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2章瓶 お酒の力を……
15杯目 僕の気持ちと私の勇気
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「はぁ……」
ふと、ため息を零した。僕には今、悩みがある。
根明さんそれに愛理との距離感、二人への気持ちがわからない。と言うものだった。僕は、過去の恋愛がトラウマになり、人を愛することが怖くなってしまっている。
どんな理由を並べても結果として、それは二人に対する気持ちからの逃げでしかない。僕は、二人と今の関係でいることで気が楽なんだと思う。最低な理由だな。と僕は、自室で一人考える。いい加減、二人への気持ちをハッキリしないとダメだろう。
本当は、分かってる。僕はもう彼女のことが好きなんだって……彼女は高校時代の頃の、あの事件の様な事をする人じゃないって事も理解している。ほんの少しのきっかけさえあれば……なんて、人任せな考え方をしては、それじゃダメだと否定する。一体僕はどうしたらいいのか……
そんな時だった……
──プルプルプル
僕のスマホが鳴る。相手はまだ見てないが、彼女らのどちらかだろう。なんで分かるかって? そんなものは簡単。何たって僕のスマホには、両親と、彼女ら二人の連絡先しか登録されていない。両親からは連絡してくる事はあっても、電話は滅多に来ない。ってなると、残された選択肢は家族以外の二人。と言うことになる。
「……よし」
覚悟を決めて、スマホを見る。するとそこには、『愛理』と表示されていた。スマホを手に取り、電話に出る。
「……も、もしもし」
『センパイ! 急にすみません……』
電話口で話す愛理は、心なしかいつもより元気が無いというか、少し声が震えていた。そんな愛理に僕は、要件を聞く。
「ああ大丈夫だよ。どうしたの?」
『その、話したいな。と思って』
「そう……なんだ」
『はい』
はい。で終わられると、話すことがなくなってしまうじゃないか。それでも、僕はせっかく電話をかけてきてくれたのだからと、言えてなかった大学の入学祝いを言う。
「そう言えば、遅くなったが、大学入学おめでとう」
『あぁ! センパイ祝ってくれなかったですからね!』
「うるさいな! 悪かったって」
『…………。やっぱり、あれ以来避けてますよね?』
「………………」
僕は愛理の、その言葉に何も言い返すことができなかった。あれ以来……つまり水族館の時の事だろう。避けているつもりはないのだが、無意識の内に、少し距離をとってしまっていたのかもしれない。そう思い僕は言う。
「正直、避けてるつもりはない。ただ、今まで通り関わるべきなのか、どうしたらいいのか分からなくなっていた……」
『成程……』
「うん」
『……今まで通りなんて嫌なのに』
「……っえ? なんて言った? 今少し電波悪いみたいで」
『何でもないです。お話ししてくれてありがとうございました』
「あぁ。またね」
『はい。また』
僕たちはそう言って、電話を終えた。「今まで通りは嫌」か。さっきはつい、聞こえなかったふりをしてしまったが。つまりはそう言う事なのだろう。今回愛理と電話をすることができたおかげで、僕は自分の気持ちに気づくことができた。
ずっと遠ざけてきたこの感情。すごく懐かしいこの気持ち。嫌な思い出が蘇るが、それでもどうしようも無く溢れてくる気持ち。
『僕は、根明陽華が好き』なんだと。
◇◇◇
「はぁ。また言えなかったなぁ」
私は一人、呟く。
私は、センパイに告白すると決めてから約半年。何も言うことができてない。それどころか、まともに会うこともできていない。さっきの電話で言った様に、センパイは水族館以降避けられていると感じるからで。
いい加減覚悟を決めなきゃ。と思っても、振られてしまったらどうしよう。と怖気付いてしまう。いつもそんな私に、落胆する。どうしたら、告白する勇気が出るのか……
私はそんな事を考えては、答えが見つからずに気持ちが沈む。
そんな時だった……
──コンコン
「愛理~? 入るわよ~!」
ノックと共に、ママが部屋に入ってくる。そんなママに私は言う。
「いつも言ってるじゃん! 返事するまで待ってよ……」
「どうしたの? 涙なんか流して」
