じ世界線です。 ※朝6時くらいに更新です。

僕が再婚するまでの話

ゆい
BL
旦那様が僕を選んだ理由は、僕が彼の方の血縁であり、多少顔が似ているから。 それだけで選ばれたらしい。 彼の方とは旦那様の想い人。 今は隣国に嫁がれている。 婚姻したのは、僕が18歳、旦那様が29歳の時だった。 世界観は、【夜空と暁と】【陸離たる新緑のなかで】です。 アルサスとシオンが出てきます。 本編の内容は暗めです。 表紙画像のバラがフェネルのように凛として観えたので、載せます。     2024.10.20

処女姫Ωと帝の初夜

切羽未依
BL
αの皇子を産むため、男なのに姫として後宮に入れられたΩのぼく。  七年も経っても、未だに帝に番われず、未通(おとめ=処女)のままだった。  幼なじみでもある帝と仲は良かったが、Ωとして求められないことに、ぼくは不安と悲しみを抱えていた・・・  『紫式部~実は、歴史上の人物がΩだった件』の紫式部の就職先・藤原彰子も実はΩで、男の子だった!?というオメガバースな歴史ファンタジー。  歴史や古文が苦手でも、だいじょうぶ。ふりがな満載・カッコ書きの説明大量。  フツーの日本語で書いています。

王と正妃~アルファの夫に恋がしてみたいと言われたので、初恋をやり直してみることにした~

仁茂田もに
BL
「恋がしてみたいんだが」 アルファの夫から突然そう告げられたオメガのアレクシスはただひたすら困惑していた。 政略結婚して三十年近く――夫夫として関係を持って二十年以上が経つ。 その間、自分たちは国王と正妃として正しく義務を果たしてきた。 しかし、そこに必要以上の感情は含まれなかったはずだ。 何も期待せず、ただ妃としての役割を全うしようと思っていたアレクシスだったが、国王エドワードはその発言以来急激に距離を詰めてきて――。 一度、決定的にすれ違ってしまったふたりが二十年以上経って初恋をやり直そうとする話です。 昔若気の至りでやらかした王様×王様の昔のやらかしを別に怒ってない正妃(男)

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

処理中です...