3 / 4
せんせいのくらいひめごと ~ハロウィン・ナイト~
しおりを挟む
十月三十一日。
俺はサロンの施術室で、中川という男の相手をしていた。
相手、というのは語弊があるかもしれない。なぜなら中川はすでに麻酔薬入り加湿器のおかげで、意識が朦朧としているからだ。加湿器は、意識を混濁させる霧を吐き出し続けている。
つまり、中川は俺の術中だ。
「う、あ……」
「お静かに、中川様」
俺はハンカチを取り出すと、中川の顔に押し当てる。
中川は軽くうめいたが、すぐに安らかな吐息が聞こえだした。
中川は容姿端麗な男だ。爽やかそうな雰囲気、優しげな笑顔は、さぞ女に受けるだろう。
あの笑顔で、俺の妹に近づいたのだろうか。反吐が出る。
俺には妹がいる。名前はマナという。
マナに近づく虫は許せない。俺はいつもマナの交際相手に気を使ってきた。
そう、気を使ってきた。交際相手の男ができると、兄として近づき、拉致して手篭めにしてきた。俺のやり方で、女に興味を失くした男は数しれない。
福井や平野に使った方法は、マナを守るために確立した俺の技術だ。
麻酔薬で意識を混濁させ、媚薬で淫蕩な性を引き出す。
上手くいかなかったことなどない。
「さて……」
中川が熟睡したのを確かめ、俺は彼のコートに近づいた。ポケットをさぐると、マンションの鍵が出てくる。中川の自宅のものだ。
俺は鍵を拝借すると、店の裏手に回った。裏手では、福井が控えている。
「福井、頼むぞ」
「はい、先生」
福井はすぐさま、合鍵を作りに行った。
福井は俺の忠実なしもべだ。合鍵ができれば、すぐさま中川の部屋を見に行く手はずになっている。何かつかめればいいのだが。
俺は施術室へと戻る。
中川の体をチェックし始める。服を軽く脱がせ、体は引き締まっているかを見る。胸筋も腹筋も、鍛えられているな。
下着をずり下ろすと、中川は勃起していた。サイズは悪くない。男として自信を持っていていい大きさだ。これで女を喜ばせてきたのだろうか。
忌々しい。
俺はふと、中川の引き締まった胸筋に手を伸ばした。
胸元を撫で、色素の淡い乳首にふれる。
「……ん……」
中川が喉奥で声を出す。眠り出してから、初めての反応だった。勃起しているペニスが、さらにムクムクと立ち上がってくる。
「ほう」
俺はにやりと笑った。
どうやら中川は乳首が弱いらしい。乳首をいじりながらだと、中川は面白いように反応する。俺がアナルにふれても、甘い声しか出さない。
「……ん……んぅ……」
「面白くなってきたな」
俺は中川のアナルをいじりながら、笑った。中川の乳首を、俺の右手の指で刺激する。ついでに左手で、アナルを押し広げる。
「……ん……あ……」
アナルを軽く拡張されながらも、中川からは甘い声が漏れている。これは淫らな素質がありそうだ。
いずれ、中川も犯してやる。
「時間か……」
俺はふたたび、店の裏手に出る。
中川の部屋の鍵が、俺の指定した場所に置かれている。どうやら福井はうまく鍵をつくって、中川の部屋へ向かったようだ。
俺のスマホが鳴動する。福井から、中川の部屋を出たとメッセージが入っている。
「よくやった……と」
俺は福井に褒めるメッセージを送り、鍵を取って、施術室へと戻る。
中川の衣服を整える。ポケットに鍵を戻す。
気つけのための匂い紙を用意し、中川の鼻先で揺らした。
「ん、あ……」
「お目覚めですか?」
俺はおだやかに、中川に笑顔を向ける。今まで彼にしていたことなど、なかったかのように。
「ああ、すみません……寝ちゃってたみたいで」
「いえいえ、よくあることですよ」
俺の返答に、中川も爽やかに笑う。そのまま何も疑わず、中川は店をあとにした。
俺が施術室を片付けていると、福井から電話が入った。
メッセージでは伝えられない内密の話があるときは、電話にしろと言ってある。俺は福井からの報告を聞く。
「……なに?」
俺はある報告を聞いて、眉をしかめた。
中川め、とんでもない狼男のようだ。しかも部屋のカレンダーには、「十月三十一日、マナと渋谷」と書かれていたそうではないか。今日だ。このままだと、マナが危ない。
中川を早く無力化しなければ。
俺は電話を切り、思案していた。
***
十月三十一日、ハロウィン当日。
渋谷のクラブハウスで、俺はマナを待っていた。コスプレとして、黒い軍服を選んだ。我ながら決まっていると思う。マントも装備した、かなり手の込んだ衣装だ。
マナは処女っぽいが、いい女だ。
今日はこの店でレイプドラッグ入りのカクテルを飲ませたあと、仲間とマワすことにしている。ああ、待ち遠しい。キメセクは癖になるな。
俺はマナを迎えるために、店の外へ出た。
ゴミゴミとした雑踏が、コスプレをした連中で溢れている。
雑踏の遠くに、マナが見えた。
俺は優しげな笑顔をつくっておく。この笑顔で騙すのも、今日が最後だけどな。ああ、本当に楽しみだ。
マナへと声をかけようとしたとき、ふいに俺のマントが引っ張られた。
「なんだ?」
俺が振り返ると、仮面をつけた吸血鬼がいた。もちろんハロウィンのコスプレだ。
ヴァンパイア姿の男が、青色の柄の入った袋を見せてくる。
「そ、れは……!?」
袋に見覚えがあった。それは、俺の寝室にあったはずだ。
――覚醒剤。
どうしてここにあるのか。どうしてコスプレ男が持っているのか。
俺は混乱しながらも、ヴァンパイアの男に詰め寄ろうとした。
――バサッ!