……え? 涙? と思い私は、自分の目に手を当てる。すると、本当に涙が溢れていた。人間とは不思議なもので、涙が出ていることに気がづくと涙が止まらなくなってしまった。それに比例するように、私の心は告白したくても出来ない。と言う気持ちに押しつぶされかけていた。
「本当どうしたの? ママが聞くから話してみな」
「……告白したいの。でもできないの……その人は、高校生の頃に好きな人に酷い事をされてて、そこから人と関わらない様に過ごしてたの。でも、私にはその時に辛かった事全て話してて。でも……でも……」
私は、ママにいろいろ話した。だが、上手く纏めることが出来ず、それを聞くママは言う。
「落ち着いて。ゆっくりでいいから。ママは待ってるから。先に落ち着こ?」
そのママの言葉を聞き、私は更に涙が溢れ出す。そこからは、沢山泣いた。泣いて泣いて、泣きまくった。
今までの人生で最大級に泣いた私は、やがて涙が枯れたのか、涙は出て来なくなった。そこまで泣いた私は、ようやく落ち着きを取り戻し話を始めた。
「えっとね────」
告白したいけど勇気がでない事。センパイの過去のこと。センパイのことが好きな子がいる事。全てを話した。その間、ママは頷いて聞いててくれる。そして、話し終えるとママは口を開く。
「成程ね。ママもパパと付き合う前はそうだった。でもね、もし自分が勇気を出さずに何もしなかったら、誰かに好きな人をとられることになる。そんなことで後悔するなら、やるべきことはしてから後悔した方がずっとマシだよ」
「そう……だよね。告白しないで後悔は……したくない。ありがとう! 勇気を出して告白してくる!」
「頑張ってきな」
私はママの言葉に頷いて、家を飛び出しセンパイの家に向かう。
暗くなる住宅街を、胸の中で跳ねる心臓を抑えながら、ひたすらに走った。
ただ、センパイの家に向かって。
センパイのアパートの部屋の前に着き、私は覚悟を決めてチャイムを鳴らす。
────ピンポン
センパイが出てくるまでの数秒が、私の中ではとても長い時間に感じた。
「はい……って、愛理!? どうしたの?」
センパイは私を見ると驚いていたが、そんなセンパイに向かい一言。
『ずっと好きでした。私と付き合ってください』
ふと、ため息を零した。僕には今、悩みがある。
根明さんそれに愛理との距離感、二人への気持ちがわからない。と言うものだった。僕は、過去の恋愛がトラウマになり、人を愛することが怖くなってしまっている。
どんな理由を並べても結果として、それは二人に対する気持ちからの逃げでしかない。僕は、二人と今の関係でいることで気が楽なんだと思う。最低な理由だな。と僕は、自室で一人考える。いい加減、二人への気持ちをハッキリしないとダメだろう。
本当は、分かってる。僕はもう彼女のことが好きなんだって……彼女は高校時代の頃の、あの事件の様な事をする人じゃないって事も理解している。ほんの少しのきっかけさえあれば……なんて、人任せな考え方をしては、それじゃダメだと否定する。一体僕はどうしたらいいのか……
そんな時だった……
──プルプルプル
僕のスマホが鳴る。相手はまだ見てないが、彼女らのどちらかだろう。なんで分かるかって? そんなものは簡単。何たって僕のスマホには、両親と、彼女ら二人の連絡先しか登録されていない。両親からは連絡してくる事はあっても、電話は滅多に来ない。ってなると、残された選択肢は家族以外の二人。と言うことになる。
「……よし」
覚悟を決めて、スマホを見る。するとそこには、『愛理』と表示されていた。スマホを手に取り、電話に出る。
「……も、もしもし」
『センパイ! 急にすみません……』
電話口で話す愛理は、心なしかいつもより元気が無いというか、少し声が震えていた。そんな愛理に僕は、要件を聞く。
「ああ大丈夫だよ。どうしたの?」
『その、話したいな。と思って』
「そう……なんだ」
『はい』
はい。で終わられると、話すことがなくなってしまうじゃないか。それでも、僕はせっかく電話をかけてきてくれたのだからと、言えてなかった大学の入学祝いを言う。
「そう言えば、遅くなったが、大学入学おめでとう」
『あぁ! センパイ祝ってくれなかったですからね!』
「うるさいな! 悪かったって」
『…………。やっぱり、あれ以来避けてますよね?』
