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ハッピーエンド

①いつもの朝

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 B、リセットボタンを地面に落としてしまう


 フラフラになりながらもなんとか走って、走って、走って……息が苦しくて、もう捕まるんじゃないかと思ったその時、涼太のポケットから何かが滑り落ちる。

「――あっ」

 リセットボタンだ。掴もうと手を伸ばすが、届かない。
 そのまま、リセットボタンは勢いよく地面に落ちる。カシャンと音を立てたかと思うと、目の前の景色が歪む。

 ……そして、次の瞬間にはまたいつもの朝が訪れた。

 せっかく逃げ切れるはずだったのになあと呟いてみる。だが実の所あのまま鬼ごっこを続けていたら捕まっていただろうと予想は着いた。それでいつもみたいに犯されて、リセットして、また逃げて……その繰り返しだ。
 いつまでこんなことを続けるのだろう。涼太か、海斗か、どちらかが諦めるまでずっと?
 そんなことは耐えられない。

 ポケットの中がカチャカチャと音を立てる。不思議に思ってリセットボタンに触れる。いつもと感触が違う。

「……まじか」

 そこには真っ二つに割れた『リセットボタンだったもの』が入っていた。
 もしかして、あの時落としたから?
 それとも回数が限界に達したのか?

 ボタン部分に触れてみるが、やはり何も起きない。

 今までどんな目に遭ってもこれがあったから全て無かったことにできていたのに。この武器を失って海斗に捕まったら……もう逃げることが出来ない。
 ゲームオーバーという言葉が脳裏に浮かぶ。
 いや、それでも逃げ切れば涼太の勝ちだ。とにかく逃げればいい。

 今度こそ、最後の鬼ごっこだ。

 ……そう思ったのに、海斗はまた放課後を過ぎても接触してこなかった。また同じ展開になると思っているのだろうか?
 もう、あんなことはしない。絶対に、今度こそ海斗にはこちらから近づかない。もうこちらはリセットすることが出来ないのだ。次に捕まれば本当のゲームオーバー。せっかく今まで頑張って逃げてきた苦労が水の泡だ。

 海斗が女子に呼び出されたもの見たが、無視。とっとと家に帰ると、体調が悪いからということにして部屋に閉じこもった。誰かが来ても部屋に上げないようにしよう。このまま明日の朝まで部屋から出なければ海斗に会うことも無いはずだ。
 でも海斗のことだからまた母を懐柔して部屋に上がり込んでくるかもしれない。それとも窓から侵入してきたり……鍵はしっかりかけて、カーテンもしっかり閉めておこう。覗き込んできたら怖いし。

 しっかりドアにも鍵をかけて、布団に潜り込む。やはり精神的な疲れが溜まっているからか、すぐに瞼が重くなる。
 ダメだ、寝たら……起きたらまた海斗がいるかもしれない。そう思うのに、眠気に負けた。いつの間にか夢も見ない深い眠りの中にいた。


 ……そして、翌朝になっていた。

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