淫紋屋のドーベルマン ~神の淫紋を着けられたので、俺は淫紋屋の主人と暮らすことになった~

茶虎兵

文字の大きさ
上 下
11 / 12
第2章 淫紋屋「紅薔薇結社」

第10話 昂ぶる肉体(★)

しおりを挟む

「やれやれ、やっと帰ってこれたな」

 ソッドのマンションに戻り、啓二はため息をついた。

 マルアクによる襲撃後――駆けつけた警察によってあたりは封鎖され、啓二とソッドは事情聴取を受けた。
 啓二の発砲は正当防衛として処理されるだろう。そう元同僚たちが告げた。彼らが勤勉に働くのを、啓二は複雑な思いで見ていた。

 二人がマンションいえに帰ってきたのは、四時間後のことだった。
 ソッドは当然のように、控えていたメイドに指示をし、食事を作らせた。
 二人は食事をともにする。

「ただ見に行っただけでマルアクに感づかれるとは。マルアクむこうも質のよい感知魔法を使っているようです」
「魔法のせいなのか?」
「もちろん情報漏れの可能性もありますけどね」

 ソッドが苦笑しつつ、啓二を見る。
 ソッドはガーネットのような紅い瞳をしている。濃く、深い紅色だ。

「漏らすとしたら啓二、あなたですが……違うでしょう?」
「ま、そうだな」

 啓二も苦笑して、夕食のチキンソテーを頬張る。濃い旨味が口中に広がる。
 ソッドは白ワインを口に含み、飲む。

「明日はオフです。ご自由に過ごしてください」
「いいのか? 警護役は?」
「出かけるときには、別の者を手配します」
「そうか」

 ソッドが手を挙げると、食事を作ってくれたメイドが寄ってくる。
 メイドは若く見える。褐色の肌と、淡い色の髪。そして尖った長い耳が特徴的だ。

「紹介します、こちらはマーガレット。この家のことを世話してくれています」
「よろしく、マーガレットさん」

 啓二が会釈すると、マーガレットはスカートをつまんで礼をする。

「マーガレットと申します。なんなりとお申し付けくださいませ」
「もしかして、彼女は……」
「はい、わたくしはエルフ族でございます」

 エルフ――堕落境域に住む異種族のひとつだ。容姿が美しく、魔法に長け、耳が尖っている。
 エルフメイド・マーガレットは、啓二をじっと見つめる。

「鳴神様は、若様の大切な方と認識しております」
「え?」

 マーガレットの言葉に、若様ソッドが困ったように笑う。

「たしかに、啓二は大切にすべき対象ではありますね」
「そ、それは……研究対象として、だろう?」

 啓二は戸惑う。

「ええ、研究対象としても大切にすべきですが。できればもっと親密でもかまいませんよ?」
「どういう意味だよ?」
「同じ境域に生きる者として、対等な友人になれたらと思います」

