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子供らしい交流を持った幸せな時間が、あっと言う間に過ぎ去りました。そんなある日の事、ゾンネは気付いてしまいます。
王子様達が成長し…、茶褐色の羽が大人の証である瑠璃色に変化する頃…、王子様達が…、ゾンネよりも控え目で、温和な性格のモーントの事だけを本当に大切に扱っている事に…、そして、妹のモーントが自分の婚約者であるレヒトに恋している事にも……。ゾンネ以外の皆の目が、表情が、言葉に成らない感情を物語っていました。
切っ掛けは、幼馴染みである王子様達を「好きだよね」と言う言葉。何気ない会話の1ページ。本当は愛しているからであろうモーントの過剰反応。
「違います。将来[兄と成るレヒト様]を御慕いしているだけです!」と言う妹、嘘が下手なモーントの明らかな嘘。「姉様が不安に思うなら…、もう二度と、レヒト様には近付きません……。今からでも、修道院に入ります。入らせて下さい。」何かがあったからであろう。必死で悲痛なモーントの言葉。
ゾンネは、最初から自分のモノでは無いのだろうレヒトの気持ちを受け入れられなくて…、融通の利かない婚約者であるレヒトの真面目さと…、妹であるモーントの悲しいまでの優しさに甘えて…、暫くの間…、何も聞かなかった事、見なかった事にして…、偽り含みの時を過ごして…傷付き、絶望し、後悔します……。
真面目なレヒトが口にする優しくて残酷な嘘と偽りの愛、レヒトが触れて寄り添う温もりは、ゾンネの元にありました。…が、自分の婚約者であるレヒトからの真実の愛と…、その弟のリンクの愛までも総てが…、ゾンネの妹であるモーントの元にありました……。
気付いてしまってからは、将来の事を互いの言葉で確かめ合って嘘の幸せを提示され、婚約者であるレヒトに嘘に塗れた愛を語られても、心が冷えて凍て付き、「嬉しい」と自分も嘘を吐いて泣きながら笑っても、レヒトと繋いだ手はゾンネにとって、白々しく冷たいモノにしか感じられなくなってしまいました。
泣いたのは、辛かったからです。レヒトに笑って見せたのは、誤魔化しと、もしかしたら、自分の思い過ごしかも知れない可能性を考えずに入られなかったからです。
気丈なゾンネは、婚約者であるレヒトの口から愛して貰えていない事を耳にするまで、誰にも自分の本音を零す事なんて、どうやってもできませんでした……。
移り変わる季節。自室に引き籠もる事が増え、モーントは恋煩いで伏せりがちに成り、それでも呼び出されれば、それなりに立ち振る舞い。その姿が儚げで、本人の意思に関係なく周囲を魅了していきます。モーントへの求婚者達の出現に、王子様達は気が気ではない様子です。
モーントが好印象で強かな策略家であれば、心の底から憎む事も出来た事でしょう。一緒に生まれ育ち。何時も一緒に居るゾンネには、近過ぎて…、知り過ぎていて…、多少、妬む事は出来ても…、モーントに憎しみを持つ事は出来ませんでした……。
そして、真実を耳にする事に成った運命の日。
レヒトが弟であるリンクに本音を語っているのを耳にしてしまった時。ゾンネは遠く離れた物陰に隠れ、モーントへの愛を口にしながら涙するレヒトと同じ様に涙を流し、声を殺して小さく嗚咽をこぼす程に号泣しました。
ゾンネは「私はモーントの様には愛して貰えない。モーントはレヒトに取って特別な存在で、私はレヒトにとって邪魔で、必要の無い存在なんだね…」と、そう思い知ったのです。思い知らされたのです。
「それを私が認め、許せば、アナタも私に気を許してくれますか?表面的な付き合いではなく、ちゃんと、子供の頃の様に私を見て、御話してくれますか?」
ゾンネの呟きは、独白として誰の耳にも届く事無く、葬り去られました。
ゾンネは、自分と婚約者であるレヒトに用意されていると信じていた幸せな未来が、愛し愛される将来の希望が最初から存在していない事を自覚し、それをもう暫く、胸にしまい込み、秘密にする事にします。
