恋する夜の三日月は ~騎士団長と魔法使いの場合~

茶虎兵

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第1話 騎士団長の帰還

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「カヴォード殿!」
「カヴォード殿がお帰りになったぞ!!」

 レヴルーア王国、対魔族陣営。
 魔族の侵攻を受けた王国の軍陣に、ひとりの騎士が帰還した。

 名をカヴォード。王家に仕える騎士団長である。
 短い金髪に美しい青い目は、疲労でやや濁っている。

「ああ、ああ! カヴォード殿、よくぞご無事で!」
殿軍しんがりが壊滅して、魔族に囚われたと聞いたときは……!」

 周囲の騎士たちが涙を流して喜ぶ。
 それもそのはず。カヴォードは魔族の陣営に捕まっていたのだ。

「皆、すまん。心配をかけた」

 カヴォードが詫びる。

「魔族の陣を突破できたのは、俺の力じゃない」

 カヴォードのそばに、小柄な青年が立っている。
 黒い長衣ローブに、三角帽。黒髪に紫色の瞳。
 典型的な魔法使いの姿だ。

「コフェルが、助けてくれた」

 騎士たちに、魔法使い――コフェルが会釈した。

「コフェル! 大魔女アクシャンの弟子か!」
「よくやった! よくやった、コフェル!」
「団長がお戻りになれば、魔族など恐るるに足らず!」

 騎士たちが沸き立つ。
 カヴォードは息を吐いて疲れを振り払う。

「コフェルが魔族の陣を動揺させた。反撃に転じる! 皆、準備をせよ!」
「はッ!!」

 その夜、レヴルーア王国は魔族に勝利した。
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