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004 砂の城
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誰よりも早く手に入れた。僕と楓の夏と言うには、まだ早い夏休み。
僕は、声なき悲鳴を上げて汗だくになって飛び起きる楓の世話をし続け、家出から数日後、父方の祖父母に連れられ、海開き前の海に行った。楓の母親としての仕事を放棄した女が、児童相談所の問い合わせに寄って僕と楓の居場所を知り、翌日には追い掛けて来て「誑かした」と楓の頬を叩き、祖父母に対して誘拐だと騒ぎ、追い返されても付き纏い、何処までも追い掛けて来るから、逃げる為に旅行へ出掛けたのだ。
そして、辿り着いた釣り人程度しか泊まり客が居ないシーズンオフの海沿い民宿は、暇だったので持病持ちに僕と楓にも優しかった。この次期、糖尿病や高血圧の釣り人も来るらしく、健康志向な食事は苦も無く出して貰える。この宿で、魚とかでも種類や部位、調理法に寄って、持病があっても、僕や楓が食べられると言う事を知る事が出来た。僕にとって、これは大発見だった。
急な旅行の為、現地で買った新しい服を着て、海に遊びに出掛けた時…、蝉の声だけが、その場を支配する民宿から海岸までの人気の無い道も…2人で手を繋ぎ歩けば、平気だと言う事を僕と楓は改めて知った……。つば広の麦わら帽子とインド綿の真っ白いワンピース姿の楓は「お兄ちゃんと手をつなぐの大好きw」と笑い「助け出してくれて、ありがとう」と僕に言う。僕に勇気が無くて、その助けが遅くなってしまった事を申し訳なく思いながら、僕は楓に「どういたしまして」と答えていた。
初日、砂浜に着くなり僕と楓は2人で貝殻を拾う競争をする。僕は何度か波に襲われながらも、必死に桜貝を探し、幾つか発見して隠し持ち、波打ち際から少し離れた湿った砂地で砂の城を作って遊んだ時に跪き、楓をお姫様に見立てて桜貝を楓にプレゼントした。
浜釣りをしていた人が、それを見て「結婚式をしてるみたいだw」と言って「良いモノを見せてくれたから♪」と釣りの餌にも成る駄菓子をくれた。僕達には持病が有り、それを食べる事は出来ないけど「今日の記念に大事に取っておきますw」と言って受け取ったら「賞味期限までに食べてくれよw」と笑っていた。
その時には楓も、ちゃんと人間らしい表情を見せ、その日だけで、持病が発覚する前の楓を取り戻しつつあった。
平日の学校がある時間帯。補導されては困るので、僕と楓は民宿の中で過ごす。訳ありだと理解してくれている民宿の人は、昔ながらのボードゲームやテーブルゲームを貸し出してくれ、暇な時は一緒に遊んでくれた。楓は次第に昔の落ち着きを取り戻して行き、夜中飛び起きる事も無くなって行った。
土日は、釣り客の中に僕と楓の年齢に近い子供達が居た。
この日も、一晩で完全に崩れ去ってしまう砂の城が…、どうやったら日持ちするか?を楓と一緒に考え、試行錯誤していたら…、僕等の会話を耳にして「長持ちするサンドアートの作り方を教えてやろうか?」と、バケツを持った地元の子等が集まり…、皆で砂の城を作り…、雨が降るまで崩れない砂の城を作り上げた……。
その後、一緒に駆け回る事は出来なかったけど、地元の子達に秘密基地に連れて行って貰えた。楓は自分で拾った貝殻と綺麗な色のシーグラスを交換して貰い。その内の一つを「ピンクの貝のお礼だよw」と僕にくれた。
その海辺の町が地元の子等とは、僕と楓が泊まる民宿でも一緒に遊び、僕と楓は本気で笑う。何年振りに本気で笑っただろうか?昔ながらのボードゲームやテーブルゲームは、僕等の年代には物珍しく、凄く楽しい玩具だった。
