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せんせいのくらいひめごと ~ハロウィン・ナイト~

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 十月三十一日。
 俺はサロンの施術室で、中川という男の相手をしていた。

 相手、というのは語弊があるかもしれない。なぜなら中川はすでに麻酔薬入り加湿器のおかげで、意識が朦朧としているからだ。加湿器は、意識を混濁させる霧を吐き出し続けている。

 つまり、中川は俺の術中だ。

「う、あ……」
「お静かに、中川様」

 俺はハンカチを取り出すと、中川の顔に押し当てる。
 中川は軽くうめいたが、すぐに安らかな吐息が聞こえだした。

 中川は容姿端麗な男だ。爽やかそうな雰囲気、優しげな笑顔は、さぞ女に受けるだろう。
 あの笑顔で、俺の妹に近づいたのだろうか。反吐が出る。

 俺には妹がいる。名前はマナという。
 マナに近づく虫は許せない。俺はいつもマナの交際相手に気を使ってきた。
 そう、気を使ってきた。交際相手の男ができると、兄として近づき、拉致して手篭めにしてきた。俺のやり方で、女に興味を失くした男は数しれない。

 福井や平野に使った方法は、マナを守るために確立した俺の技術だ。
 麻酔薬で意識を混濁させ、媚薬で淫蕩な性を引き出す。
 上手くいかなかったことなどない。

「さて……」

 中川が熟睡したのを確かめ、俺は彼のコートに近づいた。ポケットをさぐると、マンションの鍵が出てくる。中川の自宅のものだ。
 俺は鍵を拝借すると、店の裏手に回った。裏手では、福井が控えている。

「福井、頼むぞ」
「はい、先生」

 福井はすぐさま、合鍵を作りに行った。
 福井は俺の忠実なしもべだ。合鍵ができれば、すぐさま中川の部屋を見に行く手はずになっている。何かつかめればいいのだが。

 俺は施術室へと戻る。
 中川の体をチェックし始める。服を軽く脱がせ、体は引き締まっているかを見る。胸筋も腹筋も、鍛えられているな。

 下着をずり下ろすと、中川は勃起していた。サイズは悪くない。男として自信を持っていていい大きさだ。これで女を喜ばせてきたのだろうか。

 忌々しい。

 俺はふと、中川の引き締まった胸筋に手を伸ばした。
 胸元を撫で、色素の淡い乳首にふれる。

「……ん……」

 中川が喉奥で声を出す。眠り出してから、初めての反応だった。勃起しているペニスが、さらにムクムクと立ち上がってくる。

「ほう」

 俺はにやりと笑った。
 どうやら中川は乳首が弱いらしい。乳首をいじりながらだと、中川は面白いように反応する。俺がアナルにふれても、甘い声しか出さない。

「……ん……んぅ……」
「面白くなってきたな」

 俺は中川のアナルをいじりながら、笑った。中川の乳首を、俺の右手の指で刺激する。ついでに左手で、アナルを押し広げる。

「……ん……あ……」

 アナルを軽く拡張されながらも、中川からは甘い声が漏れている。これは淫らな素質がありそうだ。
 いずれ、中川も犯してやる。

「時間か……」

 俺はふたたび、店の裏手に出る。
 中川の部屋の鍵が、俺の指定した場所に置かれている。どうやら福井はうまく鍵をつくって、中川の部屋へ向かったようだ。

 俺のスマホが鳴動する。福井から、中川の部屋を出たとメッセージが入っている。

「よくやった……と」

 俺は福井に褒めるメッセージを送り、鍵を取って、施術室へと戻る。
 中川の衣服を整える。ポケットに鍵を戻す。
 気つけのための匂い紙を用意し、中川の鼻先で揺らした。

