63 / 203
二部 セーブ地点変更後
1-②ドアドンされました
しおりを挟む
用を足し終わって、手を洗う。
そういえば三浦とデートみたいなことをしたこともあった。ただ一緒に遊ぶだけだったなら結構楽しかったのに。もしもあのまま本当のカラオケに行っていたらどうだったのだろう?
観覧車の中で高所恐怖症を告白したように、実は音痴だったなんていうギャップがあったりしたのかもしれない。
手を洗いながらそんなことを考えていると、ドアが開いた。
珍しく他にも客がいたらしい。そう思って顔を上げて、鏡に映りこんだ姿に体が動かなくなる。
「三浦……」
落ち着こう。昨日は三浦に会っていない。つまり、今この瞬間の涼太は三浦の好意なんて知らない。手紙も入っていなかったのだから。
昨日告白できなかった三浦は、きっと、告白するのを先送りにしたのだ。それがどうしてなのかはわからないが、たとえば昨日は三浦の星座が一位だったからだとか。今日は最下位だからだとか。
だから、ただのクラスメイトとして振る舞う。
「三浦もカラオケ?」
「うん」
そっとトイレを出ようと扉に手をかける。イケメンのことだからきっと可愛い女の子と来ているに違いない。だから、今日は涼太に興味なんて持つはずがないのだ。
そう思いたかったのに、扉を掴まれて開けられない。
「み、三浦?」
「どうしたの?」
「……出られないんだけど」
「うん」
いや、うんじゃなくてここから出して欲しいんだけど。
腕を掴まれるとそのままずるずると個室に引きずり込まれる。あ、これヤバいやつだ。以前のことを思い出す。だがとても逃げられそうにない。とにかくこいつに逆らえる気がしないのはどうしてだろう。
「涼太、元気そうだね」
あ、やっぱり名前呼び。
「昨日休んでたし、お見舞いに行っても会ってもらえなかったし」
普通は挨拶くらいしかしないクラスメイトがお見舞いに来たりしないと思う。
「それなのに、今日は柴田なんかと二人っきりでデートしてるし」
デートって!男二人でカラオケに来てデート呼ばわりされるなんて冗談じゃない。
否定しようにも、有無を言わさぬ様子で、ただ三浦の言葉を聞くことしかできなかった。
「俺に嫉妬して欲しくてそうしてるの?涼太は小悪魔だね」
そんなとんでもないことを言われながらトイレのドアに壁ドンならぬドアドンをされているわけだが。小悪魔ちゃんと知り合いたいのはいつだって涼太の方だし、何なら壁ドンだってする側になりたかった。
三浦から逃げられない限り、そんな未来は来なそうなのが恐ろしいところだった。
そういえば三浦とデートみたいなことをしたこともあった。ただ一緒に遊ぶだけだったなら結構楽しかったのに。もしもあのまま本当のカラオケに行っていたらどうだったのだろう?
観覧車の中で高所恐怖症を告白したように、実は音痴だったなんていうギャップがあったりしたのかもしれない。
手を洗いながらそんなことを考えていると、ドアが開いた。
珍しく他にも客がいたらしい。そう思って顔を上げて、鏡に映りこんだ姿に体が動かなくなる。
「三浦……」
落ち着こう。昨日は三浦に会っていない。つまり、今この瞬間の涼太は三浦の好意なんて知らない。手紙も入っていなかったのだから。
昨日告白できなかった三浦は、きっと、告白するのを先送りにしたのだ。それがどうしてなのかはわからないが、たとえば昨日は三浦の星座が一位だったからだとか。今日は最下位だからだとか。
だから、ただのクラスメイトとして振る舞う。
「三浦もカラオケ?」
「うん」
そっとトイレを出ようと扉に手をかける。イケメンのことだからきっと可愛い女の子と来ているに違いない。だから、今日は涼太に興味なんて持つはずがないのだ。
そう思いたかったのに、扉を掴まれて開けられない。
「み、三浦?」
「どうしたの?」
「……出られないんだけど」
「うん」
いや、うんじゃなくてここから出して欲しいんだけど。
腕を掴まれるとそのままずるずると個室に引きずり込まれる。あ、これヤバいやつだ。以前のことを思い出す。だがとても逃げられそうにない。とにかくこいつに逆らえる気がしないのはどうしてだろう。
「涼太、元気そうだね」
あ、やっぱり名前呼び。
「昨日休んでたし、お見舞いに行っても会ってもらえなかったし」
普通は挨拶くらいしかしないクラスメイトがお見舞いに来たりしないと思う。
「それなのに、今日は柴田なんかと二人っきりでデートしてるし」
デートって!男二人でカラオケに来てデート呼ばわりされるなんて冗談じゃない。
否定しようにも、有無を言わさぬ様子で、ただ三浦の言葉を聞くことしかできなかった。
「俺に嫉妬して欲しくてそうしてるの?涼太は小悪魔だね」
そんなとんでもないことを言われながらトイレのドアに壁ドンならぬドアドンをされているわけだが。小悪魔ちゃんと知り合いたいのはいつだって涼太の方だし、何なら壁ドンだってする側になりたかった。
三浦から逃げられない限り、そんな未来は来なそうなのが恐ろしいところだった。
23
お気に入りに追加
4,482
あなたにおすすめの小説
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる