4 / 8
好奇心
私の話、聞いてって。
しおりを挟む
店内は静まり返っていた。そこに3人も人がいるとは思えないほどに。
「あなたの過去話でもしてみてはいかがです?」
店員がOLに提案する。確かに仕事を上がってるわけだし時間なら余裕にあるはずだ。俺も何故ここにいるのか知りたかったし、ちょうどいい機会だなと思い身を乗り出した。
「そうね、5年くらい前かしら。」
OLは静かに語りだした。その話は今のOLからは想像もつかないような不思議な感覚にかられる話だった。
~5年前~
新入社員という肩書もやっと薄れてきた頃のこと。
時間をかけて温めていた企画が納得の行くものになったから上司の出してみたの。
するとあれやこれやと文句をつけられた。
文章に全て書かれているのにもかかわらず、ね。
もう頭に来て。かっとなって書類を突きつけながら一つ一つ説明してやった。するとね、そのときはすんなりと受理されたの。私思い上がっちゃったわ。
そこから4,5ヶ月後のこと。
さっきの企画がいい感じに続いて会社の経営の手助けになった気がしていた私は調子に乗って新しい企画を立ち上げていたの。私の中では完璧な企画だった。部下の子もすごく褒めてくれたの。それで前と同じ上司に提出したの。ぐうの音も出ないでしょっていうくらいの顔で。
すると上司は笑顔でこういった。
「思い上がるな」
その言葉は私の心を打ち砕いた。企画を成功させたという自信とブランドを背負ってここまで来たのに、全てを否定された。
まだ辞めてないのよ。その会社。ずっといるんだけどね、上司は変わらないし私を見る目もその時と変わらない。見下すような冷たい目。
それから私は早く上がるようになった。今みたいな時間にね。そして度々ここに来るようになったの。
ここを見つけたのはそうね、あなたと同じ偶然。
家までの帰り道をどうしても短くしたくて路地に踏み入って地図を片手に近道を探したの。すると地図にない建物があってね。
ふと顔を上げたんだけどそのときに強い風が吹いてね。あまりにも強いものだったから思わず目を瞑ってしまったわ。それでね、また目を開けたらさっきまであったかはわからないけどここにたどり着いたの。
[量産型幸福販売所]
そんな看板を見たとき、私のための店だ、って思っちゃったの。自惚れやすい性格なのよねきっと。
すぐに駆け込んだわ。幸福を売っているってどういうことだってね。
その奥に彼女がいたの。優しいおっとりとした声で
「いらっしゃいませ」
って。
すごいボロさに後から気がついたわ。
しかも幸福っていくらで買えるのかもわかんないし。
少ししてから店の中に並ぶ小瓶に目を走らせていた。刺すような黒いものもあれば、包むように優しい色の緑だったり。何が幸福なのかはわからなかったけれどすごく心惹かれたわ。
「何をお探しでしょう」
突然話しかけられた。さっきまでいるって思ってた彼女を忘れるくらい見入ってたみたいでね。すごいびっくりしたの。でも何を買ったらいいとかわかんなかったから全部彼女に話したの。すると立ち上がって澄んだ空みたいな青い紙が入った小瓶を持って戻ってきた。
「そうでしたらこちらはいかがでしょう」
色以外に違いなんてわからない私はじゃあそれで、としか言いようがなかったのよね。お会計は幸福を買ってるとは思えない値段だった。
それが逆に不安にさせた。店を出ようをしたとき微かに
「お幸せに」
って聞こえた気がしたわ。
ちょっとして振り返ったら看板はしまわれてた。
家に帰って小瓶を開けてみたの。
小さな紙を取り出してみたら、文字が書かれてたの。
黒くて丸い可愛らしい字で
「信じるとは一番信用にならないこと」
って書いてあった。
高いところから落ちた感覚に襲われたわ。
フワって。きっと肩の荷が下りたのよね。そこからイキイキできるようになったわ。まぁ、ここにいるってことはまた壁にぶちあたったのだろうけど。
語り終わったあとケラケラとOLは笑った。
5年前はそうは行かなかったんだろうかきっと笑うことすら忘れていただろう。
自分を信じることは一番信用にならないんだろうか。
思考がぐるぐると回っていく。
もう何もわからない。
気がつけば俺は突拍子もなく涙していた。
そんな俺は他所に話を続けた。
「でもね、私今すごい幸せなのよ。このお店の…いえ、彼女のおかげで。」
視線を向けた先はふわりと笑う店員がいた。
「あなたが幸せなのはうちの商品のおかげですよ。」
その言葉は店員の本心じゃないように聞こえた。