「ん、あ……」
「お目覚めですか?」

 俺はおだやかに、中川に笑顔を向ける。今まで彼にしていたことなど、なかったかのように。

「ああ、すみません……寝ちゃってたみたいで」
「いえいえ、よくあることですよ」

 俺の返答に、中川も爽やかに笑う。そのまま何も疑わず、中川は店をあとにした。

 俺が施術室を片付けていると、福井から電話が入った。
 メッセージでは伝えられない内密の話があるときは、電話にしろと言ってある。俺は福井からの報告を聞く。

「……なに?」

 俺はある報告を聞いて、眉をしかめた。
 中川め、とんでもない狼男のようだ。しかも部屋のカレンダーには、「十月三十一日、マナと渋谷」と書かれていたそうではないか。今日だ。このままだと、マナが危ない。

 中川を早く無力化しなければ。
 俺は電話を切り、思案していた。

 ***

 十月三十一日、ハロウィン当日。
 渋谷のクラブハウスで、俺はマナを待っていた。コスプレとして、黒い軍服を選んだ。我ながら決まっていると思う。マントも装備した、かなり手の込んだ衣装だ。

 マナは処女っぽいが、いい女だ。
 今日はこの店でレイプドラッグ入りのカクテルを飲ませたあと、仲間とマワすことにしている。ああ、待ち遠しい。キメセクは癖になるな。

 俺はマナを迎えるために、店の外へ出た。
 ゴミゴミとした雑踏が、コスプレをした連中で溢れている。

 雑踏の遠くに、マナが見えた。
 俺は優しげな笑顔をつくっておく。この笑顔で騙すのも、今日が最後だけどな。ああ、本当に楽しみだ。

 マナへと声をかけようとしたとき、ふいに俺のマントが引っ張られた。

「なんだ?」

 俺が振り返ると、仮面をつけた吸血鬼がいた。もちろんハロウィンのコスプレだ。
 ヴァンパイア姿の男が、青色の柄の入った袋を見せてくる。

「そ、れは……!?」

 袋に見覚えがあった。それは、俺の寝室にあったはずだ。

 ――覚醒剤。

 どうしてここにあるのか。どうしてコスプレ男が持っているのか。
 俺は混乱しながらも、ヴァンパイアの男に詰め寄ろうとした。

 ――バサッ!

 布のひるがえる音とともに、一瞬で視界が真っ暗になる。

「なんだ、くそ……!?」

 柔らかく、黒い布――ヴァンパイア野郎のマントか!?
 そう気づいたのだが、俺は急速に眠気を感じた。抗えない。意識が遠くなっていく。足元がおぼつかなくなり、ヴァンパイア野郎にもたれかかってしまう。

 甘い匂いが、鼻の奥でくすぶる。意識が遠のいて――。
 視界が明るくなる。マントが外されたようだ。ぐらぐらする視界の中、マナが歩いてくるのが見える。

 助けてくれ。
 たすけてくれ。

 俺はすがるようにマナに手を伸ばそうとする。
 するとまた、視界が暗くなった。鼻と口元が、黒い布で強く押さえつけられる。

 マナの笑い声がする。俺に気づいていないのか?
 そこで、俺は眠ってしまった。

 ***

「そうか。よくやった、平野」

 俺は中川を支えながら、電話に応えていた。
 相手は俺のもうひとりのしもべ、平野だ。中川に会いに来たマナを、上手く保護してくれたようだ。マナは中川よりも、平野たちと遊ぶことにしたらしい。

 平野には福井もついている。
 これで安心だ。平野と福井がマナに手を出すことはないからな。

「あとは、こいつか」

 俺は軍服姿の中川を、抱き直す。中川は気を失っている。
 中川はとんでもない男だった。彼の部屋には覚醒剤があった。福井が調べたところによると、悪い仲間も多数いた。どうやら付き合った女性を、クスリを使って輪姦していたようだ。

「さっさと済ませようか」

 中川には、マナをたぶらかした報いを受けさせねばならない。
 俺は中川を連れて、近くのラブホテルへと入っていった。

 ***

「てめぇ! なにしやがった!?」

 ラブホテルの部屋に入るなり、中川が意識を取り戻した。
 知らない部屋――といっても、ラブホテルであることは理解したらしい。中川は部屋を出ようとする。俺は止めようとする。

