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二部 セーブ地点変更後

2-②保護すべき来客(林視点)

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 林がトイレから戻ると保健室に来客がいた。授業中であればサボりの可能性もあったが、今は放課後だ。帰れないほど具合が悪いのかもしれない。
 ベッドでも椅子でもなく、入って数歩のところで床に座り込んでしまっている生徒に声をかける。

「だ、大丈夫ですか?」

 いや、大丈夫じゃないからここにいるのだろけど。
 なんと声をかければいいかわからず、林の口から出たのは結局そんな言葉になった。

「大丈夫です……」

 そうして消え入りそうな声で返ってきた返事は、全然大丈夫じゃなさそうだった。




 生徒の名前は池田涼太、学年は二年生。
 本人はちょっと気持ちが悪くなっただけで、休ませてもらえばすぐ治るからと主張している。

 たしかに顔色はあまり良くない。
 だがそれよりもなにかに脅えた様子、衣服の僅かな乱れ、背中側についた汚れ……。

「鞄、教室ですよね?持ってきましょうか」
「だっ、大丈夫です!あとで取りに行きます!」

 この感じ……いじめっ子から逃げてきたのだろうか?
 背中の汚れが意味するものは、床に押さえつけられて、見えないところを殴られたのか。

「……とりあえず、具合が悪いなら、ベッドで休んでください」
「はい……――っ!」

 池田が立ち上がろうとすると、腹部を押さえてまた座り込む。
 腹を殴られたのだろうか。

「……失礼します」
「えっ!?」

 早く手当をしてやらなければ。シャツを捲りあげて腹部を確認する。痣などはない。犯人が痕を残さなかっただけだろうか?
 よくよく見ていると、腹に白いものがこびりついているのに気づく。

「……えっと……その……これは」

 池田の顔がみるみる真っ赤に染まる。
 衣服の乱れ。背中側についた汚れ。腹部の白いもの……。

 まさか、そんなことがあるのだろうか。

 シャツからのぞく首筋には歯型と鬱血痕。
 鈍感な人間にもわかる濃厚な性の香りに、くらりとする。



 同性のクラスメイトに告白されたこと。
 何故かOKしたと思われてそのまま襲われたこと。
 クラスメイトが池田の荷物を取りに行っている間に逃げてきたこと。

 ぽつりぽつりと池田が語ったのはそんなことだった。
 クラスメイトの名前は伏せたまま、何をされたかは具体的には語らない。それでもおおよそ見当はつく。先程腹を押さえたのが殴られたからでないのなら……。

 辛かっただろう。
 それなのに相手を庇おうとする優しすぎる彼を、なんとか助けてやりたいと思った。

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