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001[日常と闖入者ではなく珍入者]
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正門を抜けると、校舎までの無駄に長い道が続き…、道の片面は、特に運動部も活躍していないのに、やたらと広い運動場があり…それと道を挟んで対面して…庭園・温室・使用時ですら緑色の水を湛える古びたプールが並ぶ……。
その道を抜け、やっとの事で辿り着いた古い本館校舎の隣には、鬱蒼とした雑木林。林の中には茶室と、縁が何処だかわからない大きい池がある。
古い校舎の後ろには、専門科目の高価な機材が設置された新しい校舎。その校舎の道を挟んだ隣には、また庭園…庭園の奥には…、使用用途の分からない、地下に埋め込まれている大きな貯水槽の四角く小さな口……。
そこに対面する濃い匂いの堆肥を管理する場所。そして、その奥は畑…雑木林の後ろを囲む広大な畑…、更に、学校の敷地を貫く様に通る大きな道路の下には…、集中豪雨で水没する事のある地下道があって、そこを越えれば、畑が広大に広がる場所と、果樹園と畑が広がる場所がある。
此処は、とある都道府県の経営する。比較的、偏差値が低い。専門科目のある専門高等学校。
私は、私自身の成績から考えて…「学校の偏差値が低い?何それ?美味しいじゃない!」と言える様な…、遊び呆けて学業を疎かにしても、自己保身が保てる学校…、我欲に対して忠実に学生生活を送っても、簡単に卒業できる学校に通っている……。
私は、制服のラフさ&私服風へのアレンジし易さ、校則があって無い様な、破っても酷くなければ御咎め無しの御気軽な校風。親からの束縛を緩める通学時間と、遠くまで行ける定期券の魅力。それに伴う、アルバイトのし易さ、序に、その周辺に存在するちょっと有名な劇団の劇場を目当てに私利私欲を心に秘め、コノ学校を選び。
髪を注意されない程度に軽く染めて…、ピアスホールを複数開けて…、でも、学校に行っている時間は基本、地味目に…、その他の時間は、TPOに従って自由に…、女性らしく、大人を意識して、制服のブレザーの下にワンピース…、時にドレスシャツ…、スカーフとチェーンベルトにヒールの高いパンプスを合わせてみたり……。
時には、男らしく、ブレザーにチェックのシャツとデザイン性の高いネクタイ。スラックスと革靴を合わせてみたり。相手と、相手に対する自分の都合に合わせて自分の色を変え、擬態して、面白可笑しく学生生活を送っていた。
擬態を変えれば、周囲の人間も対応も切り替わり視点も切り替わる。人目を引かない私の容貌は、他人様に強く印象に残らず。同じ学校の同じ学年の生徒にですら、制服の[プリーツスカート]を制服の[ズボン]に穿き替えていても、誰にも違和感を感じて貰えず。そのまま受け入れて貰えている。
だから女子トークは勿論、ヤロー共の下ネタトークにも参加でき、親友は作れなかったけど、広く浅く居場所は存在していた。
まぁ~寧ろ、面倒事に巻き込まれたくないから…、通常、強制的に慣れ合わなければならない自分の所属しているクラスに2つ程ある派閥に干渉されない程度に…、何時も近付き難い雰囲気を醸し出し…、必要以上に他人様と、深く関わらない事にしているのだけれどって、事は置いておいて…そんな感じで日常を送っている、とある日の事……。
2階の窓辺にある自分の席で本を読みながら一人寛いでいると「あ…ギンちゃんだ!」と、周囲の注目を集める様な大きな声で…、入学した科が違う接点の少ない男友達が、窓の外…渡り廊下の窓から女子モードの私に声を掛けて来る……。
「今日、茶道やってる娘等が抹茶飲ましてくれるって…一緒行く?」
私の動揺を余所に彼はとっても楽しげだった。
