お酒の力を借りまして~隠れイケメン陰キャの俺がお酒の力を借り、大学一の美人な酒豪彼女が出来ました~

小鳥遊

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2章瓶 お酒の力を……

18杯目 陰キャな僕と陽キャな君

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「なんでお前みたいな陰キャ野郎が、根明さんと名前で呼び合ってるんだよ! お前と根明さんじゃ住む世界が違うんだよ!」
「そうだそうだ!」
「お前何様だよ!」

 学科一のイケメン君は、声を荒げて言う。名前は知らない。学科の中では主役級の人物なのだろうが、僕の中ではモブでしかないイケメン君。一々そんな人の名前を覚えている人もいないだろう。そもそも、自分が親しくなれないからって、僕に当たって来るなって話だよね。本当に。

 何があったのかは、少し前に遡るとしよう。


 僕は今日、珍しく大学に行くのが待ち遠しかった。朝起きて、歯を磨き、身支度をして、朝ごはんを済ませて、鼻歌を奏でながら大学へと向かう。何故そんなことをするのかって? そんなのは決まっている。彼女に会うためだ。

 軽い足取りで家を出た僕は、最寄駅で偶然彼女と会った。行き先が同じと言うこともあり、一緒に向かうことになる。電車に乗り込み、大学までの電車内。僕は彼女と楽しく話していた。

「……か、陰雄くん、この前大学3日も休んでどうしたの?」
「あ、あぁ。ちょっと体調崩してて……」
「そうだったんだ! ずっと来なかったから心配しちゃったよ…………単位大丈夫なのかな? ってね。どう? ドキッとした?」
「………………」

 なんて言って笑う彼女に僕は、見惚れてしまっていた。すると彼女は恥ずかしそうに言う。

「……そんなに私の顔見て、何か変?」
「い、いや! そんな事ないよ! ちょっと綺麗だなって思って…………その髪飾りが」

 桜の花を模した髪飾り。あぁ。実に綺麗だ。僕は正直に伝えた。すると彼女は何か気に食わないことがあったのか、眉間にしわを寄せながら呟く。

「もう。か、陰雄くんにやり返された……むぅ」

 彼女はむぅって言いながら頬を膨らませる。何それ可愛すぎる。なんて思ったのを隠して僕は言う。

「ついやられたからやり返しちゃった……ごめんね」
「もう! そう言う時は、私の事よいしょしないと!! こう見えて単純だから、お世辞でも喜ぶんだからね! 私」
「それは胸を張って言う事なのか?」

 とまあ、こんな話をしている内に大学の最寄駅に着き僕達は電車を降りた。

 この時の僕達は気づいていなかった。同じ学科の人に見られていたことに……

 大学に着き、講義室に入った時だった。

「お前何様だよ!」

 誰かが誰かに怒っているのが聞こえた。朝から大変そうだな。と思いながらも、いつもの席に座ろうとした時だった。

「おい待てよ! お前に言ってんだよ! 陰キャ野郎が!」

 僕は怒鳴っていた人に手を掴まれる。突然のことでびっくりし、反射的に手が出そうになった。と言うのも、昔空手をやっていたのでその時の癖なのだが。でも流石にそれはまずいと思い、なんとか踏みとどまった。

 僕は振り返り、怒鳴ってきた人の方を向く。そこには、鬼の形相をした学科一のイケメン君が立っていた。

 
 そして現在。


「なんでお前みたいな陰キャ野郎が、根明さんと名前で呼び合ってるんだよ! お前と根明さんじゃ住む世界が違うんだよ!」
「そうだそうだ!」
「お前何様だよ!」

 学科一のイケメン君は声を荒げていた。
 本当に困るよね。そんな風に思いながらも、ことを荒立てる気もないので黙って聞いていた。大事なことだからあえてもう一度言おう。ね。

「ちょっと、黙って聞いてたら。か、陰雄くんが何したって言うのよ!」
「ね、根明さん……」
「大体さ、私が誰と仲良くしようが私の勝手でしょ? そもそも文句があるなら、私に言ってきなよ」
「い、いや一旦落ち着こ?」

 突然の彼女の怒りに、萎縮するイケメン君と仲間達。あえて言おう。名前は知らん。
 
 彼女は、そんな事にかまう事なく続ける。

「私と仲良くなれないのは、あなたたちが努力してないだけでしょ? それを棚に上げて、陰雄くんの事悪く言ってんじゃないわよ!!!」
「………………」

 彼女の怒りは、講義室内を沈黙へと追いやった。野次馬感覚で見ていた連中も、まさか学内一のみんなに優しい根明陽華がこんなに怒るとは思ってもなかった様で、皆呆然としていた。なんか気恥ずかしくなった僕は、言う。

「…………は、陽華さん? もうその辺で……」
「なんで? 私は友達を馬鹿にされたから許せないの! だから陰雄くんは少し黙ってて!」
「……は、はい」

 こっわ!!! 怖いんですけど! でも、そんな彼女も僕は好きだ。あ、決してドMじゃないからね。大事な事だからもう一度言おう。僕は決してしてドMじゃないから。

 それにしても、どうしたものか。どうしたら、彼女の怒りは鎮まるのか。僕にはわからない。んー。こうなったら、に頼むか。

 僕はそう思い、ある人物にメッセージを送る。
 その数分後、講義室のドアが勢いよく開き元気よく一人の女性が入ってきた。講義室内にいる人が皆、入口の方を見る。

「センパイ~! お待たせしました~! あなたのためにどこまでも。センパイ専属後輩・愛理ちゃん登場で~す☆」

 おいおい。もっとマシな登場の仕方はなかったのか……

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