「………………」
僕は愛理の、その言葉に何も言い返すことができなかった。あれ以来……つまり水族館の時の事だろう。避けているつもりはないのだが、無意識の内に、少し距離をとってしまっていたのかもしれない。そう思い僕は言う。
「正直、避けてるつもりはない。ただ、今まで通り関わるべきなのか、どうしたらいいのか分からなくなっていた……」
『成程……』
「うん」
『……今まで通りなんて嫌なのに』
「……っえ? なんて言った? 今少し電波悪いみたいで」
『何でもないです。お話ししてくれてありがとうございました』
「あぁ。またね」
『はい。また』
僕たちはそう言って、電話を終えた。「今まで通りは嫌」か。さっきはつい、聞こえなかったふりをしてしまったが。つまりはそう言う事なのだろう。今回愛理と電話をすることができたおかげで、僕は自分の気持ちに気づくことができた。
ずっと遠ざけてきたこの感情。すごく懐かしいこの気持ち。嫌な思い出が蘇るが、それでもどうしようも無く溢れてくる気持ち。
『僕は、根明陽華が好き』なんだと。
◇◇◇
「はぁ。また言えなかったなぁ」
私は一人、呟く。
私は、センパイに告白すると決めてから約半年。何も言うことができてない。それどころか、まともに会うこともできていない。さっきの電話で言った様に、センパイは水族館以降避けられていると感じるからで。
いい加減覚悟を決めなきゃ。と思っても、振られてしまったらどうしよう。と怖気付いてしまう。いつもそんな私に、落胆する。どうしたら、告白する勇気が出るのか……
私はそんな事を考えては、答えが見つからずに気持ちが沈む。
そんな時だった……
──コンコン
「愛理~? 入るわよ~!」
ノックと共に、ママが部屋に入ってくる。そんなママに私は言う。
「いつも言ってるじゃん! 返事するまで待ってよ……」
「どうしたの? 涙なんか流して」
……え? 涙? と思い私は、自分の目に手を当てる。すると、本当に涙が溢れていた。人間とは不思議なもので、涙が出ていることに気がづくと涙が止まらなくなってしまった。それに比例するように、私の心は告白したくても出来ない。と言う気持ちに押しつぶされかけていた。
「本当どうしたの? ママが聞くから話してみな」
「……告白したいの。でもできないの……その人は、高校生の頃に好きな人に酷い事をされてて、そこから人と関わらない様に過ごしてたの。でも、私にはその時に辛かった事全て話してて。でも……でも……」
私は、ママにいろいろ話した。だが、上手く纏めることが出来ず、それを聞くママは言う。
「落ち着いて。ゆっくりでいいから。ママは待ってるから。先に落ち着こ?」
そのママの言葉を聞き、私は更に涙が溢れ出す。そこからは、沢山泣いた。泣いて泣いて、泣きまくった。
今までの人生で最大級に泣いた私は、やがて涙が枯れたのか、涙は出て来なくなった。そこまで泣いた私は、ようやく落ち着きを取り戻し話を始めた。
「えっとね────」
告白したいけど勇気がでない事。センパイの過去のこと。センパイのことが好きな子がいる事。全てを話した。その間、ママは頷いて聞いててくれる。そして、話し終えるとママは口を開く。
「成程ね。ママもパパと付き合う前はそうだった。でもね、もし自分が勇気を出さずに何もしなかったら、誰かに好きな人をとられることになる。そんなことで後悔するなら、やるべきことはしてから後悔した方がずっとマシだよ」
「そう……だよね。告白しないで後悔は……したくない。ありがとう! 勇気を出して告白してくる!」
「頑張ってきな」
私はママの言葉に頷いて、家を飛び出しセンパイの家に向かう。
暗くなる住宅街を、胸の中で跳ねる心臓を抑えながら、ひたすらに走った。
ただ、センパイの家に向かって。
センパイのアパートの部屋の前に着き、私は覚悟を決めてチャイムを鳴らす。
────ピンポン
センパイが出てくるまでの数秒が、私の中ではとても長い時間に感じた。
「はい……って、愛理!? どうしたの?」
センパイは私を見ると驚いていたが、そんなセンパイに向かい一言。
『ずっと好きでした。私と付き合ってください』
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