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 小柄なメガイラが身振り手振りを交えて長々と語る数々のティーシポネーの功績。
要するに、メガイラが代表して、王族の権威向上に尽力したティーシポネーは、国王様から[公爵]の地位を貰ってるから偉いんだよ!と言う御話をしている訳なのだが、原作ゲームの主人公フィリアは途中から聞いていない御様子だった。フィリアは、身の回りに集まってくる男友達(?)にコソコソ話し掛け小さく悪態を吐いている様に見える。

 若しかしたら、入学して数日目なフィリアは、学園での常識にうとく、公然の秘密と成っている事柄も知らないのかも知れない。

 因みに、公然の秘密とは…、知っている人は皆が知っているけど、後から来た者に敢えて教えない事があるから…、知らない人は全く知らない事もある秘密である……。
功績こうせきを挙げて貴族に仲間入りしたり、しばらく、一定期間の間に再度、功績を挙げ続けられず、地位を剥奪はくだつされる事もある貴族。金の切れ目が縁の切れ目、業績を上げ続け金持ちであり続けなければ、学院に通えない商家の生まれの平民。と言うのが学園に通う生徒の基本環境設定。途中入学&退学、結婚の為に途中退場、訳あっての休学も多く、生徒の入れ替わり立ち替わりの激しい学園内での事。色々と知らない人間がいても仕方が無いのかも知れない。

 まぁ、それならそれで良いだろう。
エリニュエスに寄るフィリアからの[ざまぁ]対策の一つは、自らのとティーシポネーの必然的な婚姻の必要性排除。何を隠そう、跡継ぎ問題がある為にアレークトーとメガイラには未来の旦那が必要と成るが…、エリニュエス自身は男爵の地位を獲得済み、ティーシポネーにも侯爵の地位をエリニュエスが事前準備した為、結婚しなくて独身貴族を貫いても問題無し!婚約者だって必要が無いので…、その点に置いて、原作主人公と対立する必要が少ないのだが…(後、気ぃ付けんなアカンのは…、アレクト嬢とメラ嬢の婚約者、簡単に攻略させたらへんけどね…)身内の敵は自分の敵…、(攻略の…どないな邪魔が出来るやろか?ちょっと楽しみやなぁ~)色々仕掛けて、密やかに手薬煉てぐすねを引いて待っている……。

 そんな訳なのだが(…そう言や…こん人、私とエフティヒア兄さんを間違えとんとちゃうのん?…いや、ホンマ、取り違って間違っとうよね?今さっき「昨日、エフィ様に会って、御迷惑を…」とか何とか言わんかった?昨日、出会でくわしたん私やで?あぁ~…ん~…でも、まぁ~えぇ~か…、今からでもエフティヒア兄さんに攻略仕掛けられ始めんのも、ごっつう面んないし…黙っとったれ)と、若干の拍子抜け要素を感じ、更に(何か知らんけど、この原作主人公て、何や怖いし悪態付くし…思てたんと、えらいちごてんなぁ…、むしろ、性格が悪役向けとちゃいますのん?)原作でも、今の現実でも、[聖女]設定で学園に入って来たフィリアの性格に(聖女要素に捜索願い出さんなアカンくない?)的な疑問を感じるし(私の聖女のイメージ、崩さへんとって欲しわぁ~…男共は、聖女がこない俗物でえぇ~んかいな…、俗に言う外面女[ぶりっこ]て言うヤツとちゃうんか?)と原作主人公に対して嫌悪感しか抱けないエリニュエスなのであった。

(アカンアカン…、ムカ付く系の女やからてイジメは駄目絶対!原作の強制力で、こっちが[ざまぁ]されたらたまらんわ…、付き合いは笑顔の仮面被って程々に!心の距離…いや、精神的にみぞは大きく掘って…、誠心誠意せいしんせいいなアレ…、クレーマーに対応し、SNSの批判を気にする営業スタッフ気分で頑張って行こう!)
それが原作主人公様に対しては、一番適当であるのかも知れない。エリニュエスは笑顔の仮面を貼り付けて一歩前に出て、「何故ですか?如何してですか?」と愛称呼びが何故、如何して許されないのか?を理解しないフィリアに対して「幼馴染みがエリスって呼ぶのは仕方が無い事だけど、女の子みたいな愛称を(アンタさんに)勝手に広められるのは好ましくないな」と感想を述べるに留め、「(アンタなんかに呼ばれんの)好きじゃないんだよね」と溜息を吐いて見せる事だけに注視した。

 沈黙する周囲。そしてエリニュエスは振り返り…、不安と衝撃を受けてしまったらしきエリニュエスをエリス呼びしている幼馴染み達に対してだけ…、唇の前に人差し指を一瞬持って行って、悪戯っ子の様な笑顔を見せるのであった……。

 くして、今回の騒動、と言っても原作ゲームの主人公フィリアが駄々を捏ねただけの御話に、終止符は打たれた。の後日談。
事前に流行させ、身内全員には確実に持ち歩かせていた[御守り]、本当は[魅了対策の魔道具]に何時の間にか異変が発生していた。

 取り外し可能なペンダントトップの中に閉じ込めた小さなビー玉程度の大きさしか無い表面が透明な小石。
それぞれ、王都から北側に存在するヒュドール領の霊山の河川から発見できる水の加護が得られる黒い滴形しずくがたの模様を閉じ込めた透明な霊石。
東側に存在するアネモス辺境伯領の強風が吹き荒れる谷から産出される風の加護が得られる空の青を中心に閉じ込めた透明な霊石。
南側に存在するフロガ領の活火山でもある霊山から発掘される炎の加護が得られる炎の赤い揺らめきを中心に閉じ込めた透明な霊石。
王都の近く、離宮の森の中に存在する世界樹の根元に時々落ちている雷の加護が得られる雷模様を中心に閉じ込めた透明な霊石。
それぞれ総ての石の表面が真っ白に成ってしまって、月光浴させても元には戻らず。石の交換が必要になってしまったのだ。
普段ならば…、白っぽくなっても夜に月の光を当てる月光浴するだけで、元の透明感を取り戻してくれていた筈なのに…、である。

 エリニュエスは苦笑いを浮かべ…「マジでスキル攻撃放ってたんや…かなんなぁ~、実家うち家令セヴァスの立てた仮説通りやったやん…」と呟き、セヴァスが実力行使でスラムの有力者を従え、孤児院を作って準備してくれた孤児や貧乏人の子供等と言う手駒が拾って来てくれた霊石へと白くなった霊石を交換して行きながら「それにしても、予備の石…沢山あって助かったわぁ…、今度の休みにでも御菓子こぉ~て、それぞれの地域の院に送ったったろ~…、どないなんが喜ばれるやろかなぁ~?」と、子供等への感謝の気持ちを形にする事を考えつつ(何や、ざまぁ感の実感が思とった程あらへんのよなぁ~、ちょっと期待しとったんに…)とガッカリ感を感じてもいたのであった。
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