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二部 セーブ地点変更後

1-②ドアドンされました

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 用を足し終わって、手を洗う。
 そういえば三浦とデートみたいなことをしたこともあった。ただ一緒に遊ぶだけだったなら結構楽しかったのに。もしもあのまま本当のカラオケに行っていたらどうだったのだろう?
 観覧車の中で高所恐怖症を告白したように、実は音痴だったなんていうギャップがあったりしたのかもしれない。

 手を洗いながらそんなことを考えていると、ドアが開いた。

 珍しく他にも客がいたらしい。そう思って顔を上げて、鏡に映りこんだ姿に体が動かなくなる。

「三浦……」

 落ち着こう。昨日は三浦に会っていない。つまり、今この瞬間の涼太は三浦の好意なんて知らない。手紙も入っていなかったのだから。
 昨日告白できなかった三浦は、きっと、告白するのを先送りにしたのだ。それがどうしてなのかはわからないが、たとえば昨日は三浦の星座が一位だったからだとか。今日は最下位だからだとか。

 だから、ただのクラスメイトとして振る舞う。

「三浦もカラオケ?」
「うん」

 そっとトイレを出ようと扉に手をかける。イケメンのことだからきっと可愛い女の子と来ているに違いない。だから、今日は涼太に興味なんて持つはずがないのだ。

 そう思いたかったのに、扉を掴まれて開けられない。

「み、三浦?」
「どうしたの?」
「……出られないんだけど」
「うん」

 いや、うんじゃなくてここから出して欲しいんだけど。
 腕を掴まれるとそのままずるずると個室に引きずり込まれる。あ、これヤバいやつだ。以前のことを思い出す。だがとても逃げられそうにない。とにかくこいつに逆らえる気がしないのはどうしてだろう。

「涼太、元気そうだね」

 あ、やっぱり名前呼び。

「昨日休んでたし、お見舞いに行っても会ってもらえなかったし」

 普通は挨拶くらいしかしないクラスメイトがお見舞いに来たりしないと思う。

「それなのに、今日は柴田なんかと二人っきりでデートしてるし」
 デートって!男二人でカラオケに来てデート呼ばわりされるなんて冗談じゃない。
 否定しようにも、有無を言わさぬ様子で、ただ三浦の言葉を聞くことしかできなかった。

「俺に嫉妬して欲しくてそうしてるの?涼太は小悪魔だね」

 そんなとんでもないことを言われながらトイレのドアに壁ドンならぬドアドンをされているわけだが。小悪魔ちゃんと知り合いたいのはいつだって涼太の方だし、何なら壁ドンだってする側になりたかった。
 三浦から逃げられない限り、そんな未来は来なそうなのが恐ろしいところだった。

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