絵画一族

坊主方央

文字の大きさ
上 下
1 / 4

やべぇヤツらのご対面

しおりを挟む
 白い部屋はシミひとつありません。何かあるとするならば、それはこの部屋の椅子に座っている男女4人でしょう。

 椅子に座って眠っておりますが、次第に4人は一斉に目を覚まします。

 「ここは…」
 「んあ?もうアトラクションの中なのだ?」
 「私の蕎麦はどこでしょう」
 「…」

 4人は重たい瞼を開けて、辺りを少しだけ見渡しますが何もありません。机と椅子だけというシンプルな部屋です。

 「ここはどこだ?お前らは誰だ?なんで俺はここにいるんだ?今は何時だ?おいおいスマホも財布もないぞ?」
 「それはあちきの台詞なのだ。あちきが友達とお揃いで買ったポップコーンケースがないのだ。これは何かの実験なのか?答えるのだ!」

 眼鏡の男が慌てています。唐突にこの部屋に来たので、混乱しているのでしょう。それにピンク髪の女の子が彼を犯人扱いしています。

 「まぁまぁ、まずは落ち着こうね」

 金髪の男が2人を落ち着かせますが、まだ興奮は収まりません。

 「落ち着けるわけないだろう。こんな部屋に閉じ込められて…俺は本屋に居たはずなのに、なぜこんな所にいるんだ」
 「そこのメガネは一旦黙るのだ、初対面の相手には自己紹介が基本なのだ」

 ピンク髪の女の子が眼鏡の男を指さして、黙れとボディランゲージで訴えます。彼女は相手の事を知る為に、まず手始めに自己紹介をするのでした。

 「なので、あちきが最初に話すのだ!」
 「こんな状況でか?まぁ、相手の情報を知るのも重要か」

 眼鏡の男は何となく納得した様子でした。そして白い部屋に女の子の声が響くのでした。

 「あちきは薫田かおるだあるじなのだ。見ての通りの花のJKというやつなのだ。ここに来る前は、友達とディスティニーランドで遊んでいたのだ」
 「変な名前だな」

 薫田あるじはとても整った顔をしており、そして小学生と見間違えるほど小さいです。ピンク髪のボブで、両サイドには三つ編みに白いリボンがつけられています。

 また、彼女の首には赤いチョーカーがつけられています。

 そして、眼鏡の男の発言に薫田あるじは少し腹が立ちました。同年代の子には言われていても慣れていますが、大人には言われた事がなかったからです。

 「あちきには敬称をつけるのだぞ」
 「よろしくお願いします、あるじちゃま」

 一言しか喋っていない茶髪の女が喋りました。見た目通り、普通といった感じの女です。

 「次は君かな」
 「俺か、俺は針口裕精はりぐちユウセイだ。来る前には本屋で立ち読みをしていた」

 金髪の男が針口裕精の方を見ました。

 針口裕精は顔つきはキツく、黒い眼鏡をしています。七三分けの髪でプライドが高そうにみえますが、服装はとてもラフです。

 「平日の昼間にですか?」
 「あぁ」
 「無職なのか?」

 薫田あるじの発した、無職という言葉に彼は眉間をひそめます。そして眼鏡をクイッと持ち上げた後に、早口で言いました。

 「昨今の不景気に飲み込まれてリストラされたんだ。求人募集の雑誌を読んでも良い職は見つからない、こんな所に来てしまう。全く最低な日だな今日は」
 「散々だね」

 金髪の男が彼に同調しますが、彼は少し怖がっています。何せ180cm以上もある大柄の男で、顔にかかった髪のせいで表情が良く見えないからです。

 「次はニアミン、外国人。ヴェニアミン・レンチノヴィチ・ハバロフ、長いからニアミン。来る前は休憩していた」
 「それで保育士なのか…」
 「ニアミンは良い奴だから」

 ヴェニアミン・レンチノヴィチ・ハバロフ。ここからは略してヴェニアミンと記載します。

 ヴェニアミンは青と黄色のエプロンに手首には包帯、そして黒い手袋をしており、長い金髪は彼の肩あたりで跳ねまくっています。

 「次は私ですね。私は蝦蛄しゃこエビ菜と申します、広告代理店のOLです。来る前はお昼に蕎麦を頂いていました」
 「全く共通点がないのだ、なんでこの4人が集められたのか不思議なのだ」

 染められた茶髪の髪はまとめられており、灰色のスーツを身にまとっています。いたって普通のOLです。

 そして薫田あるじはこの4人が何故集められたのかを考えますが、何も出てきませんでした。自己紹介を終えると蝦蛄エビ菜は、

 「お冷を飲んでいる時にここに来ましたので、壁で水分補給します」

 と言って彼女の後ろにある壁を舐め始めました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結済】僕の部屋

野花マリオ
ホラー
僕の部屋で起きるギャグホラー小説。 1話から8話まで移植作品ですが9話以降からはオリジナルリメイクホラー作話として展開されます。

○○しないと出られない部屋に閉じ込められたんだけど、なんならでたくない

砂澄
ライト文芸
これが噂の○○しないと出られない部屋?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2024/12/22:『くらいひ』の章を追加。2024/12/29の朝4時頃より公開開始予定。 2024/12/21:『ゆぶね』の章を追加。2024/12/28の朝8時頃より公開開始予定。 2024/12/20:『ゆきだるま』の章を追加。2024/12/27の朝4時頃より公開開始予定。 2024/12/19:『いぬ』の章を追加。2024/12/26の朝4時頃より公開開始予定。 2024/12/18:『つうち』の章を追加。2024/12/25の朝4時頃より公開開始予定。 2024/12/17:『のぞくがいこつ』の章を追加。2024/12/24の朝4時頃より公開開始予定。 2024/12/16:『じゅうさん』の章を追加。2024/12/23の朝4時頃より公開開始予定。

処理中です...