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03 吉原柄の法被と銀狐
030 無い物強請り 3
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我が兄[春男]の初めての外泊。然も無断。と、私の着せ替え人形デビューの日。私の知らない所、手足の震えと冷たい汗の後、意識を保てなくなって私が倒れた後で色々と何やら事が動いたらしい。
私が意識を取り戻すと、口の中に嫌な薬湯の味と苦み。私の手を握り私が寝かされている布団の横で添い寝するアオマルの姿。「落ち着け!!ありゃ、看病してただけだよ!」と言われながら若い衆に羽交い締めにされた春男の姿があった。
夢現に耳にしたその場の会話(?)の内容を元に推察するに…、見世に帰って来た春男は、昨晩、余所の見世で女を買った事を揶揄され、皆が知っていると教えられ動揺…、[父親と同じ様に見られるのは困る]と、私に化粧と髪結いをし終え、私を見守っていたアキノ兄さんに昨夜の無断外泊の訳と事情を話して…、話が終わった後で、私のフル装備の花魁コスプレに気付き、如何やら身売りの仕事を始めるのかと勘違いしたらしく、「それだけは勘弁してくれ」と焦って、何かしらの交渉を持ち掛けたもよう…、その後、奉行所へと、知っている事を話す為に出掛け…、帰って来た所で…、軽く化粧を落とされ、私が寝間着に着替えさせられ布団で寝ていた事が問題だったらしい……。何故、如何して春男が、そう思うのか意味不明だけど「男女の関係になるのは、まだ早い」とか何とか言っている。若干、意味が分からない。
見世では17歳に成れば新造から女郎に成って体を売るのが普通の事。私は今年、18歳だ。遊女として売られる運命が変わっていなければ、去年から私も体を売っていた事だろう。
そんな女の性を売る見世で生活し、自ら、女の性を買う見世の客に成っている男が何を突然、潔癖な事を言ってるんだか、私が誰と寝てても、それは私の自由、事の成り行き。あの父親の様に[あの人]を買った男達に、とやかく言われるは気に食わない…孝造、春男、孝造の行動を調べる名目で[あの人]を指名して買ったアオマルにも……。
[あの人]と関係するなら、私の事は放って置いて欲しい。[あの人]の為に何かするのなら、もう、私に話し掛けて欲しくも無い。だから、私は袂を分けるかの如く。茜様と寄親である秋之丞に自分の思いを話して頼み込み、[あの人]を買った男達と話す事無く「あぁ~、ウチも御義母さんに対して、そう言う感情持って旦那と喧嘩した事あるわwでもな、それ、どっかで妥協点見付けんなアカン事やで!」「自分を客観的に見れる様に成ったら戻っといで」と忠告されながら「考える時間はあげる。でも、考える時間が長ければ長い程、無くすモンはおおなるよ」と送り出され、見世から引手茶屋の方に寝床を移した。
引手茶屋の方では丁度、用心棒の多くが岡引きに引っ立てられていて、人員不足で困っていたと言う。御陰で引手茶屋では簡単に受け入れられて…、暫く、人員が揃うまで…と、引手茶屋に住み込む事に成る……。
仕事は、茶屋専属の用心棒。副業は禁止。但し特例で、茶屋の備品の修繕は副業に含まない。修繕したら別途で小遣いが出る。単独で出歩かない。と言う約束が成された。総ての約束に、茜様とアキノ兄さんの意向が反映されているらしい。
そして茶屋の店主は、店の警備だけでは無く。引手茶屋から御客を揚屋へ送迎する一組(2人以上)の護衛の1人として私を使い。「送ったら他の護衛を連れ帰って来ておくれ」と上手に私を使って下さる。