私はその相手に対してずっと、男モード対応してきたので少し戸惑い。断れば、相手が教室まで押しかけて来そうな勢いなので、取敢えず…、相手に合わせて、話し掛け辛い様に正していた姿勢を崩し、髪を掻き上げ[此処から君の話を聴く]と、言う意思表示として体をソチラ側に向け…、でも、一応…、[夏服だし、暑くて上着を着ていないし]と、言う問題もあって、嘘を吐くつもりはないが、気付かれない様に胸を隠す為の裏工作をする事にした。
私は窓枠に腕を乗せ胸の近くで手を重ねて、その手の甲の上に顎を乗せた。普段、教室では普段見せない[だらけて崩した面倒臭そうな態度]ではあるが「それ、今からぁ~?」と、返してみる。
「いや、今日の放課後!」と、彼に即答され、私は嬉しそうに「じゃ、行く!食堂で待ち合わせな!」と、御迎えに来られては面倒と、待ち合わせを勝手に決め、演技で眠そうな態度を取り、相手に欠伸をして見せて「んじゃ、放課後ぉ~」と、有無を言わさない様に笑顔で手を振った。
私が違う学科の人間と話しているのをクラスメイトが見て、私がクラスで寡黙な演技を通している為に、私が[社交的ではない人間だ]と、そう信じていた数人が、私に対して不思議そうな顔を向けている。(美味しくない雰囲気だけど、これくらいなら、面倒事には成らないだろう)
私はそんな痛い視線を背中に受けながら、男友達を見送り、何事も無かったかの様に眼鏡を掛け直し、姿勢を正して前髪を少し手直しし、黒板に向かって正面を向き、鞄から出したスケジュール帳に目を通して、今日、特に用事が無かった事を確認した。
その時、ちょっと私的に嫌な事に…、教室に、私に対する微妙な空気が流れていた……。背後から、数人の娘等が私に話し掛ける算段を立てている会話が聞こえて来る。(面倒だなぁ~)と、私は心の中で思った。(用事があるなら…訊きたい事があるのなら…、ウダウダ話し合ってないで、さっさと話し掛けて来れば良いのに…)私は悪態を吐きたいのを我慢して、こっそり深呼吸をする。
暫くすると一瞬、教室が静まり返り、私が密かに[好きになれない]と、思っている派閥の娘等の中でも、比較的、用事のある時に私から話し掛ける事のある娘が代表して「ねぇ~唐杉さん、ギンちゃんってどっから出てきた名前?」とオロオロしながら私に話し掛けて来た。
私は内心、溜息を吐く、実質、私の名前[唐杉 真]と言う名前の中に[ギンちゃん]と呼ばれる要素は、多少無理して作らなきゃ無い。だが、しかし…何かしら答えなければ…、彼女等が引いてはくれないであろう……。私は当たり障りの無さそうな言葉を探した。
それで出た答えは「知らない…、どうも、私の呼び名らしいんだけど…、気が付いたらそう呼ばれてて、返事しなかったら怒って詰め寄って来るから…、あの人限定で、返事する事にしているだけだよw」
事実、裏も表も無く…これが真実だったりするので、それだけを答えておいた……。
そしてコレ以上、彼女等に突っ込んで訊いて来られても困るので、私は「ところでさ…次の授業って、何だっけ?」と質問して、会話の方向を螺旋曲げ、私から情報を提供しない事にした。
体感時間が遅かれ早かれ、放課後は確実にやって来る。
前の休み時間に、バイト用に購入した胸を隠し平らに見せるコルセットを身に着け…、スッピンメイクに手を加えて、前髪と眼鏡の下に違う印象の、これまたスッピン風メイクを施し…、透明なピアスから、シルバーのピアスに付け替えていた私は…、ホームルームが終わり次第、教室で悪口を言われない為に牽制し合い、中々教室を出られない娘等を無視して、教室と同じく、2階に有る「女子専用のロッカールーム」へ行き…、その人気の無いロッカールームで、プリーツスカートから制服のズボンに穿き替える……。
眼鏡を外し、前髪に分け目を作りピアスが目立つ様に髪を纏めて靴を履き替え、バイトに行く時用の自分で、颯爽と1階に有る食堂へと向かう。
向かった先の食堂は、エアコンが効いていてとても涼しい為、ホームルームに参加しなかった生徒を含めた複数の男子生徒達が、既に何組も屯していた。
余談となるが…、とっても悲しい事に…、そこに居る、ちょっと派手目な男子生徒に紛れてしまえば…、女子力の低い私は、違和感無く意外と簡単にその場に溶け込み馴染んでしまうのだ……。
