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一部 同じ日のループ

5-①再び逃げました

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 池田涼太は靴箱を開けているところだった。上履きの上に手紙が乗っている。

 また、この時間に戻ってきてしまった。最初にリセットした時もそうだったが、どうにか三浦の隙をついてリセットボタンを押しているので、詳しい時間を思い浮かべる余裕がない。印象深かったこの時間にばかり戻ってしまうようだ。


 だが、そろそろまずい。
 人前で尻の中をいじられて気持ちよくなるなんて、おかしな性癖に目覚めつつあるのではないか。ペニスを挿入されても痛くなくなってきたどころか気持ちよくなってきているのではないか。
 思い出しただけでほんの少しだけ、下腹に熱が集まる。

 もう捕まれない。なんとしても逃げなくてはならない。





 財布とスマホとリセットボタンをポケットに放り込んだ。
 鞄は机の横にかけて、そのまま職員室に向かい、担任を捕まえた。
 そして鞄を残したまま帰宅。
 これなら帰ったとは思わないだろうから時間が稼げるはずだ。

 三回目の時のことを思い出すと怖いので、徒歩で帰ることにした。

 幸い、歩いて帰れない距離ではない。だいたい一時間くらいで家に着く。
 今日は家に帰って、一歩も家から出ないようにしよう。明日はどうしよう。ずっと同じ日を繰り返しているので翌日というのは未知だ。前回は日付が変わり、朝になるまで犯されていたのだが。すぐリセットしたし。
 明日も家から出たくないし、いっそこのまま引きこもりになろうかとも思う。まあ、無理だろうけど。


 通りかかった公園で子供たちが無邪気に遊んでいる。
 いいな、悩みなんて何もなさそうで。
 たしかにその頃はいくつも悩みがあって、それが何よりも重大なことに思えていたのだけど。今の涼太から見れば可愛いものだ。

 このリセットを繰り返す絶望も、いつか、そんな風に些細なことのように思えればいいのだが。

 そのためには、帰って、明日からどうやって三浦から身を守るか考えよう。


 そう、思ったのだが。


「――んんっ」

 突然背後から口元に布が押さえ付けられる。声を上げようとしても上手く出せず、目には目隠しをされる。
 視界と口が塞がった状態で茂みらしきところに引きずり込まれた。

 逃げられない。

 でも、触れてくる指先が、すぐに見知った人のものだと気づいてしまう。


 だから、ほんの少しだけ、そこが期待に疼いたような気がした。

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