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第4話 三日月の夜
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「はぁ……」
深夜――三日月の出る頃。
コフェルは何度目かのため息をついた。
王宮の廊下を、自室に向かって歩いている。
王宮に自室があるのは、身分の高い者だけだ。
だが魔法使いは別。大魔女アクシャンに礼を尽くすため、王家は部屋を用意している。
「あれ……?」
コフェルは足を止めた。
自室の前に、誰かが立っている。カヴォードだ。
「カヴォード様……」
「コフェル」
カヴォードは嬉しそうに、コフェルに近づく。
二人を、月が照らしている。淡い金色の光だ。
「カヴォード様、どうされたのですか?」
「君に礼がしたくて」
「どうぞ、中へ。ここでは人目につきましょう」
コフェルはカヴォードを招き入れた。
「先の戦では、本当に助かった。ありがとう、コフェル」
「いいえ、大したことは……魔法はお師匠様のものですし」
「だが、使うのには勇気がいる。間違いなく、コフェルの勇気のおかげだ」
カヴォードが褒めると、コフェルは照れくさそうに視線を落とす。
コフェルの手を、カヴォードは取った。
「コフェル」
「はい」
「好きだ、コフェル」
突然の告白に、コフェルは面食らったように目を丸くする。
「な、なにをおっしゃるんですか」
「君は新大陸に行くと聞いた。だから……俺の想いは知ってほしい」
カヴォードはコフェルを抱きしめる。
「好きだ、コフェル。大好きだ。俺は君を……」
「……っ」
コフェルの体から力が抜ける。
おずおずと、カヴォードを抱き返す。
「カヴォード様……」
意を決したように、コフェルの声が囁く。
「私に、夢を見せてくださいますか……?」
「……ああ」
カヴォードはコフェルをベッドへと抱き上げた。
深夜――三日月の出る頃。
コフェルは何度目かのため息をついた。
王宮の廊下を、自室に向かって歩いている。
王宮に自室があるのは、身分の高い者だけだ。
だが魔法使いは別。大魔女アクシャンに礼を尽くすため、王家は部屋を用意している。
「あれ……?」
コフェルは足を止めた。
自室の前に、誰かが立っている。カヴォードだ。
「カヴォード様……」
「コフェル」
カヴォードは嬉しそうに、コフェルに近づく。
二人を、月が照らしている。淡い金色の光だ。
「カヴォード様、どうされたのですか?」
「君に礼がしたくて」
「どうぞ、中へ。ここでは人目につきましょう」
コフェルはカヴォードを招き入れた。
「先の戦では、本当に助かった。ありがとう、コフェル」
「いいえ、大したことは……魔法はお師匠様のものですし」
「だが、使うのには勇気がいる。間違いなく、コフェルの勇気のおかげだ」
カヴォードが褒めると、コフェルは照れくさそうに視線を落とす。
コフェルの手を、カヴォードは取った。
「コフェル」
「はい」
「好きだ、コフェル」
突然の告白に、コフェルは面食らったように目を丸くする。
「な、なにをおっしゃるんですか」
「君は新大陸に行くと聞いた。だから……俺の想いは知ってほしい」
カヴォードはコフェルを抱きしめる。
「好きだ、コフェル。大好きだ。俺は君を……」
「……っ」
コフェルの体から力が抜ける。
おずおずと、カヴォードを抱き返す。
「カヴォード様……」
意を決したように、コフェルの声が囁く。
「私に、夢を見せてくださいますか……?」
「……ああ」
カヴォードはコフェルをベッドへと抱き上げた。
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