今まで送ったら、揚屋に留まり、[宴会の御零れ]に与ろうとする者が後を絶たなかったと言う。人員不足の今現在「それでは困るのだ」と言う事で、私は自分を縁起物だと言う呈で御客様に売り込んで貰い。引手茶屋の方で御客様に[銀狐]として挨拶をし、揚屋までの護衛のメンバーを紹介して、吉原駕籠が来るまで御客様の酒の相手をする事で、護衛が銀等のチップをゲットするチャンスを与え、御客様が吉原駕籠で移動する揚屋までの道程、手古舞の仕事の様な演出を少々。揚屋に着いての引き継ぎをも少しばかり大袈裟に演出。御客様との別れの挨拶までしっかり勤め、花魁を立て、護衛を引き連れ退散。幾度か挨拶の際に酔っ払った御客様から小判や一分判を貰って…、小判なら、1枚=1両=銀60匁=4000文…、一分判なら、1個1/4の価値1000文を2つ、3つ…、それを…ちゃんと私と一緒に帰って来た者と分け合う形で、引手茶屋での自分の地位を固める事が出来た……。でも、ここに居られるのには期限がある。
培った地位は一生物では無い。だけど、引手茶屋で稼いだ小遣いの殆どは[実の兄が、実の父親の様に借金を作った場合の穴埋めに使って下さい。]と認め署名した書状と共にアキノ兄さんに預ける事にした。
週に一度、様子を見に来てくれるアキノ兄さんは「闇が深過ぎやしないか?」と私を心配してくれ…、今回、春画の依頼書を持ってアキノ兄さんに付いて来た赤目に見世の近況を教えて貰って、私は薄く笑う……。春男は前より一層、[あの人]の元へ通い。私に求婚して来ていたアオマルは、住み込みの見世では不都合が有るからか?余所の見世の女に手を伸ばし始めたそうだ。所詮そんなモノだろうと思ってたよ。特に春男、実の父親の様に借金を作りそうなレベルで通うとか、テンプレか?自分の準備の良さが虚しくて泣きそうだよ……。
茶屋の店主と話をする為に席を外し、私と赤目の会話の内容を知らないアキノ兄さんは「一度、見世に帰って春男や青葉丸と話してみるんは如何やろ?」って言うけど、私は到底、帰って真実を確かめるとか馬鹿馬鹿しくて、曖昧に返事する事しか出来なかった。
私が意識を取り戻すと、口の中に嫌な薬湯の味と苦み。私の手を握り私が寝かされている布団の横で添い寝するアオマルの姿。「落ち着け!!ありゃ、看病してただけだよ!」と言われながら若い衆に羽交い締めにされた春男の姿があった。
夢現に耳にしたその場の会話(?)の内容を元に推察するに…、見世に帰って来た春男は、昨晩、余所の見世で女を買った事を揶揄され、皆が知っていると教えられ動揺…、[父親と同じ様に見られるのは困る]と、私に化粧と髪結いをし終え、私を見守っていたアキノ兄さんに昨夜の無断外泊の訳と事情を話して…、話が終わった後で、私のフル装備の花魁コスプレに気付き、如何やら身売りの仕事を始めるのかと勘違いしたらしく、「それだけは勘弁してくれ」と焦って、何かしらの交渉を持ち掛けたもよう…、その後、奉行所へと、知っている事を話す為に出掛け…、帰って来た所で…、軽く化粧を落とされ、私が寝間着に着替えさせられ布団で寝ていた事が問題だったらしい……。何故、如何して春男が、そう思うのか意味不明だけど「男女の関係になるのは、まだ早い」とか何とか言っている。若干、意味が分からない。
見世では17歳に成れば新造から女郎に成って体を売るのが普通の事。私は今年、18歳だ。遊女として売られる運命が変わっていなければ、去年から私も体を売っていた事だろう。
そんな女の性を売る見世で生活し、自ら、女の性を買う見世の客に成っている男が何を突然、潔癖な事を言ってるんだか、私が誰と寝てても、それは私の自由、事の成り行き。あの父親の様に[あの人]を買った男達に、とやかく言われるは気に食わない…孝造、春男、孝造の行動を調べる名目で[あの人]を指名して買ったアオマルにも……。
