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二部 セーブ地点変更後
【番外編】もしもの世界
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「涼太のことが好きなんだ」
その日、池田涼太は生まれて初めて告白というものを受けていた。
放課後、校舎裏、手紙で呼び出され、相手は頬を朱に染めながら自分を好きだと言ってくる。絵に描いたような展開に驚きを隠せない。
――これで、相手が女の子だったら最高だったのだけど。
今時古風な、差出人のないラブレターに呼び出されて、放課後の校舎裏。
どんな奥ゆかしい女の子がやって来るのかとドキドキしながら待っていた涼太の前に現れたのは、クラスのイケメン三浦海斗だったのだ。
「……はい?」
状況が受け入れられずに聞き返すと、三浦は顔を赤くしながら「まずは友達からでいいから、俺のこと、考えて欲しい」と言ってきた。
この際男同士だからということは一旦置いておくとして、たしかに涼太は三浦のことをよく知らない。クラスは同じだけど挨拶を交わす程度の関係で、あっちは一軍、こっちは二軍。まず接点がない。
友達、ねえ……正直言ってそんなイケメンと仲良くできる気がしないけど。まあ柴田とは仲良くできてるから、三浦ともできなくはないのか?
でも俺と三浦って会話続くの?
などなど、断りたくてたまらなかったが、三浦の目を見るととても断れなかった。だって自分より背の高いイケメンが、捨てられた子犬みたいな目でこっちを見ているのだ。子犬を捨てることはできなかった。
「…………友達でよければ。恋人になる保証はないけど」
「うん!」
三浦が嬉しそうに頷く。パタパタとしっぽを振っているような幻覚が見えた気がした。
さて、三浦と会話が続かないんじゃないかと言っていたが、杞憂に終わった。
意外と涼太の好きなものを好きだったり、何より『炎の戦士フレイム』を知っていたのが嬉しかった。毎週ああでもないこうでもないと考察を語り合うのはかなり楽しい。
そうして一緒に帰ったり、遊びに行ったり、普通の友達として接していく中にも、向けられる好意。
人気者に向けられるその好意はたまらなく甘美だった。三浦が優先するのは誰よりも何よりも涼太で、その気持ちを隠そうともしない。時に態度で、時に言葉で、涼太のことを特別に好きだと伝えてくる。
そんな態度で、彼女いない歴=年齢の人間が陥落しないはずがない。
「どうしたの、涼太」
すっかり黙り込んでしまった涼太の顔をイケメンが覗き込んでくる。
この顔もいけない。今まで気が付かなかったけど、この三浦の顔はかなり好きだったみたいだ。動悸がヤバい。
「えっと……」
緊張する。
断られたらどうしよう。
嫌われたらどうしよう。
友達じゃいられなくなったら?
三浦はこんな不安を抱えながらも、気持ちを伝えてくれていたのか。
そう思うと尚更、目の前の男が愛しく思えた。
「……俺も、好き」
やっとそれだけ言うと、三浦の腕の中にいた。ぎゅうぎゅうと抱きしめられている。
「嬉しい!涼太、ありがとう」
その笑顔に心臓が掴まれたように苦しくなった。ああもう、好きだ。陥落した。好きだ。
もっと何か喜ばせてやりたい。驚かせてやりたい。三浦の首に腕を回す。ぶつかりそうなほど顔を近づけて、衝突した。
――ちゅ
「……ファーストキスだから」
恥ずかしくて、頬に熱が集まる。
本当は可愛い彼女が欲しかったのに、いつの間にか三浦に惹かれてしまった。彼女ではないけれど、不意打ちのキスにぽかんとしている三浦はまあ可愛かったので良しとしよう。
END 00『リセットしなかった世界』
【そもそも、リセットボタンを押した時点で歪んだ世界になっていたとしたら?
涼太がリセットボタンさえ拾わなければ、三浦海斗が歪むことも無く、普通に恋愛に発展できたのではないか?
リセットボタンを拾った時点で、試しに押してしまった時点で、決してたどり着くことの出来ないエンディング】
―――――――
次回から第3部スタート予定です!