 ソッドがにっこりと笑う。
 啓二は腑に落ちない顔だ。

「……なんか調子狂うな。俺はアンタの警護役で、研究対象だろ」
「それだけじゃ、つまらないじゃないですか」
「そういうもんか……?」

 二人のやりとりを、マーガレットがほほ笑ましそうに見守っていた。

「では、若様。わたくしは片付けが済みましたら……」
「ああ、今夜は上がってください。明日もよろしく」

 どうやら、マーガレットはどこかに帰宅するらしい。
 夜は二人きりになるのか、と啓二はぼんやり思った。

 堕落境域の夜景は、今夜も美しかった。

 ***

「ふぅ……」

 夕食を終えて、啓二は自室へと入った。
 自室には、ベッドのほかに、デスクやキャビネットがある。まだ開けていないダンボールもある。

「トレーニングルームにでも行くかな……」

 眠るにはまだ早い。
 スーツを脱ぎ、ラフな格好に着替える。啓二は部屋を出ようとした。

 ――ドクン。
 心臓が、強く打った気がする。

「……あ?」

 ――ドクン、ドクン。
 気のせいではない。心臓が強く打ち始める。
 同時に、下腹部にゾクンと衝撃が奔る。淫紋のあたりが熱を持ち、妙にざわつく感覚がある。

「……ッ!?」

 啓二は咄嗟に、ベッド横のキャビネットに向かう。
 引き出しの中に、淫紋を鎮める抑制剤の頓服がある。錠剤を取り出し、口に含む。

「……ングッ!?」

 薬を飲み下すより先に、下腹部に快感が奔る。
 思わず錠剤を噛んでしまう。苦い味が、口の中に広がった。
 デスク上のペットボトルを開け、中の水で薬を飲み下す。

「ハァ、ハァ……あぐっ!」

 薬を飲んでも、一向に効き目がない。
 啓二は下腹部を押さえて、床にうずくまった。押さえた部分から、快感が全身に広がり始める。

「や、やばい……発作だ……!」

 淫紋の強い発作。淫猥な快楽を呼び起こす発作だ。
 啓二は必死で、デスクの上に置いたスマートフォンを取った。ソッドに電話を掛ける。

「ソッド、来てくれ、発作だ。薬、効かない……うぐぅっ!」
『わかりました、すぐ行きます』

 ほどなくして、啓二の部屋にソッドが入ってくる。

「大丈夫ですよ、啓二。頓服は?」
「の、飲んだ……!」
「わかりました、ベッドに移動しましょう」

 ソッドに支えられ、啓二はなんとかベッドに倒れ込む。
 だが快感を訴える肉体は鎮まらない。ハーフパンツを、陰茎が押し上げているのがわかる。

「あ、あ……熱い、くるしぃ……!」
「……薬の効きが悪いですね」

 ソッドが眉を寄せる。
 彼の腕を、啓二はつかんだ。

「た、たすけて……」
「啓二、気を確かに。大丈夫ですから」
「くるしい……おねがい、たすけて……!」

 潤んだ瞳で、啓二は必死に助けを求める。
 その様子を見ていたソッドは、決心したように顔を近づける。

「……淫紋を鎮める効果的な方法がありますが」
「な、なんでもいい……! はやく……!」

 ソッドの言葉に、啓二はすがった。ソッドをつかむ手の力が強まる。

「わかりました」

 ソッドはそう言うと――啓二の唇に、おのれの唇を重ねる。
 啓二が目を見開くのもかまわず、ソッドは唇を吸う。

「ん……」
「ん、ぅ……!?」

 啓二はいままでにない感覚を得ていた。
 体内で渦巻き、行き場のなかった快感が、口から抜けていくような気がする。
 気持ちがいい。通り道を得た快感が抜けていくのは、爽やかでさえある。

「啓二……ん……」
「ちゅ、ん……ソッド……あむ、ちゅ……」

 啓二は夢中で、ソッドの口づけに応えた。無意識のうちに、ソッドの唇を吸い、貪ってしまう。

「次は、舌ですよ……」

 ソッドの舌が、啓二の口内に入り込んでくる。
 ぬるりと、舌が絡め取られる。全身の快感が、舌先に集中する。

「んむ……ちゅ……れろ……は……ん……」

 啓二はひたすら、ソッドの与えてくる行為に応えた。
 ソッドの手が、動く。啓二の首筋を撫で、胸元をまさぐり、腹筋をさする。啓二のハーフパンツの上から、勃起した股間にそっとふれる。

「んぅ……っ! ぷは……っ」

 啓二は思わず、口を離す。
 ソッドの舌先と啓二の舌先が、銀色の橋でつながれる。唾液の橋は、一瞬で崩れ落ちる。

「そ、そこ……!」
「大丈夫ですよ、啓二」

 ソッドが優しく囁く。

「最も効果的な、鎮静方法ですからね」

 言うやいなや、ソッドは啓二のハーフパンツに手をかけた。下着ごとずり下ろす。
 啓二の陰茎は、しっかりと勃起していた。天井を仰ぐように、震える。先端には先走りの汁が光り、いやらしく湿っている。

「大丈夫……」

 ソッドが何度目かの「大丈夫」を告げる。
 落ち着いた深い声が、啓二の耳をじわりと侵す。

「優しく、しますから」
「あ……っ!」

 ソッドのなめらかな右手が、啓二の陰茎をそっと包み込む。
 温かくさらりとした感覚が、啓二の敏感な部分に与えられる。啓二の腰が、ビクッと震える。

「こんなに苦しそうに……」

 ソッドの右手が、絶妙な力加減で啓二の陰茎を刺激する。
 裏筋をこすり上げ、亀頭を揉み、鈴口を押す。

「こちらも……」

 ソッドの左手が、啓二のTシャツをまくりあげる。啓二の胸元は、先端がぷっくりと尖っていた。

「はむ……」
「あ、あぁ……そこぉ……!」

 啓二は喘いだ。
 ソッドが、啓二の乳首を口に含む。舌先で、敏感な先端をコロコロと転がす。

「ちゅ、ちゅく……」
「き、気持ちいい……!」

 啓二の口から、抗えない快楽の声が漏れる。気持ちいい、と認めてしまう。

「お、俺……もう……っ!」

 啓二の体が、ビクン! と大きく波打った。
 陰茎の先端から、白濁とした液が飛ぶ。痙攣する腹筋にかかる。下腹部の黒い淫紋を、ドロリとした精液が濡らす。

「もう少し……」
「あっ、あうっ、ダメだ……!」

 ソッドの右手が、休まず啓二の陰茎を刺激し続ける。
 裏筋を絞るようにこすられ、啓二は何度も吐精した。

「イく……! また、イく……ッ!」
「いいですよ、何度イっても」
「はぁ……はぁ……! あっ、くぅ……!」

 ソッドが与えてくれる快楽に、啓二は身を委ねた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...