布のひるがえる音とともに、一瞬で視界が真っ暗になる。
「なんだ、くそ……!?」
柔らかく、黒い布――ヴァンパイア野郎のマントか!?
そう気づいたのだが、俺は急速に眠気を感じた。抗えない。意識が遠くなっていく。足元がおぼつかなくなり、ヴァンパイア野郎にもたれかかってしまう。
甘い匂いが、鼻の奥でくすぶる。意識が遠のいて――。
視界が明るくなる。マントが外されたようだ。ぐらぐらする視界の中、マナが歩いてくるのが見える。
助けてくれ。
たすけてくれ。
俺はすがるようにマナに手を伸ばそうとする。
するとまた、視界が暗くなった。鼻と口元が、黒い布で強く押さえつけられる。
マナの笑い声がする。俺に気づいていないのか?
そこで、俺は眠ってしまった。
***
「そうか。よくやった、平野」
俺は中川を支えながら、電話に応えていた。
相手は俺のもうひとりのしもべ、平野だ。中川に会いに来たマナを、上手く保護してくれたようだ。マナは中川よりも、平野たちと遊ぶことにしたらしい。
平野には福井もついている。
これで安心だ。平野と福井がマナに手を出すことはないからな。
「あとは、こいつか」
俺は軍服姿の中川を、抱き直す。中川は気を失っている。
中川はとんでもない男だった。彼の部屋には覚醒剤があった。福井が調べたところによると、悪い仲間も多数いた。どうやら付き合った女性を、クスリを使って輪姦していたようだ。
「さっさと済ませようか」
中川には、マナをたぶらかした報いを受けさせねばならない。
俺は中川を連れて、近くのラブホテルへと入っていった。
***
「てめぇ! なにしやがった!?」
ラブホテルの部屋に入るなり、中川が意識を取り戻した。
知らない部屋――といっても、ラブホテルであることは理解したらしい。中川は部屋を出ようとする。俺は止めようとする。
俺たちはもみ合いになった。
ふたたび俺は覚醒剤の袋を見せる。中川の顔色が変わる。
「その袋も……返しやがれ!」
乱闘中、中川は何度も聞き苦しい罵倒を叫んでいた。
俺はヴァンパイアのマントをひるがえす。中川の顔に何度もかける。マントには吸引麻酔薬が染み込ませてある。顔にかかれば、徐々に効いてくるはずだ。
「く、そ……!」
何度かマントをかぶせると、中川はおとなしくなっていく。
もうひと押しだ。俺は再度、マントを中川の顔にかける。中川の体が崩れ落ち、動かなくなる。
マントを取り去る。中川は眠っていた。
「はぁ……」
中川の寝顔を見ながら、俺はため息とともに思い返す。
俺はマナを守るために、思案をやめて、ほとんど突発的に渋谷に向かった。
中川ごとき無力化するのは難しくはない。だが、それも俺のハンカチを使った手法が通用してのことだ。周到な準備をしなければいけない。
だが今回は緊急だった。準備はできていない。
どうしたものかと、渋谷の真ん中で思案していると、平野から連絡が入る。
合流すると、平野は荷物を俺に渡してくる。
「先生には、必要だと思って」
荷物を開けると、いつもの薬と――仮装衣装だった。
ヴァンパイアのコスプレ衣装だ。黒いマントが付属している。
「そうか……これだ。平野、よくやった」
俺はすぐに妙案を思いついた。吸血鬼の衣装に着替える。
あとは先に語ったとおりだ。中川は俺の術中にはまった。
***
眠っている中川を、俺はベッドに寝かせる。軍服を脱がせて床に無造作に放る。
俺は脱がない。マントも外さず、中川に覆いかぶさる。
中川の唇に、キスをする。左手で中川の顎をわずかに動かし、唇を開かせる。俺は舌を、中川の口内に滑り込ませる。
「ん、う……」
中川が喉奥でうめいた。
俺に舌を絡められ、応えるように舌の根が動く。舌先同士をぶつけると、中川の頬が赤らんだ。丁寧に舐めくすぐってやると、さらに頬が赤くなる。
「ふ……」
俺は唇を離すと、中川の首筋にキスを落とす。何度も、何度も唇で首筋を吸う。
左手で中川の胸筋を撫で、右手で丁寧に腹筋をなぞる。右手はさらに下ろし、中川の会陰をくすぐる。中川のペニスがビクリと震える。
「素質があるな」
俺は低く笑うと、中川の陰嚢を軽く握った。
その途端、中川のペニスがムクムクと勃起する。
「随分、してほしそうじゃないか」
俺は中川のペニスを右手で握る。優しく上下にこすってやると、勃起が強まる。
右手で中川のペニスを固定すると、俺はそちらに顔を近づけた。亀頭に息を吹きかけ、ペニスが震えて悦ぶのを見る。
俺は口を大きく開けた。
舌と唇で歯を上手く隠し、中川のペニスを口に含む。吸い上げると、ペニスが嬉しそうに震える。
「ん……あむ……」
俺が中川のペニスをしゃぶっていると、彼の体がもぞもぞと動き始める。
どうやら意識を取り戻したらしい。だが朦朧としているようで、抵抗は弱い。
「なん……だ……?」
中川は、俺が与えている股間の快感に、視線を向けてくる。