「あなたの過去話でもしてみてはいかがです?」
店員がOLに提案する。確かに仕事を上がってるわけだし時間なら余裕にあるはずだ。俺も何故ここにいるのか知りたかったし、ちょうどいい機会だなと思い身を乗り出した。
「そうね、5年くらい前かしら。」
OLは静かに語りだした。その話は今のOLからは想像もつかないような不思議な感覚にかられる話だった。
~5年前~
新入社員という肩書もやっと薄れてきた頃のこと。
時間をかけて温めていた企画が納得の行くものになったから上司の出してみたの。
するとあれやこれやと文句をつけられた。
文章に全て書かれているのにもかかわらず、ね。
もう頭に来て。かっとなって書類を突きつけながら一つ一つ説明してやった。するとね、そのときはすんなりと受理されたの。私思い上がっちゃったわ。
そこから4,5ヶ月後のこと。
さっきの企画がいい感じに続いて会社の経営の手助けになった気がしていた私は調子に乗って新しい企画を立ち上げていたの。私の中では完璧な企画だった。部下の子もすごく褒めてくれたの。それで前と同じ上司に提出したの。ぐうの音も出ないでしょっていうくらいの顔で。
すると上司は笑顔でこういった。
「思い上がるな」
その言葉は私の心を打ち砕いた。企画を成功させたという自信とブランドを背負ってここまで来たのに、全てを否定された。
まだ辞めてないのよ。その会社。ずっといるんだけどね、上司は変わらないし私を見る目もその時と変わらない。見下すような冷たい目。
それから私は早く上がるようになった。今みたいな時間にね。そして度々ここに来るようになったの。
ここを見つけたのはそうね、あなたと同じ偶然。
家までの帰り道をどうしても短くしたくて路地に踏み入って地図を片手に近道を探したの。すると地図にない建物があってね。
ふと顔を上げたんだけどそのときに強い風が吹いてね。あまりにも強いものだったから思わず目を瞑ってしまったわ。それでね、また目を開けたらさっきまであったかはわからないけどここにたどり着いたの。
[量産型幸福販売所]
そんな看板を見たとき、私のための店だ、って思っちゃったの。自惚れやすい性格なのよねきっと。
すぐに駆け込んだわ。幸福を売っているってどういうことだってね。
その奥に彼女がいたの。優しいおっとりとした声で
「いらっしゃいませ」
って。
すごいボロさに後から気がついたわ。
しかも幸福っていくらで買えるのかもわかんないし。
少ししてから店の中に並ぶ小瓶に目を走らせていた。刺すような黒いものもあれば、包むように優しい色の緑だったり。何が幸福なのかはわからなかったけれどすごく心惹かれたわ。
「何をお探しでしょう」
突然話しかけられた。さっきまでいるって思ってた彼女を忘れるくらい見入ってたみたいでね。すごいびっくりしたの。でも何を買ったらいいとかわかんなかったから全部彼女に話したの。すると立ち上がって澄んだ空みたいな青い紙が入った小瓶を持って戻ってきた。
「そうでしたらこちらはいかがでしょう」
色以外に違いなんてわからない私はじゃあそれで、としか言いようがなかったのよね。お会計は幸福を買ってるとは思えない値段だった。
それが逆に不安にさせた。店を出ようをしたとき微かに
「お幸せに」
って聞こえた気がしたわ。
ちょっとして振り返ったら看板はしまわれてた。
家に帰って小瓶を開けてみたの。
小さな紙を取り出してみたら、文字が書かれてたの。
黒くて丸い可愛らしい字で
「信じるとは一番信用にならないこと」
って書いてあった。
高いところから落ちた感覚に襲われたわ。
フワって。きっと肩の荷が下りたのよね。そこからイキイキできるようになったわ。まぁ、ここにいるってことはまた壁にぶちあたったのだろうけど。
語り終わったあとケラケラとOLは笑った。
5年前はそうは行かなかったんだろうかきっと笑うことすら忘れていただろう。
自分を信じることは一番信用にならないんだろうか。
思考がぐるぐると回っていく。
もう何もわからない。
気がつけば俺は突拍子もなく涙していた。
そんな俺は他所に話を続けた。
「でもね、私今すごい幸せなのよ。このお店の…いえ、彼女のおかげで。」
視線を向けた先はふわりと笑う店員がいた。
「あなたが幸せなのはうちの商品のおかげですよ。」
その言葉は店員の本心じゃないように聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる