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第2章 淫紋屋「紅薔薇結社」
第10話 昂ぶる肉体(★)
しおりを挟む「やれやれ、やっと帰ってこれたな」
ソッドのマンションに戻り、啓二はため息をついた。
マルアクによる襲撃後――駆けつけた警察によってあたりは封鎖され、啓二とソッドは事情聴取を受けた。
啓二の発砲は正当防衛として処理されるだろう。そう元同僚たちが告げた。彼らが勤勉に働くのを、啓二は複雑な思いで見ていた。
二人がマンションに帰ってきたのは、四時間後のことだった。
ソッドは当然のように、控えていたメイドに指示をし、食事を作らせた。
二人は食事をともにする。
「ただ見に行っただけでマルアクに感づかれるとは。マルアクも質のよい感知魔法を使っているようです」
「魔法のせいなのか?」
「もちろん情報漏れの可能性もありますけどね」
ソッドが苦笑しつつ、啓二を見る。
ソッドはガーネットのような紅い瞳をしている。濃く、深い紅色だ。
「漏らすとしたら啓二、あなたですが……違うでしょう?」
「ま、そうだな」
啓二も苦笑して、夕食のチキンソテーを頬張る。濃い旨味が口中に広がる。
ソッドは白ワインを口に含み、飲む。
「明日はオフです。ご自由に過ごしてください」
「いいのか? 警護役は?」
「出かけるときには、別の者を手配します」
「そうか」
ソッドが手を挙げると、食事を作ってくれたメイドが寄ってくる。
メイドは若く見える。褐色の肌と、淡い色の髪。そして尖った長い耳が特徴的だ。
「紹介します、こちらはマーガレット。この家のことを世話してくれています」
「よろしく、マーガレットさん」
啓二が会釈すると、マーガレットはスカートをつまんで礼をする。
「マーガレットと申します。なんなりとお申し付けくださいませ」
「もしかして、彼女は……」
「はい、わたくしはエルフ族でございます」
エルフ――堕落境域に住む異種族のひとつだ。容姿が美しく、魔法に長け、耳が尖っている。
エルフメイド・マーガレットは、啓二をじっと見つめる。
「鳴神様は、若様の大切な方と認識しております」
「え?」
マーガレットの言葉に、若様が困ったように笑う。
「たしかに、啓二は大切にすべき対象ではありますね」
「そ、それは……研究対象として、だろう?」
啓二は戸惑う。
「ええ、研究対象としても大切にすべきですが。できればもっと親密でもかまいませんよ?」
「どういう意味だよ?」
「同じ境域に生きる者として、対等な友人になれたらと思います」
ソッドがにっこりと笑う。
啓二は腑に落ちない顔だ。
「……なんか調子狂うな。俺はアンタの警護役で、研究対象だろ」
「それだけじゃ、つまらないじゃないですか」
「そういうもんか……?」
二人のやりとりを、マーガレットがほほ笑ましそうに見守っていた。
「では、若様。わたくしは片付けが済みましたら……」
「ああ、今夜は上がってください。明日もよろしく」
どうやら、マーガレットはどこかに帰宅するらしい。
夜は二人きりになるのか、と啓二はぼんやり思った。
堕落境域の夜景は、今夜も美しかった。
***
「ふぅ……」
夕食を終えて、啓二は自室へと入った。
自室には、ベッドのほかに、デスクやキャビネットがある。まだ開けていないダンボールもある。
「トレーニングルームにでも行くかな……」
眠るにはまだ早い。
スーツを脱ぎ、ラフな格好に着替える。啓二は部屋を出ようとした。
――ドクン。
心臓が、強く打った気がする。
「……あ?」
――ドクン、ドクン。
気のせいではない。心臓が強く打ち始める。
同時に、下腹部にゾクンと衝撃が奔る。淫紋のあたりが熱を持ち、妙にざわつく感覚がある。
「……ッ!?」
啓二は咄嗟に、ベッド横のキャビネットに向かう。
引き出しの中に、淫紋を鎮める抑制剤の頓服がある。錠剤を取り出し、口に含む。
「……ングッ!?」
薬を飲み下すより先に、下腹部に快感が奔る。
思わず錠剤を噛んでしまう。苦い味が、口の中に広がった。
デスク上のペットボトルを開け、中の水で薬を飲み下す。
「ハァ、ハァ……あぐっ!」
薬を飲んでも、一向に効き目がない。
啓二は下腹部を押さえて、床にうずくまった。押さえた部分から、快感が全身に広がり始める。