そして、「信じられない」という表情をした。そうだろう。いきなり男にペニスをしゃぶられている光景が見えたのだからな。
「てめ……! なに、して、やがる……!」
「ふふ……なに、親睦を深めようと思ってね」
中川はとぎれとぎれに言葉を吐き出す。
俺は穏やかに笑って、言った。
「なにせ、大切な者の交際相手だ。存分にイかせてあげよう」
「やめ、やがれ……!」
中川は口では拒絶した。
だが俺が再度ペニスを吸ってやると、中川は腰を突き出してよがった。体は、与えられる快楽に従順なようだ。弱々しい抵抗の言葉が出る。
「やめ……あっ、う、やめろぉ……!」
「大丈夫だ、イくといい」
俺は手でペニスの裏筋を愛撫する。同時に亀頭を舐め回し、吸い上げる。
中川が息をつまらせ、腰をブルリと震わせた。ペニスから精液が飛ぶ。
俺は口を離し、ペニスから白濁とした液体が飛ぶのを楽しげに見つめる。
「うあ……! あ……!」
「男にイかされる気分はどうかな?」
俺の質問に、中川は睨むように目を向けた。だが赤く染まった目元は、快楽に抗えない彼の素質を示していた。
「く、そぉ……!」
中川は起き上がって俺につかみかかろうとした。
だが俺の方が早い。素早くマントを中川の口元にかける。鼻と口を覆い、押さえる。
中川が再び意識を混濁させる。目を何度も瞬かせる。眠りそうになる直前で、俺はマントを取り去った。
「う、あ……あ……」
「ふふ、大丈夫だ。もっとよくしてやろう」
俺は立ち上がり、ズボンをずり下げて自分の股間を見せつける。すでに俺自身のペニスも勃起している。
中川は俺の股間を見ると、恐怖と嫌悪と――期待のこもった目で俺を見た。彼の淫らな本質が、視線となってあらわれていた。
「大丈夫だ、気持ちよくなるとも」
俺は穏やかに声をかけて、中川に覆いかぶさった。
中川の鼻先にキスを落とし、首筋を舐めながら、アナルを指でほぐしてやる。前立腺を刺激しながら、乳首を吸ってやる。
「や、やめ……! あ、ああ……!」
中川の乳首を吸うと、彼は嬉しそうに喘いだ。乳首の弱さがハッキリとわかる。
俺は何度も、中川の乳首を舌先で転がしてやる。その度に中川は反応し、アナルも柔らかくほぐれていく。
「う、あ……! あ、あう……!」
乳首と前立腺を、同時に責めてやる。どちらもコリコリと固くなっていく。
中川は背筋を反らして、ペニスを無様に震わせる。
「さて」
俺は自分のペニスを、中川のアナルにあてがった。
中川は恐ろしげに俺を見上げたが、抗えない快楽に精神が染まっているのがわかる。
「大丈夫だとも。力を抜いて」
俺は優しくキスをしながら、ゆっくりとペニスを挿入した。
「うあ……! あっ、あっ……!」
中川の内部が、俺のペニスを締め付けてくる。
俺は内部の感触を楽しみながら、ペニスで中川の前立腺を押し上げてやる。
「んあ……! あう……!」
中川の腹筋が、ビクビクと震える。ペニスが震えて、先走りの汁を飛ばす。透明な液体が、中川の腹に垂れていく。
「や、やめ……やめて……!」
中川の口から、弱々しい拒絶が出る。
だが体は快楽を望んでいる。俺にはありありとわかった。
俺は中川の乳首に吸い付いた。
途端に、中川の内部がキュウッと締まった。本当に、乳首が弱いな。
舌で丁寧に乳首を包んでやる。吸い上げ、転がし、はじく。
「あ、あ、うあ……イく、イくぅ……!」
中川はあっという間に絶頂した。ペニスから精液が飛ぶ。ビュルッと粘っこい汁が飛び出し、中川の腹筋を汚した。
だが俺はまだ満足しない。俺はゆっくりとピストンする。
「まだだ」
俺は中川を突き上げながら、右手で中川の左乳首を愛撫する。つまみ、転がし、こすりあげる。そして右乳首にキスをする。
「ああ……! やめろ……! やめて……!」
「好きだろう? 乳首をこうされるのが」
俺はわずかに笑い、さらに乳首を舐めながら、中川の内部を責める。アナルは柔らかくほぐれつつ、キツく締め上げてくる。
「さぁ、いい子だ」
俺は指先で中川の乳首を愛撫しながら、中川にキスをした。優しく、まるで恋人のように。
中川がまた射精する。腰が震え、アナルがびくびくと痙攣する。
「またイったのか」
「あう……! あ……! あ……!」
俺は嗜虐的な笑みを浮かべながら、中川の乳首を強くつまむ。指に力を入れて、ぎゅうっと乳首を潰してやる。
「んおおっ!」
中川はあられもない声を上げて、仰け反った。舌先が口から飛び出す。
俺はそれを見逃さない。素早くキスで口を塞ぎ、舌を絡める。挿入したペニスの動きを早めてやると、中川はイった。
「ぷあ……! イ、イく……!」
絶頂する中川の乳首を、指先でコロコロと転がしてやる。
それだけで、中川のペニスは何度も何度も、精液を吐き出す。
「あ、あ……! イく……! またイくぅ……!」