祖父母の許可と民宿の女将さんの許しもあってした「来週は、朝から一緒に遊ぼう!」「集合場所はココでw」と約束言う約束が…、僕の所為で守れなくて、あの子等に謝る事も出来なくて…、とても悔やまれる……。
数日に1度の治療を受けずに、自分の体の事よりも、楓との時間を優先した逃避行は、2週間は持たず。僕の「大丈夫」は嘘へと変質して行く。僕がこれ以上、泣かせたり悲しい思いをさせたく無かった楓は、僕の所為で泣き、僕が入院した所為で僕と楓の居場所が特定され、楓は産みの母に殺され掛ける事に成った。
僕と楓を産んだ女が「1つで意味を成さないなら、死んで両方を[椋]に渡しなさい!」と刃物を振り回して楓を襲ったのだ。この時、ベットの上から直ぐに起き上がる事も出来ない自分を呪う。でも、良い方の想定外な事に、僕と楓の父親が楓を身を呈して護ってくれたのだ。父さんが女に背中を切られ…、女が病院の警備員に取り押さえられて…、一時的に、事は収集された……。
この時、僕と楓の父親として、父さんは僕と楓の元に戻ってきてくれた。と、僕は確信した。
女の方は繰り返し僕の名を呼び、悪意のある言葉と共に楓の名を叫び、楓を庇った夫を罵倒する。楓も漸く、母親の事を諦め、僕と楓の両親が揃い、元に戻る事が無い事を理解してくれた。
それにきっと、この殺傷事件も…、あの女を育てた[その親]が金で解決して…、楓への虐待の時の事と同様、無かった事にされるのだろう……。この女を含め、無理に家族を形作れば楓が犠牲に成るに違いない。
僕は覚悟を決め、這いずり、必死で父親の元へ向かい「父さん、一生に一度の、僕からの最後の御願いだ!あの女と離婚して、楓を連れて逃げてよ…、僕があの女を引き受けるから、楓が幸せに成れる様にしてあげて……。」と泣きながら縋り付いたのだ。
僕は、声なき悲鳴を上げて汗だくになって飛び起きる楓の世話をし続け、家出から数日後、父方の祖父母に連れられ、海開き前の海に行った。楓の母親としての仕事を放棄した女が、児童相談所の問い合わせに寄って僕と楓の居場所を知り、翌日には追い掛けて来て「誑かした」と楓の頬を叩き、祖父母に対して誘拐だと騒ぎ、追い返されても付き纏い、何処までも追い掛けて来るから、逃げる為に旅行へ出掛けたのだ。
そして、辿り着いた釣り人程度しか泊まり客が居ないシーズンオフの海沿い民宿は、暇だったので持病持ちに僕と楓にも優しかった。この次期、糖尿病や高血圧の釣り人も来るらしく、健康志向な食事は苦も無く出して貰える。この宿で、魚とかでも種類や部位、調理法に寄って、持病があっても、僕や楓が食べられると言う事を知る事が出来た。僕にとって、これは大発見だった。
急な旅行の為、現地で買った新しい服を着て、海に遊びに出掛けた時…、蝉の声だけが、その場を支配する民宿から海岸までの人気の無い道も…2人で手を繋ぎ歩けば、平気だと言う事を僕と楓は改めて知った……。つば広の麦わら帽子とインド綿の真っ白いワンピース姿の楓は「お兄ちゃんと手をつなぐの大好きw」と笑い「助け出してくれて、ありがとう」と僕に言う。僕に勇気が無くて、その助けが遅くなってしまった事を申し訳なく思いながら、僕は楓に「どういたしまして」と答えていた。
初日、砂浜に着くなり僕と楓は2人で貝殻を拾う競争をする。僕は何度か波に襲われながらも、必死に桜貝を探し、幾つか発見して隠し持ち、波打ち際から少し離れた湿った砂地で砂の城を作って遊んだ時に跪き、楓をお姫様に見立てて桜貝を楓にプレゼントした。
