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ハッピーエンド
②勝ったんでしょうか?
しおりを挟む「……どういうことだ?」
賭けの内容を思い浮かべる。一日逃げ切れば涼太の勝ち。そうすれば海斗は涼太を諦める。それが海斗の言っていたことだったはずだ。
昨日、海斗は一切涼太に接触してこなかった。犯されるどころか話もせずに終わった。
つまり、賭けに勝ったのだろうか?
だが相手はあの三浦海斗だ。また何かよからぬ事を考えていて、涼太がうっかりするのを待っているような気もする。
そう考えるとまだまだ油断出来ない。たとえ今日も昼休みになっても海斗が近づいてこなかったとしても、だ。
「…………はあ」
弁当を口に運びながらそんなことをつらつらと考えていたところで、向かいに座る柴田が重いため息を吐いた。まだ凛ちゃんのことで悩んでいるのだろうか。
「なんだよ、ため息なんて吐いて」
「んー、ちょっとな。ここ二日くらいで色々あってさ」
リセットし続けていたので随分前に聞いたつもりだった話は本来二日前の出来事だったということに気がつく。時間の進みは涼太が思うよりずっとゆっくりしていたようだ。
「まあ涼太には色恋のことなんてわかんないと思うけどさ」
なんだかムカついたので「そういやケツ弄るのってクセになるらしいぞ」と教えてやった。柴田が石のように固まったので少しだけ気が晴れた。
……自分で言っておいて、自分にも突き刺さったけど。
「……賭けは俺の勝ちだからな」
放課後。結局涼太に近づかないうちに帰り支度を始める海斗に、こちらから言う。あれから一日経ったのだ。ちゃんと理解して、今後変なことをしないように釘をさしておかないといけない。
海斗は普段クラスメイトに見せる穏やかな表情で「賭けって……池田と何かしてたっけ?」首を傾げた。
賭けに負けたのを認めたくなくてしらばっくれているだけかとも思ったが、何かがおかしい。
無意識にポケットの中を探る。壊れたリセットボタンがカチャカチャと音を立てる。
……海斗が認めようが認めまいが、賭けは涼太の勝ちだ。
だけど、何となくスッキリしない。モヤモヤしたままポケットの中のリセットボタンを握りしめても何も起きなかった。
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