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No03 次期君主は山猫を飼い慣らしたい

026 山猫の住処 2

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 硝子機材が並ぶ場所へ入ったジエンは、夕暮れの茜色が部屋を染める薄暗い部屋の中…、大きな禿鷲に見られながらの為、緊張し…、膝を突いてシャンマオに触れる……。すると、シャンマオは身動ぎし、頭まで毛布の中に入ってしまった。ふぁわさっと禿鷲の体毛が膨れ、禿鷲に警戒された感を感じはしたのだが…、ジエンは、触れたシャンマオの湿り気を帯びた肌と温かさが気になり…、そっと毛布をめくり、毛布の中に手を入れ…、シャンマオの額や頭、頬や首に触れる……。
今度は、ジエンの手の冷たさが、寧ろ心地よかったのだろうか?シャンマオはジエンの手を掴み、キュッと自らに抱き寄せた。
ジエンは自分の体温と比べ「少し体温高いよな…風邪かな?」と呟き…、シャンマオの髪を撫で…、毛布を掛け直し、そのまま寝かせたまま…、隣の居間にでも泊まらせて貰おう…と、滞在の準備の指示を出しに行くと…、既に、その準備は、始まっていた……。

 ハオユーが干された洗濯物を畳み、ハオシュエンが居間の窓の一つを開け、板で簡易な煙突を作り、石を積んでカマドを作っていて、嘔吐臭のするドウンは外の井戸で水浴びをしているらしく、その場には居なかった。
ジエンが「シャンマオ…少し熱があるっぽくて……」と話すと、ハオシュエンとハオユーは「居るのに出て来ないって事で、予測は付いてましたよw」「ココで暫く滞在って言う事で良いんですよねw」と有能振りを発揮し、あっと言う間に泊まる支度を調え、勝手知ったるかの如く、この家の中にあるモノを引っ張り出し、使える様に仕立て上げ、この家の備蓄をも見付け出して、夕食まで作り上げてしまう。
(これは流石に、後でシャンマオが怒るのではなかろうか?)とジエンは思ったのだが…、ジエン御一行が出す物音、話し声で目を覚ましたシャンマオは…、居間で勝手に煮炊きする面々を発見して、そこに大きな禿鷲ドゥイジャンが混ざっているのを見て…「うぅ~わ、マジでか…」と言って他にはリアクション無く、元いた部屋へ帰って行く……。

 ジエンが、シャンマオの機嫌を損ねたのではないか?と心配になって立ち上がり、ハオユーに、シャンマオ用の粥を持たされ、シャンマオを追い掛け様子を見に行くと、シャンマオは、一枚布のワンピースを脱ぎ、着替ようとしている所だった。
ジエンは粥をテーブルの上に置き、微かな月明かりに照らされるシャンマオを凝視して「無防備過ぎやしないか?着替えるなら鍵閉めろよ」と言う。
シャンマオは一応、脱いだワンピースで胸元等を隠し「ねぇ~よ、そんな物…田舎を舐めんなよw家の扉にすら無かったろ?」と言いながら背を向けた。
「不用心だな…、賊でも入って来て襲って来たらどうするんだ?」
「悪意を持ってるヤツに関しては、基本的にドゥイジャン達…、禿鷲達が教えてくれるよ…、と…、ん?あぁ~…、一応、領主の息子だし、教えて置いた方が良いのか…」シャンマオは、ジエンの立場を思い出し、頭首争いってのがあって、襲われる事もあるのかも?と思い。緊急避難用に作られた。シャンマオが常用している通路を教える事にした。
「一方通行ではあるけど、避難路があるぞw山の下まで短時間で行ける秘密の滑り台がww着替えたら案内するから、居間で待っててくれ…って?!何故に、こっちまで来た?」
ジエンはシャンマオを後ろから抱き締め「熱、下がったかなぁ~って思って…」とシャンマオの、少し汗ばみ熱を持つ首筋に唇を押し当ててから、頬を擦り寄せ、上がっていくシャンマオの心拍数を感じ取る。

「いや、いやいやいやいや…、オカシイダロ?そう言う訳なら、服着させろや!」
「あぁ、そっか、ドキドキ効果で好きになって貰っても、病気で死んだら意味ないもんねw」
「…はぁ?…、って、そりゃ、吊り橋効果の事か?」
シャンマオは、腕の力を緩めてくれたジエンの顔を振り返り至近距離で見上げ…(策士なのに…、何故、こんなにも…残念感が付きまとう纏うんだろうか?)と思いながら…、(好きとは言えないけど…、もう、嫌いとは思えないんだよな……。)と溜息を吐いて、(確かに、相手の体温を温かく感じないって事は、熱があるんだな…薬飲も……。)とジエンを押し退け…、下山して出掛ける時の男装服では無く、この周辺で採取に行く時のラフな上下を身に纏う……。
ジエンは少し距離を取り、逃げないシャンマオを見詰め、(逃げないって事は、少しでも懐いてくれたって事なのかな?)と嬉しそうに、着替えを黙って眺めていた。
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