浜釣りをしていた人が、それを見て「結婚式をしてるみたいだw」と言って「良いモノを見せてくれたから♪」と釣りの餌にも成る駄菓子をくれた。僕達には持病が有り、それを食べる事は出来ないけど「今日の記念に大事に取っておきますw」と言って受け取ったら「賞味期限までに食べてくれよw」と笑っていた。
その時には楓も、ちゃんと人間らしい表情を見せ、その日だけで、持病が発覚する前の楓を取り戻しつつあった。
平日の学校がある時間帯。補導されては困るので、僕と楓は民宿の中で過ごす。訳ありだと理解してくれている民宿の人は、昔ながらのボードゲームやテーブルゲームを貸し出してくれ、暇な時は一緒に遊んでくれた。楓は次第に昔の落ち着きを取り戻して行き、夜中飛び起きる事も無くなって行った。
土日は、釣り客の中に僕と楓の年齢に近い子供達が居た。
この日も、一晩で完全に崩れ去ってしまう砂の城が…、どうやったら日持ちするか?を楓と一緒に考え、試行錯誤していたら…、僕等の会話を耳にして「長持ちするサンドアートの作り方を教えてやろうか?」と、バケツを持った地元の子等が集まり…、皆で砂の城を作り…、雨が降るまで崩れない砂の城を作り上げた……。
その後、一緒に駆け回る事は出来なかったけど、地元の子達に秘密基地に連れて行って貰えた。楓は自分で拾った貝殻と綺麗な色のシーグラスを交換して貰い。その内の一つを「ピンクの貝のお礼だよw」と僕にくれた。
その海辺の町が地元の子等とは、僕と楓が泊まる民宿でも一緒に遊び、僕と楓は本気で笑う。何年振りに本気で笑っただろうか?昔ながらのボードゲームやテーブルゲームは、僕等の年代には物珍しく、凄く楽しい玩具だった。
祖父母の許可と民宿の女将さんの許しもあってした「来週は、朝から一緒に遊ぼう!」「集合場所はココでw」と約束言う約束が…、僕の所為で守れなくて、あの子等に謝る事も出来なくて…、とても悔やまれる……。
数日に1度の治療を受けずに、自分の体の事よりも、楓との時間を優先した逃避行は、2週間は持たず。僕の「大丈夫」は嘘へと変質して行く。僕がこれ以上、泣かせたり悲しい思いをさせたく無かった楓は、僕の所為で泣き、僕が入院した所為で僕と楓の居場所が特定され、楓は産みの母に殺され掛ける事に成った。
僕と楓を産んだ女が「1つで意味を成さないなら、死んで両方を[椋]に渡しなさい!」と刃物を振り回して楓を襲ったのだ。この時、ベットの上から直ぐに起き上がる事も出来ない自分を呪う。でも、良い方の想定外な事に、僕と楓の父親が楓を身を呈して護ってくれたのだ。父さんが女に背中を切られ…、女が病院の警備員に取り押さえられて…、一時的に、事は収集された……。
この時、僕と楓の父親として、父さんは僕と楓の元に戻ってきてくれた。と、僕は確信した。
女の方は繰り返し僕の名を呼び、悪意のある言葉と共に楓の名を叫び、楓を庇った夫を罵倒する。楓も漸く、母親の事を諦め、僕と楓の両親が揃い、元に戻る事が無い事を理解してくれた。
それにきっと、この殺傷事件も…、あの女を育てた[その親]が金で解決して…、楓への虐待の時の事と同様、無かった事にされるのだろう……。この女を含め、無理に家族を形作れば楓が犠牲に成るに違いない。
僕は覚悟を決め、這いずり、必死で父親の元へ向かい「父さん、一生に一度の、僕からの最後の御願いだ!あの女と離婚して、楓を連れて逃げてよ…、僕があの女を引き受けるから、楓が幸せに成れる様にしてあげて……。」と泣きながら縋り付いたのだ。
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