中川はまるで失禁したように、精液をダラダラと垂らし続ける。
頃合いだ。俺はそう思い、そばに置いてある服に手をのばす。
「さて」
俺は服の中から、黒いハンカチを取り出した。
中川を見ると、気絶していた。俺とつながったまま、全身がビクビクと痙攣している。引き締まった腹筋には、彼自身の精液がベットリとかかっていた。
「困った人だ」
俺は黒いハンカチの中から、匂い紙を取り出す。麻酔薬で意識の混濁した者を起こすための紙だ。刺激臭がするようになっている。
匂い紙を、中川の鼻先で揺らす。
「う、あ……?」
中川が意識を取り戻す。焦点の合わない視線を、俺に向けてくる。
俺は、ゆっくりと黒いハンカチを中川の鼻先に押し当てる。
「ん、んん……」
中川は一瞬息を止めたが、俺はハンカチを取り去らない。
すぐに折れた中川は、黒いハンカチをされたまま息を吸う。頬が赤くなってくる。目元が蕩けてくる。
「どうかな、媚薬入りハンカチの香りは?」
「む、むう……」
「この薬を使えば、もっともっと気持ちよくなれる」
そう告げると、中川の喉が鳴った。固唾を飲み込んだようだ。快楽への期待が、彼の中で膨らんだのがわかった。
「覚醒剤よりもずっとずっといいぞ?」
「んむ……む……」
黒いハンカチの媚薬を吸わせつつ、俺はまた中川の乳首を指先で転がす。
中川の背筋が仰け反る。ペニスが反り返り、何度目かわからない射精をする。
「んぐ……! んう……!」
「どうだ? 俺に従うなら、もっともっとイかせてやろう」
俺は中川の乳首から手を離す。
黒いハンカチを中川の顔にかぶせたまま、俺は中川の頬を優しく撫でてやった。
中川の蕩けた目元が、俺を見上げてくる。
「大丈夫、俺に従うならクスリのことは誰にも言わない」
俺は優しく、そう告げた。まるで恋人に愛を囁くかのように。
「それどころか、もっともっと気持ちよくしてやるとも」
俺は中川の腹筋をツツゥッとなぞる。ペニスを、そっと握ってやる。
中川がビクッと震える。
「俺のものになるなら、うなずけ」
優しい口調で命令する。
中川の蕩けた目元が、一瞬迷いを見せる。
「いい子だから」
俺は指先で、中川の乳首を軽くはじいた。
中川が仰け反る。彼の乳首はもはや、ペニスにも匹敵する敏感な性感帯となっていた。
「んうっ!」
「ほら、我慢できないだろう?」
俺は小刻みに、中川の内部にある自分のペニスを揺らす。
乳首を責めながら、前立腺をコチュコチュと押し上げてやる。
「天国にイきたいだろう? ……うなずけ」
俺の言葉に、中川の中でなにかが折れる音がした。
中川がゆっくり、確実にうなずく。
「ん、う……」
「そう、いい子だ」
俺は一気に、腰をグラインドさせる。
中川が目を見開き、黒いハンカチを噛んだ。ペニスが強く勃起する。
「さぁ、イかせてあげよう」
俺は中川の乳首をギュッとつまんだ。中川が激しく仰け反る。
俺は体を前に倒し、仰け反る中川を押さえ込む。彼の乳首を口に含み、強く吸い上げる。
「んっ! んっ! んっ!」
ハンカチを噛み締めている中川の乳首を、甘噛みしてやる。
「んっ! んう~~~~!!」
中川は絶頂した。激しく精液を吐き出す。両脚を広げ、俺に腰を押し付けるように痙攣する。ハンカチの匂いを強く吸い込む。黒いハンカチに、彼の鼻の形がくっきりと浮かぶ。
「もっとだ。もっともっと、イかせてあげるとも」
俺は獰猛に笑いながら、中川を責め立てる。
これでマナの身は安全になるだろう。そう確信しながら、俺は中川を抱き続けた。
***
俺はぼうっと目を開ける。視界が暗い。ブランケットにくるまっているのか。
最悪な夢を見ていたようだ。まだ眠い。俺はブランケットを手で押さえて、顔に押し付ける。眠い。ねむい……。
だが、腰がズキリと傷んで、寝ていられない。
俺は背中を押さえようとして、そこで自分の格好に気づく。軍服を着ている。
スマホを見る。時間は、十一月一日の二〇時。
どういう、ことだ? なぜ俺は軍服のまま寝ていたんだ?
眠気が吹き飛び、目が冴える。
混乱しながら、よく思い返す。
クラブハウスの前で、ヴァンパイア野郎にやられたこと。ホテルに連れ込まれ、犯されたこと。最後の記憶は――。
最後の記憶は、自宅に連れてこられ、ヴァンパイア野郎が。
ヴァンパイア野郎が、俺の顔にマントをかぶせてきた。そこまでの記憶がある。
俺は青ざめた。部屋を見回す。
寝室の机には、ヴァンパイアの衣装と仮面がある。
「はっ!?」
俺は飛び起きて、ブランケットを取り払った。
いや、ブランケットじゃない。ヴァンパイア野郎のマントだ。黒い布が、俺を嘲笑うかのようだ。これを丸一日かぶって寝ていたのか!?
俺は急いで、部屋中の鍵を閉めようとする。
ドアの鍵をかけようとして、俺は手を止めた。
なぜ、ヴァンパイア野郎はここに出入りできたんだ?