 俺たちはもみ合いになった。
 ふたたび俺は覚醒剤の袋を見せる。中川の顔色が変わる。

「その袋も……返しやがれ!」

 乱闘中、中川は何度も聞き苦しい罵倒を叫んでいた。
 俺はヴァンパイアのマントをひるがえす。中川の顔に何度もかける。マントには吸引麻酔薬が染み込ませてある。顔にかかれば、徐々に効いてくるはずだ。

「く、そ……!」

 何度かマントをかぶせると、中川はおとなしくなっていく。
 もうひと押しだ。俺は再度、マントを中川の顔にかける。中川の体が崩れ落ち、動かなくなる。
 マントを取り去る。中川は眠っていた。

「はぁ……」

 中川の寝顔を見ながら、俺はため息とともに思い返す。

 俺はマナを守るために、思案をやめて、ほとんど突発的に渋谷に向かった。
 中川ごとき無力化するのは難しくはない。だが、それも俺のハンカチを使った手法が通用してのことだ。周到な準備をしなければいけない。

 だが今回は緊急だった。準備はできていない。

 どうしたものかと、渋谷の真ん中で思案していると、平野から連絡が入る。
 合流すると、平野は荷物を俺に渡してくる。

「先生には、必要だと思って」

 荷物を開けると、いつもの薬と――仮装衣装だった。
 ヴァンパイアのコスプレ衣装だ。黒いマントが付属している。

「そうか……これだ。平野、よくやった」

 俺はすぐに妙案を思いついた。吸血鬼の衣装に着替える。
 あとは先に語ったとおりだ。中川は俺の術中にはまった。

 ***

 眠っている中川を、俺はベッドに寝かせる。軍服を脱がせて床に無造作に放る。
 俺は脱がない。マントも外さず、中川に覆いかぶさる。

 中川の唇に、キスをする。左手で中川の顎をわずかに動かし、唇を開かせる。俺は舌を、中川の口内に滑り込ませる。

「ん、う……」

 中川が喉奥でうめいた。
 俺に舌を絡められ、応えるように舌の根が動く。舌先同士をぶつけると、中川の頬が赤らんだ。丁寧に舐めくすぐってやると、さらに頬が赤くなる。

「ふ……」

 俺は唇を離すと、中川の首筋にキスを落とす。何度も、何度も唇で首筋を吸う。
 左手で中川の胸筋を撫で、右手で丁寧に腹筋をなぞる。右手はさらに下ろし、中川の会陰をくすぐる。中川のペニスがビクリと震える。

「素質があるな」

 俺は低く笑うと、中川の陰嚢を軽く握った。
 その途端、中川のペニスがムクムクと勃起する。

「随分、してほしそうじゃないか」

 俺は中川のペニスを右手で握る。優しく上下にこすってやると、勃起が強まる。
 右手で中川のペニスを固定すると、俺はそちらに顔を近づけた。亀頭に息を吹きかけ、ペニスが震えて悦ぶのを見る。

 俺は口を大きく開けた。
 舌と唇で歯を上手く隠し、中川のペニスを口に含む。吸い上げると、ペニスが嬉しそうに震える。

「ん……あむ……」

 俺が中川のペニスをしゃぶっていると、彼の体がもぞもぞと動き始める。
 どうやら意識を取り戻したらしい。だが朦朧としているようで、抵抗は弱い。

「なん……だ……?」

 中川は、俺が与えている股間の快感に、視線を向けてくる。
 そして、「信じられない」という表情をした。そうだろう。いきなり男にペニスをしゃぶられている光景が見えたのだからな。

「てめ……! なに、して、やがる……!」
「ふふ……なに、親睦を深めようと思ってね」

 中川はとぎれとぎれに言葉を吐き出す。
 俺は穏やかに笑って、言った。

「なにせ、大切な者の交際相手だ。存分にイかせてあげよう」
「やめ、やがれ……!」

 中川は口では拒絶した。
 だが俺が再度ペニスを吸ってやると、中川は腰を突き出してよがった。体は、与えられる快楽に従順なようだ。弱々しい抵抗の言葉が出る。

「やめ……あっ、う、やめろぉ……!」
「大丈夫だ、イくといい」

 俺は手でペニスの裏筋を愛撫する。同時に亀頭を舐め回し、吸い上げる。
 中川が息をつまらせ、腰をブルリと震わせた。ペニスから精液が飛ぶ。
 俺は口を離し、ペニスから白濁とした液体が飛ぶのを楽しげに見つめる。