[あの人]と関係するなら、私の事は放って置いて欲しい。[あの人]の為に何かするのなら、もう、私に話し掛けて欲しくも無い。だから、私は袂を分けるかの如く。茜様と寄親である秋之丞に自分の思いを話して頼み込み、[あの人]を買った男達と話す事無く「あぁ~、ウチも御義母さんに対して、そう言う感情持って旦那と喧嘩した事あるわwでもな、それ、どっかで妥協点見付けんなアカン事やで!」「自分を客観的に見れる様に成ったら戻っといで」と忠告されながら「考える時間はあげる。でも、考える時間が長ければ長い程、無くすモンはおおなるよ」と送り出され、見世から引手茶屋の方に寝床を移した。
引手茶屋の方では丁度、用心棒の多くが岡引きに引っ立てられていて、人員不足で困っていたと言う。御陰で引手茶屋では簡単に受け入れられて…、暫く、人員が揃うまで…と、引手茶屋に住み込む事に成る……。
仕事は、茶屋専属の用心棒。副業は禁止。但し特例で、茶屋の備品の修繕は副業に含まない。修繕したら別途で小遣いが出る。単独で出歩かない。と言う約束が成された。総ての約束に、茜様とアキノ兄さんの意向が反映されているらしい。
そして茶屋の店主は、店の警備だけでは無く。引手茶屋から御客を揚屋へ送迎する一組(2人以上)の護衛の1人として私を使い。「送ったら他の護衛を連れ帰って来ておくれ」と上手に私を使って下さる。
今まで送ったら、揚屋に留まり、[宴会の御零れ]に与ろうとする者が後を絶たなかったと言う。人員不足の今現在「それでは困るのだ」と言う事で、私は自分を縁起物だと言う呈で御客様に売り込んで貰い。引手茶屋の方で御客様に[銀狐]として挨拶をし、揚屋までの護衛のメンバーを紹介して、吉原駕籠が来るまで御客様の酒の相手をする事で、護衛が銀等のチップをゲットするチャンスを与え、御客様が吉原駕籠で移動する揚屋までの道程、手古舞の仕事の様な演出を少々。揚屋に着いての引き継ぎをも少しばかり大袈裟に演出。御客様との別れの挨拶までしっかり勤め、花魁を立て、護衛を引き連れ退散。幾度か挨拶の際に酔っ払った御客様から小判や一分判を貰って…、小判なら、1枚=1両=銀60匁=4000文…、一分判なら、1個1/4の価値1000文を2つ、3つ…、それを…ちゃんと私と一緒に帰って来た者と分け合う形で、引手茶屋での自分の地位を固める事が出来た……。でも、ここに居られるのには期限がある。
培った地位は一生物では無い。だけど、引手茶屋で稼いだ小遣いの殆どは[実の兄が、実の父親の様に借金を作った場合の穴埋めに使って下さい。]と認め署名した書状と共にアキノ兄さんに預ける事にした。
週に一度、様子を見に来てくれるアキノ兄さんは「闇が深過ぎやしないか?」と私を心配してくれ…、今回、春画の依頼書を持ってアキノ兄さんに付いて来た赤目に見世の近況を教えて貰って、私は薄く笑う……。春男は前より一層、[あの人]の元へ通い。私に求婚して来ていたアオマルは、住み込みの見世では不都合が有るからか?余所の見世の女に手を伸ばし始めたそうだ。所詮そんなモノだろうと思ってたよ。特に春男、実の父親の様に借金を作りそうなレベルで通うとか、テンプレか?自分の準備の良さが虚しくて泣きそうだよ……。
茶屋の店主と話をする為に席を外し、私と赤目の会話の内容を知らないアキノ兄さんは「一度、見世に帰って春男や青葉丸と話してみるんは如何やろ?」って言うけど、私は到底、帰って真実を確かめるとか馬鹿馬鹿しくて、曖昧に返事する事しか出来なかった。
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