それに、あいつは俺の覚醒剤まで持っていた。確実に、ここに出入りしている。
自由に、あいつは出入りできるんだ。
恐怖で手が震えた瞬間、ドアが開いた。
白衣の男が入ってくる。
顔には見覚えがある。あのヴァンパイア野郎だった。
***
「中川様、エステサロンより出張サービスに参りました。……よく眠っていたな」
俺は余裕を崩さない。
俺の顔を見ると、中川はうろたえた。俺はかまわず、質問を投げかける。
「白と黒、好きな色はどちらだ?」
「はぁ……!? なに言ってんだ、てめぇ……」
「答えないと、クスリのことを警察に言う」
俺が脅すように言うと、中川は口をつぐんだ。混乱しつつ考えている顔だ。
「……し、白」
答えを聞いて、俺は笑った。白衣の右ポケットから、白いハンカチを取り出す。
中川の目の前で、悠然と麻酔薬をハンカチに染み込ませる。
おそらく、左ポケットの黒いハンカチも使うことになるだろうがな。
「う、うおおおおおッ!」
薬を見た中川が、猛然と俺につかみかかってきた。
俺はそれを避ける。中川の顔に、白いハンカチを押し当てる。
「んうぅ~~~~!!」
中川から、くぐもった悲鳴が上がる。
俺は中川をガッチリと押さえ込む。中川はしばらく暴れていたが、徐々に大人しくなっていく。
「いい子だ」
俺はなにも怖くなかった。
白のハンカチは、どんな相手でも意のままにする、俺の魔法のハンカチだ。
もちろん、黒のハンカチもそうだ。媚薬を染み込ませた、人の本質をえぐり出すハンカチだ。
俺は、なにも怖くなどなかった。
――おわり
俺はサロンの施術室で、中川という男の相手をしていた。
相手、というのは語弊があるかもしれない。なぜなら中川はすでに麻酔薬入り加湿器のおかげで、意識が朦朧としているからだ。加湿器は、意識を混濁させる霧を吐き出し続けている。
つまり、中川は俺の術中だ。
「う、あ……」
「お静かに、中川様」
俺はハンカチを取り出すと、中川の顔に押し当てる。
中川は軽くうめいたが、すぐに安らかな吐息が聞こえだした。
中川は容姿端麗な男だ。爽やかそうな雰囲気、優しげな笑顔は、さぞ女に受けるだろう。
あの笑顔で、俺の妹に近づいたのだろうか。反吐が出る。
俺には妹がいる。名前はマナという。
マナに近づく虫は許せない。俺はいつもマナの交際相手に気を使ってきた。
そう、気を使ってきた。交際相手の男ができると、兄として近づき、拉致して手篭めにしてきた。俺のやり方で、女に興味を失くした男は数しれない。
福井や平野に使った方法は、マナを守るために確立した俺の技術だ。
麻酔薬で意識を混濁させ、媚薬で淫蕩な性を引き出す。
上手くいかなかったことなどない。
「さて……」
中川が熟睡したのを確かめ、俺は彼のコートに近づいた。ポケットをさぐると、マンションの鍵が出てくる。中川の自宅のものだ。
俺は鍵を拝借すると、店の裏手に回った。裏手では、福井が控えている。
「福井、頼むぞ」
「はい、先生」
福井はすぐさま、合鍵を作りに行った。
福井は俺の忠実なしもべだ。合鍵ができれば、すぐさま中川の部屋を見に行く手はずになっている。何かつかめればいいのだが。
俺は施術室へと戻る。
中川の体をチェックし始める。服を軽く脱がせ、体は引き締まっているかを見る。胸筋も腹筋も、鍛えられているな。
下着をずり下ろすと、中川は勃起していた。サイズは悪くない。男として自信を持っていていい大きさだ。これで女を喜ばせてきたのだろうか。
忌々しい。
俺はふと、中川の引き締まった胸筋に手を伸ばした。
胸元を撫で、色素の淡い乳首にふれる。
「……ん……」
中川が喉奥で声を出す。眠り出してから、初めての反応だった。勃起しているペニスが、さらにムクムクと立ち上がってくる。
「ほう」
俺はにやりと笑った。
どうやら中川は乳首が弱いらしい。乳首をいじりながらだと、中川は面白いように反応する。俺がアナルにふれても、甘い声しか出さない。
「……ん……んぅ……」
「面白くなってきたな」
俺は中川のアナルをいじりながら、笑った。中川の乳首を、俺の右手の指で刺激する。ついでに左手で、アナルを押し広げる。
「……ん……あ……」
アナルを軽く拡張されながらも、中川からは甘い声が漏れている。これは淫らな素質がありそうだ。
いずれ、中川も犯してやる。
「時間か……」
俺はふたたび、店の裏手に出る。
中川の部屋の鍵が、俺の指定した場所に置かれている。どうやら福井はうまく鍵をつくって、中川の部屋へ向かったようだ。
俺のスマホが鳴動する。福井から、中川の部屋を出たとメッセージが入っている。
「よくやった……と」
俺は福井に褒めるメッセージを送り、鍵を取って、施術室へと戻る。
中川の衣服を整える。ポケットに鍵を戻す。
気つけのための匂い紙を用意し、中川の鼻先で揺らした。
「ん、あ……」
「お目覚めですか?」
俺はおだやかに、中川に笑顔を向ける。今まで彼にしていたことなど、なかったかのように。
「ああ、すみません……寝ちゃってたみたいで」
「いえいえ、よくあることですよ」
俺の返答に、中川も爽やかに笑う。そのまま何も疑わず、中川は店をあとにした。
俺が施術室を片付けていると、福井から電話が入った。
メッセージでは伝えられない内密の話があるときは、電話にしろと言ってある。俺は福井からの報告を聞く。
「……なに?」
俺はある報告を聞いて、眉をしかめた。
中川め、とんでもない狼男のようだ。しかも部屋のカレンダーには、「十月三十一日、マナと渋谷」と書かれていたそうではないか。今日だ。このままだと、マナが危ない。
中川を早く無力化しなければ。
俺は電話を切り、思案していた。
***
十月三十一日、ハロウィン当日。
渋谷のクラブハウスで、俺はマナを待っていた。コスプレとして、黒い軍服を選んだ。我ながら決まっていると思う。マントも装備した、かなり手の込んだ衣装だ。
マナは処女っぽいが、いい女だ。
今日はこの店でレイプドラッグ入りのカクテルを飲ませたあと、仲間とマワすことにしている。ああ、待ち遠しい。キメセクは癖になるな。
俺はマナを迎えるために、店の外へ出た。
ゴミゴミとした雑踏が、コスプレをした連中で溢れている。
雑踏の遠くに、マナが見えた。
俺は優しげな笑顔をつくっておく。この笑顔で騙すのも、今日が最後だけどな。ああ、本当に楽しみだ。
マナへと声をかけようとしたとき、ふいに俺のマントが引っ張られた。
「なんだ?」
俺が振り返ると、仮面をつけた吸血鬼がいた。もちろんハロウィンのコスプレだ。
ヴァンパイア姿の男が、青色の柄の入った袋を見せてくる。
「そ、れは……!?」
袋に見覚えがあった。それは、俺の寝室にあったはずだ。
――覚醒剤。
どうしてここにあるのか。どうしてコスプレ男が持っているのか。
俺は混乱しながらも、ヴァンパイアの男に詰め寄ろうとした。
――バサッ!
布のひるがえる音とともに、一瞬で視界が真っ暗になる。
「なんだ、くそ……!?」
柔らかく、黒い布――ヴァンパイア野郎のマントか!?