「うあ……! あ……!」
「男にイかされる気分はどうかな?」

 俺の質問に、中川は睨むように目を向けた。だが赤く染まった目元は、快楽に抗えない彼の素質を示していた。

「く、そぉ……!」

 中川は起き上がって俺につかみかかろうとした。
 だが俺の方が早い。素早くマントを中川の口元にかける。鼻と口を覆い、押さえる。
 中川が再び意識を混濁させる。目を何度も瞬かせる。眠りそうになる直前で、俺はマントを取り去った。

「う、あ……あ……」
「ふふ、大丈夫だ。もっとよくしてやろう」

 俺は立ち上がり、ズボンをずり下げて自分の股間を見せつける。すでに俺自身のペニスも勃起している。
 中川は俺の股間を見ると、恐怖と嫌悪と――期待のこもった目で俺を見た。彼の淫らな本質が、視線となってあらわれていた。

「大丈夫だ、気持ちよくなるとも」

 俺は穏やかに声をかけて、中川に覆いかぶさった。
 中川の鼻先にキスを落とし、首筋を舐めながら、アナルを指でほぐしてやる。前立腺を刺激しながら、乳首を吸ってやる。

「や、やめ……! あ、ああ……!」

 中川の乳首を吸うと、彼は嬉しそうに喘いだ。乳首の弱さがハッキリとわかる。
 俺は何度も、中川の乳首を舌先で転がしてやる。その度に中川は反応し、アナルも柔らかくほぐれていく。

「う、あ……! あ、あう……!」

 乳首と前立腺を、同時に責めてやる。どちらもコリコリと固くなっていく。
 中川は背筋を反らして、ペニスを無様に震わせる。

「さて」

 俺は自分のペニスを、中川のアナルにあてがった。
 中川は恐ろしげに俺を見上げたが、抗えない快楽に精神が染まっているのがわかる。

「大丈夫だとも。力を抜いて」

 俺は優しくキスをしながら、ゆっくりとペニスを挿入した。

「うあ……! あっ、あっ……!」

 中川の内部が、俺のペニスを締め付けてくる。
 俺は内部の感触を楽しみながら、ペニスで中川の前立腺を押し上げてやる。

「んあ……! あう……!」

 中川の腹筋が、ビクビクと震える。ペニスが震えて、先走りの汁を飛ばす。透明な液体が、中川の腹に垂れていく。

「や、やめ……やめて……!」

 中川の口から、弱々しい拒絶が出る。
 だが体は快楽を望んでいる。俺にはありありとわかった。

 俺は中川の乳首に吸い付いた。
 途端に、中川の内部がキュウッと締まった。本当に、乳首が弱いな。
 舌で丁寧に乳首を包んでやる。吸い上げ、転がし、はじく。

「あ、あ、うあ……イく、イくぅ……!」

 中川はあっという間に絶頂した。ペニスから精液が飛ぶ。ビュルッと粘っこい汁が飛び出し、中川の腹筋を汚した。
 だが俺はまだ満足しない。俺はゆっくりとピストンする。

「まだだ」

 俺は中川を突き上げながら、右手で中川の左乳首を愛撫する。つまみ、転がし、こすりあげる。そして右乳首にキスをする。

「ああ……! やめろ……! やめて……!」
「好きだろう? 乳首をこうされるのが」

 俺はわずかに笑い、さらに乳首を舐めながら、中川の内部を責める。アナルは柔らかくほぐれつつ、キツく締め上げてくる。

「さぁ、いい子だ」

 俺は指先で中川の乳首を愛撫しながら、中川にキスをした。優しく、まるで恋人のように。
 中川がまた射精する。腰が震え、アナルがびくびくと痙攣する。

「またイったのか」
「あう……! あ……! あ……!」

 俺は嗜虐的な笑みを浮かべながら、中川の乳首を強くつまむ。指に力を入れて、ぎゅうっと乳首を潰してやる。

「んおおっ!」

 中川はあられもない声を上げて、仰け反った。舌先が口から飛び出す。
 俺はそれを見逃さない。素早くキスで口を塞ぎ、舌を絡める。挿入したペニスの動きを早めてやると、中川はイった。