王子様達が成長し…、茶褐色の羽が大人の証である瑠璃色に変化する頃…、王子様達が…、ゾンネよりも控え目で、温和な性格のモーントの事だけを本当に大切に扱っている事に…、そして、妹のモーントが自分の婚約者であるレヒトに恋している事にも……。ゾンネ以外の皆の目が、表情が、言葉に成らない感情を物語っていました。
切っ掛けは、幼馴染みである王子様達を「好きだよね」と言う言葉。何気ない会話の1ページ。本当は愛しているからであろうモーントの過剰反応。
「違います。将来[兄と成るレヒト様]を御慕いしているだけです!」と言う妹、嘘が下手なモーントの明らかな嘘。「姉様が不安に思うなら…、もう二度と、レヒト様には近付きません……。今からでも、修道院に入ります。入らせて下さい。」何かがあったからであろう。必死で悲痛なモーントの言葉。
ゾンネは、最初から自分のモノでは無いのだろうレヒトの気持ちを受け入れられなくて…、融通の利かない婚約者であるレヒトの真面目さと…、妹であるモーントの悲しいまでの優しさに甘えて…、暫くの間…、何も聞かなかった事、見なかった事にして…、偽り含みの時を過ごして…傷付き、絶望し、後悔します……。
真面目なレヒトが口にする優しくて残酷な嘘と偽りの愛、レヒトが触れて寄り添う温もりは、ゾンネの元にありました。…が、自分の婚約者であるレヒトからの真実の愛と…、その弟のリンクの愛までも総てが…、ゾンネの妹であるモーントの元にありました……。
気付いてしまってからは、将来の事を互いの言葉で確かめ合って嘘の幸せを提示され、婚約者であるレヒトに嘘に塗れた愛を語られても、心が冷えて凍て付き、「嬉しい」と自分も嘘を吐いて泣きながら笑っても、レヒトと繋いだ手はゾンネにとって、白々しく冷たいモノにしか感じられなくなってしまいました。
泣いたのは、辛かったからです。レヒトに笑って見せたのは、誤魔化しと、もしかしたら、自分の思い過ごしかも知れない可能性を考えずに入られなかったからです。
気丈なゾンネは、婚約者であるレヒトの口から愛して貰えていない事を耳にするまで、誰にも自分の本音を零す事なんて、どうやってもできませんでした……。
移り変わる季節。自室に引き籠もる事が増え、モーントは恋煩いで伏せりがちに成り、それでも呼び出されれば、それなりに立ち振る舞い。その姿が儚げで、本人の意思に関係なく周囲を魅了していきます。モーントへの求婚者達の出現に、王子様達は気が気ではない様子です。
モーントが好印象で強かな策略家であれば、心の底から憎む事も出来た事でしょう。一緒に生まれ育ち。何時も一緒に居るゾンネには、近過ぎて…、知り過ぎていて…、多少、妬む事は出来ても…、モーントに憎しみを持つ事は出来ませんでした……。
そして、真実を耳にする事に成った運命の日。
レヒトが弟であるリンクに本音を語っているのを耳にしてしまった時。ゾンネは遠く離れた物陰に隠れ、モーントへの愛を口にしながら涙するレヒトと同じ様に涙を流し、声を殺して小さく嗚咽をこぼす程に号泣しました。
ゾンネは「私はモーントの様には愛して貰えない。モーントはレヒトに取って特別な存在で、私はレヒトにとって邪魔で、必要の無い存在なんだね…」と、そう思い知ったのです。思い知らされたのです。
「それを私が認め、許せば、アナタも私に気を許してくれますか?表面的な付き合いではなく、ちゃんと、子供の頃の様に私を見て、御話してくれますか?」
ゾンネの呟きは、独白として誰の耳にも届く事無く、葬り去られました。
ゾンネは、自分と婚約者であるレヒトに用意されていると信じていた幸せな未来が、愛し愛される将来の希望が最初から存在していない事を自覚し、それをもう暫く、胸にしまい込み、秘密にする事にします。
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