そう気づいたのだが、俺は急速に眠気を感じた。抗えない。意識が遠くなっていく。足元がおぼつかなくなり、ヴァンパイア野郎にもたれかかってしまう。
甘い匂いが、鼻の奥でくすぶる。意識が遠のいて――。
視界が明るくなる。マントが外されたようだ。ぐらぐらする視界の中、マナが歩いてくるのが見える。
助けてくれ。
たすけてくれ。
俺はすがるようにマナに手を伸ばそうとする。
するとまた、視界が暗くなった。鼻と口元が、黒い布で強く押さえつけられる。
マナの笑い声がする。俺に気づいていないのか?
そこで、俺は眠ってしまった。
***
「そうか。よくやった、平野」
俺は中川を支えながら、電話に応えていた。
相手は俺のもうひとりのしもべ、平野だ。中川に会いに来たマナを、上手く保護してくれたようだ。マナは中川よりも、平野たちと遊ぶことにしたらしい。
平野には福井もついている。
これで安心だ。平野と福井がマナに手を出すことはないからな。
「あとは、こいつか」
俺は軍服姿の中川を、抱き直す。中川は気を失っている。
中川はとんでもない男だった。彼の部屋には覚醒剤があった。福井が調べたところによると、悪い仲間も多数いた。どうやら付き合った女性を、クスリを使って輪姦していたようだ。
「さっさと済ませようか」
中川には、マナをたぶらかした報いを受けさせねばならない。
俺は中川を連れて、近くのラブホテルへと入っていった。
***
「てめぇ! なにしやがった!?」
ラブホテルの部屋に入るなり、中川が意識を取り戻した。
知らない部屋――といっても、ラブホテルであることは理解したらしい。中川は部屋を出ようとする。俺は止めようとする。
俺たちはもみ合いになった。
ふたたび俺は覚醒剤の袋を見せる。中川の顔色が変わる。
「その袋も……返しやがれ!」
乱闘中、中川は何度も聞き苦しい罵倒を叫んでいた。
俺はヴァンパイアのマントをひるがえす。中川の顔に何度もかける。マントには吸引麻酔薬が染み込ませてある。顔にかかれば、徐々に効いてくるはずだ。
「く、そ……!」
何度かマントをかぶせると、中川はおとなしくなっていく。
もうひと押しだ。俺は再度、マントを中川の顔にかける。中川の体が崩れ落ち、動かなくなる。
マントを取り去る。中川は眠っていた。
「はぁ……」
中川の寝顔を見ながら、俺はため息とともに思い返す。
俺はマナを守るために、思案をやめて、ほとんど突発的に渋谷に向かった。
中川ごとき無力化するのは難しくはない。だが、それも俺のハンカチを使った手法が通用してのことだ。周到な準備をしなければいけない。
だが今回は緊急だった。準備はできていない。
どうしたものかと、渋谷の真ん中で思案していると、平野から連絡が入る。
合流すると、平野は荷物を俺に渡してくる。
「先生には、必要だと思って」
荷物を開けると、いつもの薬と――仮装衣装だった。
ヴァンパイアのコスプレ衣装だ。黒いマントが付属している。
「そうか……これだ。平野、よくやった」
俺はすぐに妙案を思いついた。吸血鬼の衣装に着替える。
あとは先に語ったとおりだ。中川は俺の術中にはまった。
***
眠っている中川を、俺はベッドに寝かせる。軍服を脱がせて床に無造作に放る。
俺は脱がない。マントも外さず、中川に覆いかぶさる。
中川の唇に、キスをする。左手で中川の顎をわずかに動かし、唇を開かせる。俺は舌を、中川の口内に滑り込ませる。
「ん、う……」
中川が喉奥でうめいた。
俺に舌を絡められ、応えるように舌の根が動く。舌先同士をぶつけると、中川の頬が赤らんだ。丁寧に舐めくすぐってやると、さらに頬が赤くなる。
「ふ……」
俺は唇を離すと、中川の首筋にキスを落とす。何度も、何度も唇で首筋を吸う。
左手で中川の胸筋を撫で、右手で丁寧に腹筋をなぞる。右手はさらに下ろし、中川の会陰をくすぐる。中川のペニスがビクリと震える。
「素質があるな」
俺は低く笑うと、中川の陰嚢を軽く握った。
その途端、中川のペニスがムクムクと勃起する。
「随分、してほしそうじゃないか」
俺は中川のペニスを右手で握る。優しく上下にこすってやると、勃起が強まる。
右手で中川のペニスを固定すると、俺はそちらに顔を近づけた。亀頭に息を吹きかけ、ペニスが震えて悦ぶのを見る。
俺は口を大きく開けた。
舌と唇で歯を上手く隠し、中川のペニスを口に含む。吸い上げると、ペニスが嬉しそうに震える。
「ん……あむ……」
俺が中川のペニスをしゃぶっていると、彼の体がもぞもぞと動き始める。
どうやら意識を取り戻したらしい。だが朦朧としているようで、抵抗は弱い。
「なん……だ……?」
中川は、俺が与えている股間の快感に、視線を向けてくる。
そして、「信じられない」という表情をした。そうだろう。いきなり男にペニスをしゃぶられている光景が見えたのだからな。
「てめ……! なに、して、やがる……!」
「ふふ……なに、親睦を深めようと思ってね」
中川はとぎれとぎれに言葉を吐き出す。
俺は穏やかに笑って、言った。
「なにせ、大切な者の交際相手だ。存分にイかせてあげよう」
「やめ、やがれ……!」
中川は口では拒絶した。
だが俺が再度ペニスを吸ってやると、中川は腰を突き出してよがった。体は、与えられる快楽に従順なようだ。弱々しい抵抗の言葉が出る。
「やめ……あっ、う、やめろぉ……!」