「ぷあ……! イ、イく……!」

 絶頂する中川の乳首を、指先でコロコロと転がしてやる。
 それだけで、中川のペニスは何度も何度も、精液を吐き出す。

「あ、あ……! イく……! またイくぅ……!」

 中川はまるで失禁したように、精液をダラダラと垂らし続ける。
 頃合いだ。俺はそう思い、そばに置いてある服に手をのばす。

「さて」

 俺は服の中から、黒いハンカチを取り出した。
 中川を見ると、気絶していた。俺とつながったまま、全身がビクビクと痙攣している。引き締まった腹筋には、彼自身の精液がベットリとかかっていた。

「困った人だ」

 俺は黒いハンカチの中から、匂い紙を取り出す。麻酔薬で意識の混濁した者を起こすための紙だ。刺激臭がするようになっている。
 匂い紙を、中川の鼻先で揺らす。

「う、あ……?」

 中川が意識を取り戻す。焦点の合わない視線を、俺に向けてくる。
 俺は、ゆっくりと黒いハンカチを中川の鼻先に押し当てる。

「ん、んん……」

 中川は一瞬息を止めたが、俺はハンカチを取り去らない。
 すぐに折れた中川は、黒いハンカチをされたまま息を吸う。頬が赤くなってくる。目元が蕩けてくる。

「どうかな、媚薬入りハンカチの香りは?」
「む、むう……」
「この薬を使えば、もっともっと気持ちよくなれる」

 そう告げると、中川の喉が鳴った。固唾を飲み込んだようだ。快楽への期待が、彼の中で膨らんだのがわかった。

「覚醒剤よりもずっとずっといいぞ?」
「んむ……む……」

 黒いハンカチの媚薬を吸わせつつ、俺はまた中川の乳首を指先で転がす。
 中川の背筋が仰け反る。ペニスが反り返り、何度目かわからない射精をする。

「んぐ……! んう……!」
「どうだ? 俺に従うなら、もっともっとイかせてやろう」

 俺は中川の乳首から手を離す。
 黒いハンカチを中川の顔にかぶせたまま、俺は中川の頬を優しく撫でてやった。
 中川の蕩けた目元が、俺を見上げてくる。

「大丈夫、俺に従うならクスリのことは誰にも言わない」

 俺は優しく、そう告げた。まるで恋人に愛を囁くかのように。

「それどころか、もっともっと気持ちよくしてやるとも」

 俺は中川の腹筋をツツゥッとなぞる。ペニスを、そっと握ってやる。
 中川がビクッと震える。

「俺のものになるなら、うなずけ」

 優しい口調で命令する。
 中川の蕩けた目元が、一瞬迷いを見せる。

「いい子だから」

 俺は指先で、中川の乳首を軽くはじいた。
 中川が仰け反る。彼の乳首はもはや、ペニスにも匹敵する敏感な性感帯となっていた。

「んうっ!」
「ほら、我慢できないだろう?」

 俺は小刻みに、中川の内部にある自分のペニスを揺らす。
 乳首を責めながら、前立腺をコチュコチュと押し上げてやる。

「天国にイきたいだろう? ……うなずけ」

 俺の言葉に、中川の中でなにかが折れる音がした。
 中川がゆっくり、確実にうなずく。

「ん、う……」
「そう、いい子だ」

 俺は一気に、腰をグラインドさせる。
 中川が目を見開き、黒いハンカチを噛んだ。ペニスが強く勃起する。

「さぁ、イかせてあげよう」

 俺は中川の乳首をギュッとつまんだ。中川が激しく仰け反る。
 俺は体を前に倒し、仰け反る中川を押さえ込む。彼の乳首を口に含み、強く吸い上げる。

「んっ! んっ! んっ!」

 ハンカチを噛み締めている中川の乳首を、甘噛みしてやる。

「んっ! んう~~~~!!」

