上 下
134 / 203
ハッピーエンド

②勝ったんでしょうか?

しおりを挟む
 

「……どういうことだ?」

 賭けの内容を思い浮かべる。一日逃げ切れば涼太の勝ち。そうすれば海斗は涼太を諦める。それが海斗の言っていたことだったはずだ。
 昨日、海斗は一切涼太に接触してこなかった。犯されるどころか話もせずに終わった。

 つまり、賭けに勝ったのだろうか?

 だが相手はあの三浦海斗だ。また何かよからぬ事を考えていて、涼太がうっかりするのを待っているような気もする。
 そう考えるとまだまだ油断出来ない。たとえ今日も昼休みになっても海斗が近づいてこなかったとしても、だ。

「…………はあ」

 弁当を口に運びながらそんなことをつらつらと考えていたところで、向かいに座る柴田が重いため息を吐いた。まだ凛ちゃんのことで悩んでいるのだろうか。

「なんだよ、ため息なんて吐いて」
「んー、ちょっとな。ここ二日くらいで色々あってさ」

 リセットし続けていたので随分前に聞いたつもりだった話は本来二日前の出来事だったということに気がつく。時間の進みは涼太が思うよりずっとゆっくりしていたようだ。

「まあ涼太には色恋のことなんてわかんないと思うけどさ」

 なんだかムカついたので「そういやケツ弄るのってクセになるらしいぞ」と教えてやった。柴田が石のように固まったので少しだけ気が晴れた。
 ……自分で言っておいて、自分にも突き刺さったけど。




「……賭けは俺の勝ちだからな」

 放課後。結局涼太に近づかないうちに帰り支度を始める海斗に、こちらから言う。あれから一日経ったのだ。ちゃんと理解して、今後変なことをしないように釘をさしておかないといけない。
 海斗は普段クラスメイトに見せる穏やかな表情で「賭けって……池田と何かしてたっけ?」首を傾げた。

 賭けに負けたのを認めたくなくてしらばっくれているだけかとも思ったが、何かがおかしい。

 無意識にポケットの中を探る。壊れたリセットボタンがカチャカチャと音を立てる。

 ……海斗が認めようが認めまいが、賭けは涼太の勝ちだ。

 だけど、何となくスッキリしない。モヤモヤしたままポケットの中のリセットボタンを握りしめても何も起きなかった。
しおりを挟む
感想 161

あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...