「大丈夫だ、イくといい」
俺は手でペニスの裏筋を愛撫する。同時に亀頭を舐め回し、吸い上げる。
中川が息をつまらせ、腰をブルリと震わせた。ペニスから精液が飛ぶ。
俺は口を離し、ペニスから白濁とした液体が飛ぶのを楽しげに見つめる。
「うあ……! あ……!」
「男にイかされる気分はどうかな?」
俺の質問に、中川は睨むように目を向けた。だが赤く染まった目元は、快楽に抗えない彼の素質を示していた。
「く、そぉ……!」
中川は起き上がって俺につかみかかろうとした。
だが俺の方が早い。素早くマントを中川の口元にかける。鼻と口を覆い、押さえる。
中川が再び意識を混濁させる。目を何度も瞬かせる。眠りそうになる直前で、俺はマントを取り去った。
「う、あ……あ……」
「ふふ、大丈夫だ。もっとよくしてやろう」
俺は立ち上がり、ズボンをずり下げて自分の股間を見せつける。すでに俺自身のペニスも勃起している。
中川は俺の股間を見ると、恐怖と嫌悪と――期待のこもった目で俺を見た。彼の淫らな本質が、視線となってあらわれていた。
「大丈夫だ、気持ちよくなるとも」
俺は穏やかに声をかけて、中川に覆いかぶさった。
中川の鼻先にキスを落とし、首筋を舐めながら、アナルを指でほぐしてやる。前立腺を刺激しながら、乳首を吸ってやる。
「や、やめ……! あ、ああ……!」
中川の乳首を吸うと、彼は嬉しそうに喘いだ。乳首の弱さがハッキリとわかる。
俺は何度も、中川の乳首を舌先で転がしてやる。その度に中川は反応し、アナルも柔らかくほぐれていく。
「う、あ……! あ、あう……!」
乳首と前立腺を、同時に責めてやる。どちらもコリコリと固くなっていく。
中川は背筋を反らして、ペニスを無様に震わせる。
「さて」
俺は自分のペニスを、中川のアナルにあてがった。
中川は恐ろしげに俺を見上げたが、抗えない快楽に精神が染まっているのがわかる。
「大丈夫だとも。力を抜いて」
俺は優しくキスをしながら、ゆっくりとペニスを挿入した。
「うあ……! あっ、あっ……!」
中川の内部が、俺のペニスを締め付けてくる。
俺は内部の感触を楽しみながら、ペニスで中川の前立腺を押し上げてやる。
「んあ……! あう……!」
中川の腹筋が、ビクビクと震える。ペニスが震えて、先走りの汁を飛ばす。透明な液体が、中川の腹に垂れていく。
「や、やめ……やめて……!」
中川の口から、弱々しい拒絶が出る。
だが体は快楽を望んでいる。俺にはありありとわかった。
俺は中川の乳首に吸い付いた。
途端に、中川の内部がキュウッと締まった。本当に、乳首が弱いな。
舌で丁寧に乳首を包んでやる。吸い上げ、転がし、はじく。
「あ、あ、うあ……イく、イくぅ……!」
中川はあっという間に絶頂した。ペニスから精液が飛ぶ。ビュルッと粘っこい汁が飛び出し、中川の腹筋を汚した。
だが俺はまだ満足しない。俺はゆっくりとピストンする。
「まだだ」
俺は中川を突き上げながら、右手で中川の左乳首を愛撫する。つまみ、転がし、こすりあげる。そして右乳首にキスをする。
「ああ……! やめろ……! やめて……!」
「好きだろう? 乳首をこうされるのが」
俺はわずかに笑い、さらに乳首を舐めながら、中川の内部を責める。アナルは柔らかくほぐれつつ、キツく締め上げてくる。
「さぁ、いい子だ」
俺は指先で中川の乳首を愛撫しながら、中川にキスをした。優しく、まるで恋人のように。
中川がまた射精する。腰が震え、アナルがびくびくと痙攣する。
「またイったのか」
「あう……! あ……! あ……!」
俺は嗜虐的な笑みを浮かべながら、中川の乳首を強くつまむ。指に力を入れて、ぎゅうっと乳首を潰してやる。
「んおおっ!」
中川はあられもない声を上げて、仰け反った。舌先が口から飛び出す。
俺はそれを見逃さない。素早くキスで口を塞ぎ、舌を絡める。挿入したペニスの動きを早めてやると、中川はイった。
「ぷあ……! イ、イく……!」
絶頂する中川の乳首を、指先でコロコロと転がしてやる。
それだけで、中川のペニスは何度も何度も、精液を吐き出す。
「あ、あ……! イく……! またイくぅ……!」
中川はまるで失禁したように、精液をダラダラと垂らし続ける。
頃合いだ。俺はそう思い、そばに置いてある服に手をのばす。
「さて」
俺は服の中から、黒いハンカチを取り出した。
中川を見ると、気絶していた。俺とつながったまま、全身がビクビクと痙攣している。引き締まった腹筋には、彼自身の精液がベットリとかかっていた。
「困った人だ」
俺は黒いハンカチの中から、匂い紙を取り出す。麻酔薬で意識の混濁した者を起こすための紙だ。刺激臭がするようになっている。
匂い紙を、中川の鼻先で揺らす。
「う、あ……?」
中川が意識を取り戻す。焦点の合わない視線を、俺に向けてくる。
俺は、ゆっくりと黒いハンカチを中川の鼻先に押し当てる。
「ん、んん……」
中川は一瞬息を止めたが、俺はハンカチを取り去らない。
すぐに折れた中川は、黒いハンカチをされたまま息を吸う。頬が赤くなってくる。目元が蕩けてくる。
「どうかな、媚薬入りハンカチの香りは?」
「む、むう……」
「この薬を使えば、もっともっと気持ちよくなれる」
そう告げると、中川の喉が鳴った。固唾を飲み込んだようだ。快楽への期待が、彼の中で膨らんだのがわかった。