 中川は絶頂した。激しく精液を吐き出す。両脚を広げ、俺に腰を押し付けるように痙攣する。ハンカチの匂いを強く吸い込む。黒いハンカチに、彼の鼻の形がくっきりと浮かぶ。

「もっとだ。もっともっと、イかせてあげるとも」

 俺は獰猛に笑いながら、中川を責め立てる。
 これでマナの身は安全になるだろう。そう確信しながら、俺は中川を抱き続けた。

 ***

 俺はぼうっと目を開ける。視界が暗い。ブランケットにくるまっているのか。
 最悪な夢を見ていたようだ。まだ眠い。俺はブランケットを手で押さえて、顔に押し付ける。眠い。ねむい……。

 だが、腰がズキリと傷んで、寝ていられない。
 俺は背中を押さえようとして、そこで自分の格好に気づく。軍服を着ている。

 スマホを見る。時間は、十一月一日の二〇時。
 どういう、ことだ? なぜ俺は軍服のまま寝ていたんだ?
 眠気が吹き飛び、目が冴える。

 混乱しながら、よく思い返す。
 クラブハウスの前で、ヴァンパイア野郎にやられたこと。ホテルに連れ込まれ、犯されたこと。最後の記憶は――。

 最後の記憶は、自宅に連れてこられ、ヴァンパイア野郎が。
 ヴァンパイア野郎が、俺の顔にマントをかぶせてきた。そこまでの記憶がある。

 俺は青ざめた。部屋を見回す。
 寝室の机には、ヴァンパイアの衣装と仮面がある。

「はっ!?」

 俺は飛び起きて、ブランケットを取り払った。
 いや、ブランケットじゃない。ヴァンパイア野郎のマントだ。黒い布が、俺を嘲笑うかのようだ。これを丸一日かぶって寝ていたのか!?

 俺は急いで、部屋中の鍵を閉めようとする。
 ドアの鍵をかけようとして、俺は手を止めた。
 なぜ、ヴァンパイア野郎はここに出入りできたんだ?
 それに、あいつは俺の覚醒剤まで持っていた。確実に、ここに出入りしている。

 自由に、あいつは出入りできるんだ。
 恐怖で手が震えた瞬間、ドアが開いた。

 白衣の男が入ってくる。
 顔には見覚えがある。あのヴァンパイア野郎だった。

 ***

「中川様、エステサロンより出張サービスに参りました。……よく眠っていたな」

 俺は余裕を崩さない。
 俺の顔を見ると、中川はうろたえた。俺はかまわず、質問を投げかける。

「白と黒、好きな色はどちらだ?」
「はぁ……!? なに言ってんだ、てめぇ……」
「答えないと、クスリのことを警察に言う」

 俺が脅すように言うと、中川は口をつぐんだ。混乱しつつ考えている顔だ。

「……し、白」

 答えを聞いて、俺は笑った。白衣の右ポケットから、白いハンカチを取り出す。
 中川の目の前で、悠然と麻酔薬をハンカチに染み込ませる。

 おそらく、左ポケットの黒いハンカチも使うことになるだろうがな。

「う、うおおおおおッ!」

 薬を見た中川が、猛然と俺につかみかかってきた。
 俺はそれを避ける。中川の顔に、白いハンカチを押し当てる。

「んうぅ~~~~!!」

 中川から、くぐもった悲鳴が上がる。
 俺は中川をガッチリと押さえ込む。中川はしばらく暴れていたが、徐々に大人しくなっていく。

「いい子だ」

 俺はなにも怖くなかった。

 白のハンカチは、どんな相手でも意のままにする、俺の魔法のハンカチだ。
 もちろん、黒のハンカチもそうだ。媚薬を染み込ませた、人の本質をえぐり出すハンカチだ。

 俺は、なにも怖くなどなかった。


 ――おわり 
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