「や、やばい……発作だ……!」
淫紋の強い発作。淫猥な快楽を呼び起こす発作だ。
啓二は必死で、デスクの上に置いたスマートフォンを取った。ソッドに電話を掛ける。
「ソッド、来てくれ、発作だ。薬、効かない……うぐぅっ!」
『わかりました、すぐ行きます』
ほどなくして、啓二の部屋にソッドが入ってくる。
「大丈夫ですよ、啓二。頓服は?」
「の、飲んだ……!」
「わかりました、ベッドに移動しましょう」
ソッドに支えられ、啓二はなんとかベッドに倒れ込む。
だが快感を訴える肉体は鎮まらない。ハーフパンツを、陰茎が押し上げているのがわかる。
「あ、あ……熱い、くるしぃ……!」
「……薬の効きが悪いですね」
ソッドが眉を寄せる。
彼の腕を、啓二はつかんだ。
「た、たすけて……」
「啓二、気を確かに。大丈夫ですから」
「くるしい……おねがい、たすけて……!」
潤んだ瞳で、啓二は必死に助けを求める。
その様子を見ていたソッドは、決心したように顔を近づける。
「……淫紋を鎮める効果的な方法がありますが」
「な、なんでもいい……! はやく……!」
ソッドの言葉に、啓二はすがった。ソッドをつかむ手の力が強まる。
「わかりました」
ソッドはそう言うと――啓二の唇に、おのれの唇を重ねる。
啓二が目を見開くのもかまわず、ソッドは唇を吸う。
「ん……」
「ん、ぅ……!?」
啓二はいままでにない感覚を得ていた。
体内で渦巻き、行き場のなかった快感が、口から抜けていくような気がする。
気持ちがいい。通り道を得た快感が抜けていくのは、爽やかでさえある。
「啓二……ん……」
「ちゅ、ん……ソッド……あむ、ちゅ……」
啓二は夢中で、ソッドの口づけに応えた。無意識のうちに、ソッドの唇を吸い、貪ってしまう。
「次は、舌ですよ……」
ソッドの舌が、啓二の口内に入り込んでくる。
ぬるりと、舌が絡め取られる。全身の快感が、舌先に集中する。
「んむ……ちゅ……れろ……は……ん……」
啓二はひたすら、ソッドの与えてくる行為に応えた。
ソッドの手が、動く。啓二の首筋を撫で、胸元をまさぐり、腹筋をさする。啓二のハーフパンツの上から、勃起した股間にそっとふれる。
「んぅ……っ! ぷは……っ」
啓二は思わず、口を離す。
ソッドの舌先と啓二の舌先が、銀色の橋でつながれる。唾液の橋は、一瞬で崩れ落ちる。
「そ、そこ……!」
「大丈夫ですよ、啓二」
ソッドが優しく囁く。
「最も効果的な、鎮静方法ですからね」
言うやいなや、ソッドは啓二のハーフパンツに手をかけた。下着ごとずり下ろす。
啓二の陰茎は、しっかりと勃起していた。天井を仰ぐように、震える。先端には先走りの汁が光り、いやらしく湿っている。
「大丈夫……」
ソッドが何度目かの「大丈夫」を告げる。
落ち着いた深い声が、啓二の耳をじわりと侵す。
「優しく、しますから」
「あ……っ!」
ソッドのなめらかな右手が、啓二の陰茎をそっと包み込む。
温かくさらりとした感覚が、啓二の敏感な部分に与えられる。啓二の腰が、ビクッと震える。
「こんなに苦しそうに……」
ソッドの右手が、絶妙な力加減で啓二の陰茎を刺激する。
裏筋をこすり上げ、亀頭を揉み、鈴口を押す。
「こちらも……」
ソッドの左手が、啓二のTシャツをまくりあげる。啓二の胸元は、先端がぷっくりと尖っていた。
「はむ……」
「あ、あぁ……そこぉ……!」
啓二は喘いだ。
ソッドが、啓二の乳首を口に含む。舌先で、敏感な先端をコロコロと転がす。
「ちゅ、ちゅく……」
「き、気持ちいい……!」
啓二の口から、抗えない快楽の声が漏れる。気持ちいい、と認めてしまう。
「お、俺……もう……っ!」
啓二の体が、ビクン! と大きく波打った。
陰茎の先端から、白濁とした液が飛ぶ。痙攣する腹筋にかかる。下腹部の黒い淫紋を、ドロリとした精液が濡らす。
「もう少し……」
「あっ、あうっ、ダメだ……!」
ソッドの右手が、休まず啓二の陰茎を刺激し続ける。
裏筋を絞るようにこすられ、啓二は何度も吐精した。
「イく……! また、イく……ッ!」
「いいですよ、何度イっても」
「はぁ……はぁ……! あっ、くぅ……!」
ソッドが与えてくれる快楽に、啓二は身を委ねた。
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