誰にでも気さくに突っ込みを入れるタイプの食堂のおばちゃんですら、顔見知りであるにも拘らず、私の「性別に関しての事のみ」何にも云わない。
真相は分からないけど私は、その事でおばちゃんに精神的に動揺を与えているかもしれないので、極力、おばちゃん達から離れた場所を陣取り、心地よい冷風を浴びながら、入道雲が浮かぶ綺麗な青い夏空を眺め、茶室に誘ってくれた友人が来るのを待つ事にした。
その道を抜け、やっとの事で辿り着いた古い本館校舎の隣には、鬱蒼とした雑木林。林の中には茶室と、縁が何処だかわからない大きい池がある。
古い校舎の後ろには、専門科目の高価な機材が設置された新しい校舎。その校舎の道を挟んだ隣には、また庭園…庭園の奥には…、使用用途の分からない、地下に埋め込まれている大きな貯水槽の四角く小さな口……。
そこに対面する濃い匂いの堆肥を管理する場所。そして、その奥は畑…雑木林の後ろを囲む広大な畑…、更に、学校の敷地を貫く様に通る大きな道路の下には…、集中豪雨で水没する事のある地下道があって、そこを越えれば、畑が広大に広がる場所と、果樹園と畑が広がる場所がある。
此処は、とある都道府県の経営する。比較的、偏差値が低い。専門科目のある専門高等学校。
私は、私自身の成績から考えて…「学校の偏差値が低い?何それ?美味しいじゃない!」と言える様な…、遊び呆けて学業を疎かにしても、自己保身が保てる学校…、我欲に対して忠実に学生生活を送っても、簡単に卒業できる学校に通っている……。
私は、制服のラフさ&私服風へのアレンジし易さ、校則があって無い様な、破っても酷くなければ御咎め無しの御気軽な校風。親からの束縛を緩める通学時間と、遠くまで行ける定期券の魅力。それに伴う、アルバイトのし易さ、序に、その周辺に存在するちょっと有名な劇団の劇場を目当てに私利私欲を心に秘め、コノ学校を選び。
髪を注意されない程度に軽く染めて…、ピアスホールを複数開けて…、でも、学校に行っている時間は基本、地味目に…、その他の時間は、TPOに従って自由に…、女性らしく、大人を意識して、制服のブレザーの下にワンピース…、時にドレスシャツ…、スカーフとチェーンベルトにヒールの高いパンプスを合わせてみたり……。
時には、男らしく、ブレザーにチェックのシャツとデザイン性の高いネクタイ。スラックスと革靴を合わせてみたり。相手と、相手に対する自分の都合に合わせて自分の色を変え、擬態して、面白可笑しく学生生活を送っていた。
擬態を変えれば、周囲の人間も対応も切り替わり視点も切り替わる。人目を引かない私の容貌は、他人様に強く印象に残らず。同じ学校の同じ学年の生徒にですら、制服の[プリーツスカート]を制服の[ズボン]に穿き替えていても、誰にも違和感を感じて貰えず。そのまま受け入れて貰えている。
だから女子トークは勿論、ヤロー共の下ネタトークにも参加でき、親友は作れなかったけど、広く浅く居場所は存在していた。
まぁ~寧ろ、面倒事に巻き込まれたくないから…、通常、強制的に慣れ合わなければならない自分の所属しているクラスに2つ程ある派閥に干渉されない程度に…、何時も近付き難い雰囲気を醸し出し…、必要以上に他人様と、深く関わらない事にしているのだけれどって、事は置いておいて…そんな感じで日常を送っている、とある日の事……。
2階の窓辺にある自分の席で本を読みながら一人寛いでいると「あ…ギンちゃんだ!」と、周囲の注目を集める様な大きな声で…、入学した科が違う接点の少ない男友達が、窓の外…渡り廊下の窓から女子モードの私に声を掛けて来る……。
「今日、茶道やってる娘等が抹茶飲ましてくれるって…一緒行く?」
私の動揺を余所に彼はとっても楽しげだった。
私はその相手に対してずっと、男モード対応してきたので少し戸惑い。断れば、相手が教室まで押しかけて来そうな勢いなので、取敢えず…、相手に合わせて、話し掛け辛い様に正していた姿勢を崩し、髪を掻き上げ[此処から君の話を聴く]と、言う意思表示として体をソチラ側に向け…、でも、一応…、[夏服だし、暑くて上着を着ていないし]と、言う問題もあって、嘘を吐くつもりはないが、気付かれない様に胸を隠す為の裏工作をする事にした。
