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バッドエンド002

⑬大学入学前

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 ※※※

 卒業式を終え、入学の準備も一通り終わり、来週にはいよいよ入学式だ。
 まだ段ボールが片付いていないが何とかなるだろう。スーツと鞄はあるので上出来。地元を離れたため知り合いが居ないという不安要素もあるが、親元を離れることの解放感は格別だ。

「んー、何食べよ……」

 さすがに毎日カップ麺というのも飽きるし、今日は何か作ってみるか。米も炊飯器も買ってあるし問題はおかずだ。適当に肉でも焼いて、サラダとか買えばいいのか?
 少し面倒だが、それが楽しい。

 ――だってようやく三浦海斗から離れることができたのだから。


 捕まって、犯され、リセットボタンを壊され、動画をバラまくと脅された。自分の処女が散らされる瞬間をバラまかれたりなんてしたら涼太の高校生活は真っ暗だ。海斗だって無事では済まないはずなのだが、奴はそんなこと些細なことだと言って気にしないだろう。
 涼太は海斗に逆らわず、付き合うことにした。あくまで表面上は海斗のことが好きだと演じることにした。セックスだってしたし好きと言ってキスした。それは全て海斗を油断させるためだ。
 付き合って、上手く海斗をコントロールする。海斗と同じ大学に行くフリをして、本当は別の大学も受験していた。それがバレないように受験を理由に会う頻度を減らしたらわりと酷い目に遭ったが……まあ、許してやろう。
 卒業式まではなるべく海斗の家に入り浸り、止まったりして、涼太の家には来させないようにしていた。その間に荷物をまとめ、一人暮らしの準備を進めていった。

 そして卒業式の翌日、涼太の引っ越し先とは真逆の方向にあるテーマパークに行こうと約束し、すっぽかした。そのまま海斗のことをブロックし、電車に飛び乗ったのだ。


「やっぱ肉かな……肉食べたい」

 今頃地元では涼太の動画がバラまかれているかもしれない。しばらく帰れそうにないし友人たちとも連絡を取る気になれない。本当の進学先を誰にも言わずに来たのも少し後ろめたさがある。
 だがどこから海斗の耳に入るかわからない。

 今頃海斗はどうしているだろうか。連絡の取れなくなった涼太を探し回っているかもしれないが、ここでもう一つ涼太には勝算があった。涼太の父は三か月ほど前に転勤が決まり、単身赴任していた。そこに涼太が家を出ることになったため、母も父の所へ行くことにした。つまり池田家はもうもぬけの殻なのである。
 海斗が池田家を訪れたところで「ここの家の人? この間引っ越したけど」と言われるだけなのだ。

 人生は、リセットボタンなんておかしなものが無くたってこうしてリセットすることができる。新しい土地、新しい学校、新しい友人……うん、大学生活が本当に楽しみだ。

 今日はお祝いということで、スーパーで肉を買って来よう。ステーキ肉ってやっぱり高いのだろうか。バイトも探さないと。

 鼻歌まじりに玄関のドアを開けた。



 ドアの向こうには、居るはずのない人物が立っていた。




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