その日、池田涼太は生まれて初めて告白というものを受けていた。
放課後、校舎裏、手紙で呼び出され、相手は頬を朱に染めながら自分を好きだと言ってくる。絵に描いたような展開に驚きを隠せない。
――これで、相手が女の子だったら最高だったのだけど。
今時古風な、差出人のないラブレターに呼び出されて、放課後の校舎裏。
どんな奥ゆかしい女の子がやって来るのかとドキドキしながら待っていた涼太の前に現れたのは、クラスのイケメン三浦海斗だったのだ。
「……はい?」
状況が受け入れられずに聞き返すと、三浦は顔を赤くしながら「まずは友達からでいいから、俺のこと、考えて欲しい」と言ってきた。
この際男同士だからということは一旦置いておくとして、たしかに涼太は三浦のことをよく知らない。クラスは同じだけど挨拶を交わす程度の関係で、あっちは一軍、こっちは二軍。まず接点がない。
友達、ねえ……正直言ってそんなイケメンと仲良くできる気がしないけど。まあ柴田とは仲良くできてるから、三浦ともできなくはないのか?
でも俺と三浦って会話続くの?
などなど、断りたくてたまらなかったが、三浦の目を見るととても断れなかった。だって自分より背の高いイケメンが、捨てられた子犬みたいな目でこっちを見ているのだ。子犬を捨てることはできなかった。
「…………友達でよければ。恋人になる保証はないけど」
「うん!」
三浦が嬉しそうに頷く。パタパタとしっぽを振っているような幻覚が見えた気がした。
さて、三浦と会話が続かないんじゃないかと言っていたが、杞憂に終わった。
意外と涼太の好きなものを好きだったり、何より『炎の戦士フレイム』を知っていたのが嬉しかった。毎週ああでもないこうでもないと考察を語り合うのはかなり楽しい。
そうして一緒に帰ったり、遊びに行ったり、普通の友達として接していく中にも、向けられる好意。
人気者に向けられるその好意はたまらなく甘美だった。三浦が優先するのは誰よりも何よりも涼太で、その気持ちを隠そうともしない。時に態度で、時に言葉で、涼太のことを特別に好きだと伝えてくる。
そんな態度で、彼女いない歴=年齢の人間が陥落しないはずがない。
「どうしたの、涼太」
すっかり黙り込んでしまった涼太の顔をイケメンが覗き込んでくる。
この顔もいけない。今まで気が付かなかったけど、この三浦の顔はかなり好きだったみたいだ。動悸がヤバい。
「えっと……」
緊張する。
断られたらどうしよう。
嫌われたらどうしよう。
友達じゃいられなくなったら?
三浦はこんな不安を抱えながらも、気持ちを伝えてくれていたのか。
そう思うと尚更、目の前の男が愛しく思えた。
「……俺も、好き」
やっとそれだけ言うと、三浦の腕の中にいた。ぎゅうぎゅうと抱きしめられている。
「嬉しい!涼太、ありがとう」
その笑顔に心臓が掴まれたように苦しくなった。ああもう、好きだ。陥落した。好きだ。
もっと何か喜ばせてやりたい。驚かせてやりたい。三浦の首に腕を回す。ぶつかりそうなほど顔を近づけて、衝突した。
――ちゅ
「……ファーストキスだから」
恥ずかしくて、頬に熱が集まる。
本当は可愛い彼女が欲しかったのに、いつの間にか三浦に惹かれてしまった。彼女ではないけれど、不意打ちのキスにぽかんとしている三浦はまあ可愛かったので良しとしよう。
END 00『リセットしなかった世界』
【そもそも、リセットボタンを押した時点で歪んだ世界になっていたとしたら?
涼太がリセットボタンさえ拾わなければ、三浦海斗が歪むことも無く、普通に恋愛に発展できたのではないか?
リセットボタンを拾った時点で、試しに押してしまった時点で、決してたどり着くことの出来ないエンディング】
―――――――
次回から第3部スタート予定です!
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