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二部 セーブ地点変更後

1-①清々しい朝

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 その日靴箱には上履き以外何も入っていなかった。

 今までのことは悪い夢を見ていただけなのではないかと思うほど清々しい朝だった。両親に心配されたり、学校は昨日休んでいたことになっていたので、やはり夢ではなかったのだけど。
 おそらく昨夜自分で尻の穴をいじった事実もそのままなのだろうけれど、三浦に会わずに済んだ前日の存在と、手紙のないスタートは涼太の足取りを軽くするのに十分だった。

 そうして明るく教室に入った涼太とは対照的に、どんよりと肩を落とした柴田がいた。

「おはよー」
「……あ、涼太か…………おはよ」

 挨拶をしてみても、暗い。
 昨日は彼女の凛ちゃんの家に招かれてデートだったはずだ。それなのにこんなに落ち込んでいるということは、喧嘩したか、それとも初エッチが上手くいかなかったとか?
 あまり彼女のことに触れない方がいいのだろうか?

「柴田、元気ないな」
「……お前は休んでたわりに元気そうだな」
「おう、休んだからかめっちゃ元気!ホントは柴田をカラオケに誘おうと思ってたんだけどなー」
「…………行く」
「体調悪いんじゃないの?」
「いや、これは体調とかじゃないし。たぶん俺には気分転換が必要だ」

 やはり凛ちゃんに振られたか、喧嘩でもしたのか。何かあったようだ。
 とにかく柴田も涼太と遊ぶことが気分転換になるならウィンウィンだろう。




 そうか、イケメンは歌も上手いのか。
 きっと三浦も上手いんだろうな。柴田の歌を聴きながらそんなことを思う。

 柴田は歌によって少しストレスを発散出来たのか、それでも時折何か言いたげに涼太を見て、また視線をそらすということを繰り返していた。
 もう少ししたら話してくれるだろうか。

「ちょっとトイレ」

 ドリンクが空になったところで、おかわりを持ってくるついでにトイレに行こうと部屋を出る。残された柴田は何を歌おうかとタブレットを眺めていた。
 ああいうイケメンで、歌も上手いやつが、女の子とカラオケに行くとモテるんだろうな。このラブソングは私に向けられているの?とか勘違いしたりとか。

 廊下に出るとドアが開いたままの部屋が並んでいる。
 このカラオケは安いわりに寂れていて、利用客があまりいない。機械が古いせいもあるだろう。涼太と柴田はこの寂れた感じが好きではあったけど。

 トイレにはいつも誰かのライブDVDらしきものが流れていて、今日はそれが誰なのか聞くのが密かな楽しみになっていた。


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