私は窓枠に腕を乗せ胸の近くで手を重ねて、その手の甲の上に顎を乗せた。普段、教室では普段見せない[だらけて崩した面倒臭そうな態度]ではあるが「それ、今からぁ~?」と、返してみる。
「いや、今日の放課後!」と、彼に即答され、私は嬉しそうに「じゃ、行く!食堂で待ち合わせな!」と、御迎えに来られては面倒と、待ち合わせを勝手に決め、演技で眠そうな態度を取り、相手に欠伸をして見せて「んじゃ、放課後ぉ~」と、有無を言わさない様に笑顔で手を振った。
私が違う学科の人間と話しているのをクラスメイトが見て、私がクラスで寡黙な演技を通している為に、私が[社交的ではない人間だ]と、そう信じていた数人が、私に対して不思議そうな顔を向けている。(美味しくない雰囲気だけど、これくらいなら、面倒事には成らないだろう)
私はそんな痛い視線を背中に受けながら、男友達を見送り、何事も無かったかの様に眼鏡を掛け直し、姿勢を正して前髪を少し手直しし、黒板に向かって正面を向き、鞄から出したスケジュール帳に目を通して、今日、特に用事が無かった事を確認した。
その時、ちょっと私的に嫌な事に…、教室に、私に対する微妙な空気が流れていた……。背後から、数人の娘等が私に話し掛ける算段を立てている会話が聞こえて来る。(面倒だなぁ~)と、私は心の中で思った。(用事があるなら…訊きたい事があるのなら…、ウダウダ話し合ってないで、さっさと話し掛けて来れば良いのに…)私は悪態を吐きたいのを我慢して、こっそり深呼吸をする。
暫くすると一瞬、教室が静まり返り、私が密かに[好きになれない]と、思っている派閥の娘等の中でも、比較的、用事のある時に私から話し掛ける事のある娘が代表して「ねぇ~唐杉さん、ギンちゃんってどっから出てきた名前?」とオロオロしながら私に話し掛けて来た。
私は内心、溜息を吐く、実質、私の名前[唐杉 真]と言う名前の中に[ギンちゃん]と呼ばれる要素は、多少無理して作らなきゃ無い。だが、しかし…何かしら答えなければ…、彼女等が引いてはくれないであろう……。私は当たり障りの無さそうな言葉を探した。
それで出た答えは「知らない…、どうも、私の呼び名らしいんだけど…、気が付いたらそう呼ばれてて、返事しなかったら怒って詰め寄って来るから…、あの人限定で、返事する事にしているだけだよw」
事実、裏も表も無く…これが真実だったりするので、それだけを答えておいた……。
そしてコレ以上、彼女等に突っ込んで訊いて来られても困るので、私は「ところでさ…次の授業って、何だっけ?」と質問して、会話の方向を螺旋曲げ、私から情報を提供しない事にした。
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眼鏡を外し、前髪に分け目を作りピアスが目立つ様に髪を纏めて靴を履き替え、バイトに行く時用の自分で、颯爽と1階に有る食堂へと向かう。
向かった先の食堂は、エアコンが効いていてとても涼しい為、ホームルームに参加しなかった生徒を含めた複数の男子生徒達が、既に何組も屯していた。
余談となるが…、とっても悲しい事に…、そこに居る、ちょっと派手目な男子生徒に紛れてしまえば…、女子力の低い私は、違和感無く意外と簡単にその場に溶け込み馴染んでしまうのだ……。
誰にでも気さくに突っ込みを入れるタイプの食堂のおばちゃんですら、顔見知りであるにも拘らず、私の「性別に関しての事のみ」何にも云わない。
真相は分からないけど私は、その事でおばちゃんに精神的に動揺を与えているかもしれないので、極力、おばちゃん達から離れた場所を陣取り、心地よい冷風を浴びながら、入道雲が浮かぶ綺麗な青い夏空を眺め、茶室に誘ってくれた友人が来るのを待つ事にした。
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