「覚醒剤よりもずっとずっといいぞ?」
「んむ……む……」
黒いハンカチの媚薬を吸わせつつ、俺はまた中川の乳首を指先で転がす。
中川の背筋が仰け反る。ペニスが反り返り、何度目かわからない射精をする。
「んぐ……! んう……!」
「どうだ? 俺に従うなら、もっともっとイかせてやろう」
俺は中川の乳首から手を離す。
黒いハンカチを中川の顔にかぶせたまま、俺は中川の頬を優しく撫でてやった。
中川の蕩けた目元が、俺を見上げてくる。
「大丈夫、俺に従うならクスリのことは誰にも言わない」
俺は優しく、そう告げた。まるで恋人に愛を囁くかのように。
「それどころか、もっともっと気持ちよくしてやるとも」
俺は中川の腹筋をツツゥッとなぞる。ペニスを、そっと握ってやる。
中川がビクッと震える。
「俺のものになるなら、うなずけ」
優しい口調で命令する。
中川の蕩けた目元が、一瞬迷いを見せる。
「いい子だから」
俺は指先で、中川の乳首を軽くはじいた。
中川が仰け反る。彼の乳首はもはや、ペニスにも匹敵する敏感な性感帯となっていた。
「んうっ!」
「ほら、我慢できないだろう?」
俺は小刻みに、中川の内部にある自分のペニスを揺らす。
乳首を責めながら、前立腺をコチュコチュと押し上げてやる。
「天国にイきたいだろう? ……うなずけ」
俺の言葉に、中川の中でなにかが折れる音がした。
中川がゆっくり、確実にうなずく。
「ん、う……」
「そう、いい子だ」
俺は一気に、腰をグラインドさせる。
中川が目を見開き、黒いハンカチを噛んだ。ペニスが強く勃起する。
「さぁ、イかせてあげよう」
俺は中川の乳首をギュッとつまんだ。中川が激しく仰け反る。
俺は体を前に倒し、仰け反る中川を押さえ込む。彼の乳首を口に含み、強く吸い上げる。
「んっ! んっ! んっ!」
ハンカチを噛み締めている中川の乳首を、甘噛みしてやる。
「んっ! んう~~~~!!」
中川は絶頂した。激しく精液を吐き出す。両脚を広げ、俺に腰を押し付けるように痙攣する。ハンカチの匂いを強く吸い込む。黒いハンカチに、彼の鼻の形がくっきりと浮かぶ。
「もっとだ。もっともっと、イかせてあげるとも」
俺は獰猛に笑いながら、中川を責め立てる。
これでマナの身は安全になるだろう。そう確信しながら、俺は中川を抱き続けた。
***
俺はぼうっと目を開ける。視界が暗い。ブランケットにくるまっているのか。
最悪な夢を見ていたようだ。まだ眠い。俺はブランケットを手で押さえて、顔に押し付ける。眠い。ねむい……。
だが、腰がズキリと傷んで、寝ていられない。
俺は背中を押さえようとして、そこで自分の格好に気づく。軍服を着ている。
スマホを見る。時間は、十一月一日の二〇時。
どういう、ことだ? なぜ俺は軍服のまま寝ていたんだ?
眠気が吹き飛び、目が冴える。
混乱しながら、よく思い返す。
クラブハウスの前で、ヴァンパイア野郎にやられたこと。ホテルに連れ込まれ、犯されたこと。最後の記憶は――。
最後の記憶は、自宅に連れてこられ、ヴァンパイア野郎が。
ヴァンパイア野郎が、俺の顔にマントをかぶせてきた。そこまでの記憶がある。
俺は青ざめた。部屋を見回す。
寝室の机には、ヴァンパイアの衣装と仮面がある。
「はっ!?」
俺は飛び起きて、ブランケットを取り払った。
いや、ブランケットじゃない。ヴァンパイア野郎のマントだ。黒い布が、俺を嘲笑うかのようだ。これを丸一日かぶって寝ていたのか!?
俺は急いで、部屋中の鍵を閉めようとする。
ドアの鍵をかけようとして、俺は手を止めた。
なぜ、ヴァンパイア野郎はここに出入りできたんだ?
それに、あいつは俺の覚醒剤まで持っていた。確実に、ここに出入りしている。
自由に、あいつは出入りできるんだ。
恐怖で手が震えた瞬間、ドアが開いた。
白衣の男が入ってくる。
顔には見覚えがある。あのヴァンパイア野郎だった。
***
「中川様、エステサロンより出張サービスに参りました。……よく眠っていたな」
俺は余裕を崩さない。
俺の顔を見ると、中川はうろたえた。俺はかまわず、質問を投げかける。
「白と黒、好きな色はどちらだ?」
「はぁ……!? なに言ってんだ、てめぇ……」
「答えないと、クスリのことを警察に言う」
俺が脅すように言うと、中川は口をつぐんだ。混乱しつつ考えている顔だ。
「……し、白」
答えを聞いて、俺は笑った。白衣の右ポケットから、白いハンカチを取り出す。
中川の目の前で、悠然と麻酔薬をハンカチに染み込ませる。
おそらく、左ポケットの黒いハンカチも使うことになるだろうがな。
「う、うおおおおおッ!」
薬を見た中川が、猛然と俺につかみかかってきた。
俺はそれを避ける。中川の顔に、白いハンカチを押し当てる。
「んうぅ~~~~!!」
中川から、くぐもった悲鳴が上がる。
俺は中川をガッチリと押さえ込む。中川はしばらく暴れていたが、徐々に大人しくなっていく。
「いい子だ」
俺はなにも怖くなかった。
白のハンカチは、どんな相手でも意のままにする、俺の魔法のハンカチだ。
もちろん、黒のハンカチもそうだ。媚薬を染み込ませた、人の本質をえぐり出すハンカチだ。
俺は、なにも怖くなどなかった。
――おわり
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる