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せんせいのくらいひめごと、つづき ~まじりあう思惑~

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 初めての客が、サロンに来た。男の客だ。

「こちら、アンケートになります」

 客が初めてうちのサロンを利用するときには、アンケートを渡している。
 アンケートの記名が見えた。男の名は、平野というらしい。

 平野……そうか、俺はこの男を知っている。あの福井の友人だ。近くで見ると、福井とはまた雰囲気の違う色男だな。クールな印象がある。

 平野がアンケートを記入しているうちに、スタッフがウェルカムドリンクを運んできた気配がする。スタッフがバックヤードから出る前に、俺がドリンクを受け取る。

 ドリンクに、睡眠導入剤を入れる。
 もちろん、スタッフにも平野にも気付かれないように、だ。このぐらいはたやすい。

「どうぞ、ウェルカムドリンクです」

 俺は穏やかに笑い、ドリンクを平野に差し出した。
 しかし、平野は飲もうとしない。こわばった面持ちで、グラスを睨んでいる。
 俺は思わず声をかけた。

「どうされました?」
「ああ、すみません。外では飲食しないことにしてまして」

 平野の声色が硬い。緊張しているのか?
 いや――警戒している。俺には感じ取れた。

 もしや、福井のことで何か探りに来たのだろうか……。
 それなら、こちらもやることは決まっている。

「そうでしたか、失礼しました。……では平野様、施術室へどうぞ」

 平野を施術室へ導く。俺は白衣を羽織る。棚からいつもの薬品をポケットにしまう。
 そう、いつもの睡眠薬たちだ。俺の武器だ。
 これさえあれば、俺は誰でも望み通りにできるのだ。

 ***

 福井の様子がおかしい、と相談された。

 俺に相談してきたのは、福井の彼女だ。
 海外への長期出張のあと、福井は頻繁にどこかへ出かけてしまうのだという。一緒にいられないのは寂しい、と福井の彼女は訴えていた。

 福井の行動を調べているうちに、俺はとあるサロンへとたどり着いた。福井は頻繁に、このサロンへ通っているらしい。

 怪しい。なにかあるのでは。
 俺はそう考えて、単身、サロンへと乗り込むことにした。

 予約をした日が来た。俺はサロンを訪ねる。
 アンケート用紙が差し出される。施術の参考にするのだという。

 アンケートを書いているうちに、ウェルカムドリンクが出された。
 だが口はつけないようにする。理由は適当に考えた。もし妙なものでも入れられていたら、俺の身が危ない。

 秘密を暴くことも大事だが、俺の身の安全も保たなくては。
 俺はひたすら警戒した。

「では平野様、施術室へどうぞ」

 サロンスタッフの男が、俺を導く。
 彼はここのリーダーらしい。周囲からは「先生」と呼ばれている。優しげに見えるが、笑顔が胡散臭く見えてくる。

 俺は着替えて、施術台に横たわる。
 普通のエステサロンにあるような台だ。拘束具の類はなさそうだ。
 頭を乗せたのは、柔らかい枕。そこからは、甘い香りがする。洗剤の香りだろうか。
 施術台のすぐ隣には、加湿器がある。加湿器は稼働しており、常に甘い香りを帯びた霧を放っている。アロマオイルであればいいのだが。

 先生がマスクをして、やってきた。
 俺は気付かれないように、先生を観察する。すると、彼の手に小瓶があるのが見えた。先生はハンカチのような布地と一緒に、小瓶をポケットへとしまう。

「それでは、始めましょうか」

 先生が施術の開始を告げてくる。
 俺は一層警戒した。あの小瓶は、麻酔薬かなにかの一種ではないか。俺を眠らせるつもりではないか。何かされるのではないか。

「それでは背中のマッサージからです。うつぶせでどうぞ」

 俺は言われるまま、従った。ここで指摘しても、シラを切られればそれまでだ。
 せめて、気を張ってスキを見せないようにしよう。

 うつぶせになった俺の背中に、先生がマッサージを施す。丁寧な手付きだ。
 ああ、甘い香りがする。枕の匂いだ。それを嗅いでいるうちに、徐々に頭の中がふわふわとしてくる。気のせいか。

 いや、気のせいじゃない。
 意識はどんどん浮き沈みが激しくなってくる。起きていようとしても、抗えないほどの眠気が襲ってくる。心地が良くて、意識を手放してしまいそうになる。
 あんなにも気を張っていたのに、どうしたことだ。

「いい匂いでしょう。お客様のためにご用意した吸引麻酔薬です」

 先生が俺に語りかける。
 なにをいっているか、りかい、できない。

 先生がいきなり、俺の髪をつかんだ。顔を施術台からずらされ、強制的に加湿器のミストを浴びせられる。冷たいような温かいような、甘い湿気が顔中にかかる。

「うぁ……!」

 俺は声を出してもがこうとした。
 だが体が、動かない。頭の中で警鐘が鳴る。危ない。これはまずい。

 俺の視界に白いモヤがかかる。ミストか、それとも意識の遠のきか。
 俺はもう抗うことができなかった。

 ***

「…………はっ」

 俺は目を覚ました。
 平野の背中に覆いかぶさり、眠っていたようだ。
 腕時計を確認する。時間はさほど経っていない。俺は加湿器を止めると、窓を開けた。外の空気が入ってきて、俺の意識をはっきりとさせてくれる。

 危なかった――俺は充分に換気をすると、マスクを外した。
 外の空気を大きく吸い込む。意識が完全に覚醒する。

「枕と加湿器にも仕込んでいたが……」

 加湿器に仕込んだ吸引麻酔薬が、思ったよりも強く効いたらしい。まさか自分も眠ってしまうとは。危ないところだった。この方法には改善の余地があるだろう。

 平野はまだ眠っている。それは幸いだった。
 この男が俺を探りに来たのは明白だ。俺が福井にしたことを暴きに来たのだろう。

さて、どうしたものだろうか。

「先生」

 施術室の外から、スタッフが声をかけてくる。しかし異変に気づいたわけではない。

「どうしました?」
「福井様がいらっしゃいました」
「ああ……」

 そういえば予約の時間だったか。
 俺の頭の中に、作戦が浮かんでくる。福井を使って、平野を愉しませる作戦だ。

 俺は平野にブランケットをかけた。
 同時に、白いハンカチを取り出して平野の顔に押し当てる。ハンカチには吸引麻酔薬を染み込ませてある。もう少し、眠っていろ。

「ん……」

 そのとき、平野が反応した。わずかに目を開けて、首を小さく振る。手が弱々しく上がり、俺の白衣の裾をつかんだ。
 抵抗か。だがすぐ平野は意識を失う。

 俺は平野の手を、そっと裾から外した。ハンカチも取り去ってポケットに入れる。
 施術室から顔を出す。スタッフが声をかけてくる。

「先生、そちらのお客様は?」
「施術で寝てしまったようですね。まだお時間がありますので、眠らせてあげましょう」

 俺はスタッフに指示し、福井をVIPルームへと案内させる。
 こちらの施術室の窓を閉め、鍵をかける。VIPルームへ向かう。

「なにせ、VIPのほうが重要なので」

 VIPルームに入ると、福井が背中を向けている。いま入室したばかりなのだろう。
 俺は口元に笑みが浮かぶのを感じていた。

「福井様」

 俺は白いハンカチを取り出すと、福井に襲いかかった。

 ***

「う、ん……」

 俺は目を覚ました。
 頭がひどくグラついたが、何度か深呼吸するとそれも治まってくる。俺を眠らせた加湿器は止まっており、窓も閉まっている。

 施術室には誰もいない。先生もいない。
 あの先生とかいう男、俺に睡眠薬を嗅がせやがった! とんでもない男だ。

「だ……」

 誰か、と言いかけて俺はやめた。
 先生はこのサロンのリーダーだ。ならばスタッフも俺の敵かもしれない。集団でかかってこられたら、いよいよ俺の身も危ない。

 俺は身なりを整える。幸い、俺のもともとの衣服はそばにあった。誰か入ってこないように警戒しつつ、着替える。あせってシャツのボタンを止めるのにも苦労した。

 裏口からこっそり逃げよう。
施術室から出て、奥の施術室の前を通れば、出られるはずだ。

 俺は施術室の扉を開ける。誰もいない。気配も確かめて、そっと飛び出す。
 奥へ、店の奥へ。裏口はその先だ。

「……?」

 途中、黒い扉の部屋の前を通る。
 異様な雰囲気がある。中から人の気配がする。

 もしかしたら、このサロンの秘密があるのかもしれない。
 そう考えた俺は、黒い扉に手をかけた。鍵はかかっていない。中が見える。

「な……!?」

 中を見て、俺は絶句した。
 その部屋も施術室のようだ。高級そうな内装に、黒い布のかかった施術台。施術台の上には――。

「ん……ん……」

 全裸の男が、拘束されている。手足をベルトで縛られた男は、絶えず甘い声を上げている。だがその声が意味をなすことはない。猿轡をされているのだ。

 全裸の男は目隠しをされていたが、誰なのかを俺は直感した。福井だ。

「んぅ……んっ、んっ」

 福井の喉から、甘いうめき声が上がる。
 彼のアナルには、ディルドが挿入されていた。電動音が鈍く響く。

「ん……んふ……んぅ……ふっ、ふっ……」

 福井の腰がゆっくりと前後に揺れている。ディルドが与える快楽をみずから貪っている。
 荒い吐息が、福井の鼻から抜けていく。彼は勃起していた。アナルからの刺激に反応し、まるでメスのように吐息を漏らしながら。

「んく……ふぅ~……ふぅ~……」

 福井のペニスが、ビクビクと震える。アナルの収縮に合わせて、プルプルと無様に揺れる。

「んくっ……んっ!」

 福井がビクンッと大きく震えた。
 ペニスが突っ張って、精液を飛び散らせる。イったらしい。黒いベッドに射精する。ペニスは何度か強く精液を吐いた。そして止まらないアナルへの刺激から、またプルプルと震える。

「あ、あ……!」

 呆然としていた俺は、我に返った。
 福井を助けなければならない。俺は動いていた。その高級そうな施術室に入り、福井に近寄る。

「福井……!?」

 俺は声をかける。
 だが福井は聞こえていないように、強く猿轡を噛み締めた。口の端から、唾液がこぼれる。

 ああ、なんて無様な――。

「目が覚めたか」

 男の声がした。俺はハッとして身をこわばらせる。
 背後から、誰かが組み付いてくる。口に布地が当たる。黒っぽいハンカチだ。

 俺は組み付いてきた男を振り払おうと、もがく。だが相手の方が強い。しばらく抵抗していたが、だんだん体に力が入らなくなってくる。眠いというより、気だるい。そして体が熱くなってくる。

 ついに、俺は抵抗できなくなった。男の腕の中で、脱力してしまう。
 男がハンカチを取り去り、俺を抱きとめた。俺を抱えあげる。

「ああ、なかなか落ちないと思ったら……間違えて黒いハンカチを使ってしまった。まあ、いいか」

 男は――先生だ。
 先生は俺を、平野の隣にある施術台へと横たえる。
 平野はまだディルドを挿入されたまま、甘い声を出してよがっている。

「せっかくサロンに来たわけだし、あんたも気持ちよくなっていけばいい。福井が後ろだから……あんたは前だな」

 先生の目元が歪む。笑ったようだ。
 そこには先程の柔和さはない。獰猛な獣が、弱々しい獲物を見つけたときの目だ。

 先生が取り出したのは、ローションと長い金属製の棒だった。金属製の棒は、30センチほどの長さの細いものだ。

「見るのは初めてか? これは尿道ブジーというやつだ」
「尿……道……ブジー?」

 俺は聞き返した。
 聞き慣れない単語に、俺はひたすら身の危険を感じる。だが体が満足に動かない。ほてりがどんどん高まってくる。

「本来は尿道の疾患に使う医療器具だが。あんたのその勃起したペニスに、挿入してやろう」

 そう言われて、俺は初めて自分のペニスが勃起していることに気づいた。ズボンの中、下着の奥で、強く突っ張っている。
 なぜだ。なぜこのシチュエーションで、俺は勃起なんかしているんだ。

「くく、まぁせいぜい楽しむといい」

 俺の混乱をよそに、先生は笑った。
 先生が、俺の服に手をかけた。腰のベルトを抜く。ズボンをずり下ろし、足首に引っ掛ける。下着はパンパンにテントを張っている。

「や、やめ……ろ……!」

 俺は抵抗した。だが力は入らない。腕も満足に動かせない。
 先生が、下着の上から俺のペニスを握る。

「うあ……っ!」

 強い快感が、頭を貫く。俺は思わず声を上げていた。
 先生は俺のペニスから手を離すと、下着もずり下ろした。
ペニスがブルッと大きく跳ね上がり、外気に晒される。完全に勃起しており、鈴口には先走りの汁がにじんでいる。

「痛くはしないから、安心するといい」

 先生はそう言うと、医療用のビニール手袋をつける。そして、尿道ブジーにローションをかける。
 ドロドロに濡れた尿道ブジーを見せつけながら、先生はまた俺のペニスを握った。ビニールのなめらかな感触が、俺の勃起したペニスを刺激する。

「う、うう……!」
「せいぜい、楽しめ」

 先生は俺のペニスを握ったまま、鈴口を親指で刺激する。強い快感が腰の内に広がり、俺は思わずビクビクと震えてしまう。

「くく、感じているな。素質があるんじゃないか?」

 先生は愉快そうに笑い、尿道ブジーを俺の尿道口に当てた。

「ま、まさか……! や、やめ……やめてくれ……!」
「最初は、ゆっくり行こうか」

 尿道ブジーが、俺の尿道口に挿入されていく。ゆっくり、確実に。
経験したことのない快感が、俺の脳天を直撃する。

「うあ……っ! あっ……!」
「ほら、どんどん入っていくぞ?」

 ローションで濡れた尿道ブジーが、俺の尿道を拡げる。尿道の奥へと入っていく。尿道ブジーがより深く潜っていくごとに、粘膜をこする音が聞こえる気が俺にはした。

「ふむ、ここまでか」

 先生が手を止める。どうやら尿道の最奥に届いたらしい。ペニスにはジンジンと快感が走り続けている。
 先生は静かだが楽しげな口調で、俺に告げる。

「では、引き抜こうか」
「え……!?」

 理解する前に、尿道ブジーがゆっくりと引き抜かれていく。

「お、おお……!?」

 俺は無様に声を上げた。下腹部の中身がすべて溶けて、引き抜かれていくような感覚だ。とろけるような快感が、全身に広がる。

 先生は尿道ブジーがもう少しで抜ける、というところで手を止める。そしてまた、尿道ブジーを深くまで押し込む。

「あ……! あ……!」

 俺は腰を浮かせながら、快感に翻弄されるしかない。
 先生の手で、俺は尿道の快感を開かれてしまう。

「ふむ、イけるようになるまで退屈だな。少し話をしてやろう」

 先生が冷めた声で語り始める。

「あんたの友人、福井は……俺に屈した」

 俺の隣でよがっている福井の話だ。

「もともと、福井は俺の彼女を奪った男だ。だから復讐しようと思った」

 福井の彼女は、先生の恋人だった? 初耳だ。

「まぬけにも、福井はこのサロンに来てくれた。俺は手持ちの薬を駆使し、福井を犯すことに成功した」

 先生が、福井を犯した。
 俺は怒りを覚えた。だが同時に、俺のペニスに挿入された尿道ブジーがぐるりと回される。俺は強い快楽に貫かれ、ひたすら腰を震わせた。怒りが快楽に溶けて、消えてしまう。

「そのあとは調教を施した。幸い、堕ちるのは早かったよ。洗脳も上手く行った。それで時々、このサロンに通わせて愉しませていたんだ」

 ことの真相が、先生の口から紡がれる。
 もちろん、話すあいだも彼の手は止まらない。俺のペニスを尿道ブジーで貫き、快感を与え続けてくる。

「福井はもう女も抱けない体だ。俺なしでは勃起もできず、イくこともない。こんなに無様に射精させられても……俺なしでは生きられないそうだぞ」

 愉快そうに、先生が笑っている。
 俺は顔を背けた。隣の施術台にいる、福井が目に入る。
 福井がまた大きく震えた。彼のペニスから、うっすらと白い精液が吐き出される。無様に、尊厳もなく、心底嬉しそうに。

「平野、あんたにも教えてやろう」

 先生は小刻みに、尿道ブジーを上下させた。

「あ、う、あ……!」

 強い快感が、風船のように膨らむ。それは弾けそうで弾けない。
 尿道ブジーが、射精を邪魔している。永遠に快感から解放されない。そんな気がしてくる。

「くく……出したそうだな?」

 先生は、意地の悪い笑みを浮かべる。
 ペニスが絶頂に近づいている。確かだ。尿道ブジーでふさがれた尿道には、さっきから先走りの汁があふれている。

「男の手で絶頂する快楽を、お前も知るといい」

 先生が、尿道ブジーをグッと握る。一気に尿道ブジーをペニスから引き抜いた。

「ああ……ッ!?」

 今まで感じたことのない開放感。俺の中で膨らんでいた風船が、乱暴に弾ける。

「ひ……! イ、イく……ッ!」

 射精する。金属で冷やされた尿道に、熱い精液が流れてほとばしる。ペニスが、焼けるように熱い。何度も精液を吐き出す。

 ――気持ちいい。
 ――すごく、きもちいい。

 俺は下半身がとろけるような感覚に陥る。その感覚は脳髄にも広がり、俺の意識を溶かしていく。目の前にチカチカと火花が散るようだ。

「まだ終わりじゃないぞ」

 先生が、暴れる俺のペニスを握る。また尿道ブジーを挿入する。

「ひぁ……! や、やめ……!」

 絶頂したばかりのペニスに、さらに強い快感が加えられる。
 先生はまたゆっくりと尿道ブジーを押し入れる。限界まで挿入すると、かき混ぜるように尿道ブジーで小さく円を描く。

「う、あ……っ! あっ……! そ、それ……!」
「尿道がまんべんなく刺激されて、気持ちがいいだろう?」

 先生に言われて、俺は感じている自分を認識した。
 どうしてこんなに感じているのか。理解できない。理解を脳が拒否する。だが快楽は現実のものだ。意識をそらすことはできない。

「どこが一番感じるか、調べてやろう」

 先生が、尿道ブジーでペニスを内部から刺激する。
 俺は無様に腰を痙攣させる。ある一点を突かれたとき、腰がビクンッと大きく震えた。

「ここか」

 先生の口元が吊り上がる。
 先生は、しつこくペニス内部の一点を刺激する。

「あっ……! ああっ! ぅあっ……!」

 俺は敏感な一点を何度も押され、ひたすら喘いだ。抵抗できない。ペニスからの快感に、すべてが支配されるようだ。

「う、あ……イ、イく……! またイく……!」

 急速に快感が高まる。射精はない。しかし俺は絶頂した。
 尿道への刺激だけで、俺はイってしまった。腰が震え、口の端から唾液がこぼれる。

「ほう、尿道だけでイケるようになったか」

 先生が興味深そうにつぶやく。楽しげな様子は、まるでマッドサイエンティストのようでさえある。怖ろしさを感じさせる。

「なら、もう遠慮はいらないな?」

 先生の言葉が理解できない。だが俺の頭が警鐘を鳴らす。
 俺は涙目で、先生を見る。

「も、もう、やめて……!」
「やめないとも」

 先生の声が、俺の言葉を冷たくはねつける。哀願は聞き入れられなかった。

 先生は尿道ブジーをピストンさせはじめた。無遠慮に、素早く。そして時折、内部をかき混ぜるように回転させる。

「やめっ! あっ! ああっ!」

加えて、ペニスを手でしごく。内部と外部から、ペニスが刺激される。

「うあっ! あっ! ああっ! ああっ!」

 俺は喘いだ。メスのような声が、喉から転がり出てくる。
 腰は完全に砕けている。内臓がとろけて、すべてなくなってしまいそうだ。

「イ、イくっ! また、またイくぅ……!」

 俺の脳髄を、雷のように快楽が貫く。何度も何度も、イかされる。絶頂の間隔が短くなっていく。俺はもう快楽の虜になりつつあった。

「イ、くぅ……!!」

 何度目かの絶頂。
 ついに俺は、意識を保っていられなくなった。

 ***

 どれくらい時間が経っただろう。
 俺はまた意識を取り戻した。ここはどこだ。小刻みに揺れる感覚と、独特の匂いが俺の意識を現実に引き戻す。

 周囲はあまり明るくない。風景が流れるように、視界から去っていく。
 俺は車の中にいた。助手席に座っている。身なりは整っている。無様に脱がされた様子もない。

 記憶が混乱する。
 俺は福井のことを調べていた。だがたどりついたサロンで、俺は無様な性的調教を受けて、何度も絶頂した。そして意識を失った。

――ああ、どういうことだ。そんなことあるわけない。

「夢……?」
「夢じゃない」

 俺がつぶやくと、即座にそれを打ち消す言葉が浴びせられる。
 初めて俺は、運転席を見た。先生が座っている。
先生は運転しながら、俺の口元に手を伸ばす。白いハンカチを持った手だ。俺の口元を覆う。

「う……!?」

 俺が何事かと身構える前に、ハンカチから甘い匂いがする。
 この匂いは……サロンで嗅いだのと同じ匂いだ。俺の意識が、急速にグラついてくる。

 それでも俺は、なんとか車内の様子を見回す。
 後部座席には、男が横たわっている。街灯の明かりが、車内を流れていく。赤っぽい光が照らすその顔は、福井だ。眠っている。身なりは普通の衣服に戻っている。

「ふく……い……」

 俺の視野は、もう狭まっている。眠い。心地のよい眠気が、俺の意識を闇へといざなう。

「福井、楽しみだな。平野が仲間になるぞ」

 先生の口調は楽しげだった。
 車の走行音が、どんどん遠く離れていく。俺は眠ろうとしている。抗えない。

 抗えないんだ。

「もう少し眠っていろ」

 先生の声だけが、やけに近く聞こえた。
 俺は意識を失った。


 ――おわり
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