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ハッピーエンド
⑩悪夢の後の幸福(三浦視点)
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酷い夢を見た気がした。よく思い出せないけれど、何度も涼太を犯す夢。
三浦海斗は池田涼太のことが好きだった。最初は見ているだけで良かったけど我慢できなくなって、告白しようとさえ思った。結局決心がつかなくてそのままにしたラブレターを鞄の奥底に放り込んで、未練たらしく涼太を見つめる日々。
体だけでもいいから手に入れたいと思ったこともあった。魔が差しておかしなものを沢山買った。それでも涼太の笑顔を見ていると、それを曇らせるようなことはしたくないなと思う。その笑顔を自分に向けて欲しいとも。
どうしたら涼太に近づけるだろう。話しかけることも照れ臭くてなかなかできない。
そう思っていたら、あの悪夢を見て、それから涼太が話しかけてきた。
「……賭けは俺の勝ちだからな」
放課後。帰り支度をしていると涼太が近づいてきて、そう言った。得意げにふふんとしているのがとにかく可愛くてたまらなかった。が、賭けとは何だろう。
「賭けって……池田と何かしてたっけ?」
頭の中では何度も涼太と呼んでいるけれど現実には池田としか言えない。挨拶程度しか交わしたことのない自分たちは、賭けなどするような仲ではない。
海斗の返事に涼太はビックリしたように目を見開いて、それから何も言わず去っていってしまった。
せっかく涼太の方から声をかけてくれたのに、どうして上手くいかないのだろう。それにしても涼太のドヤ顔もビックリした顔も可愛かった。
その日も夢を見た。海斗が酷いことをする度に涼太は嫌だ嫌だと泣きながら、一際甘い声で鳴く。可哀想にと思うのにそれがあまりに甘美で、海斗は結局もっと酷いことをしてしまうのだった。
目を覚まして、部屋にある手錠だとか玩具だとかを眺めてため息を吐く。好きになって貰えないならせめて体から、と思ったりもしたけれど。あの夢のようなことをしたって涼太は自分を嫌うばかりで、好きになってなんてくれないだろう。
好意を免罪符にしようとする最悪な自分を軽蔑しながらも、羨ましく思うのも事実だった。
そんな夢を見続けていたら、ある日涼太が海斗を呼び出した。
「俺は普通に可愛い彼女が欲しかったし、お前みたいな変態には関わりたくない。でも俺ももう一人じゃイケないし……とにかく、海斗が全部悪い!」
名前で呼んでもらえて夢みたいだと思った。それに涼太が語る内容は海斗の近頃見る夢にそっくりだった。あれは海斗の願望が見せた夢では無いのだろうか?
この状況も、夢ではないか?
「……とにかく、責任取って、俺と付き合え」
「…………はい」
涼太らしい、男らしい告白に頬が熱くなるのを感じた。
夢みたいだけど、どうやら現実らしい。真っ赤になった顔を涼太に笑われたけど、やっと笑顔を向けて貰えたから、全然嫌じゃなかった。
三浦海斗は池田涼太のことが好きだった。最初は見ているだけで良かったけど我慢できなくなって、告白しようとさえ思った。結局決心がつかなくてそのままにしたラブレターを鞄の奥底に放り込んで、未練たらしく涼太を見つめる日々。
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どうしたら涼太に近づけるだろう。話しかけることも照れ臭くてなかなかできない。
そう思っていたら、あの悪夢を見て、それから涼太が話しかけてきた。
「……賭けは俺の勝ちだからな」
放課後。帰り支度をしていると涼太が近づいてきて、そう言った。得意げにふふんとしているのがとにかく可愛くてたまらなかった。が、賭けとは何だろう。
「賭けって……池田と何かしてたっけ?」
頭の中では何度も涼太と呼んでいるけれど現実には池田としか言えない。挨拶程度しか交わしたことのない自分たちは、賭けなどするような仲ではない。
海斗の返事に涼太はビックリしたように目を見開いて、それから何も言わず去っていってしまった。
せっかく涼太の方から声をかけてくれたのに、どうして上手くいかないのだろう。それにしても涼太のドヤ顔もビックリした顔も可愛かった。
その日も夢を見た。海斗が酷いことをする度に涼太は嫌だ嫌だと泣きながら、一際甘い声で鳴く。可哀想にと思うのにそれがあまりに甘美で、海斗は結局もっと酷いことをしてしまうのだった。
目を覚まして、部屋にある手錠だとか玩具だとかを眺めてため息を吐く。好きになって貰えないならせめて体から、と思ったりもしたけれど。あの夢のようなことをしたって涼太は自分を嫌うばかりで、好きになってなんてくれないだろう。
好意を免罪符にしようとする最悪な自分を軽蔑しながらも、羨ましく思うのも事実だった。
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「…………はい」
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