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帰宅!

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いやー、成功してよかった。
実はアイコにかかった支配ドミネイトを解除できるか、曖昧だったんだよね。最悪、アイコが消し飛ぶ可能性も、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけあったんだけど、それは言わぬが華というもの。

真実を伝えたら、怒られるかもとかいう、やましい気持ちではないからね?


まあ、少女の人生を救ってあげたわけだし?
盛大に感謝の言葉をくれても、いいんだよ?

すると、なぜかアイコが握手している俺の手を力強く握ってくる。

「あれぇ、どうしたの?」

「いやねぇ~、奴隷から解放してくれたことはありがとうって思ってるんだよ? でもさぁー、あれはどういうことです!?」

アイコが指さす方向には、クラーケンだったと思われるものが、消し炭となっていた。

「わ・た・し! クラーケンが好きだって、いったじゃん! どうして消し炭になってるのよ!」

「そ、それはアイコを救うためにしかたなく・・・・・・」

「はいうそーー。君、そんなに強いなら、最初から私だけ助ける方法いくらでもあったよね? わざわざクラーケンも消し炭にする必要なくない?」

「・・・・・・・いやいや、というか、クラーケンはまじょの命令で使役しようとしてただけでは?」

「モンスターが好きなのは本当ですぅーーー!」

こ、こいつ!
人が折角善意で助けてやったというのに、なんて図々しい態度だっ。
それに、俺はクラーケンを完全に消滅させてはいない!

「ほ、ほら、ピーちゃんがクラーケンの足を一本確保してるよ」

見れば、事前に足を一本だけ引きちぎっていたピーちゃんが、自慢げにクラーケンの巨大な触手を手で掲げてアピールしている。

しかし、アイコはそれが気に食わないのか、余計に声を張り上げる。

「それは! 君たちが! 食べるために確保してただけでしょー!」

うわわわ、なんだこの女ぁ。
こっちは命すくったんだから、トントンでいいじゃないか。

力ではかなわないと自覚してるからか、アイコが俺のキュートなボディーを指先でこちょこちょとくすぐってくる。

「あっひゃあっひゃ、や、やめろぉ」

「やめません! あやまってくれるまで続けますぅ」

「ご、ごめん。おれがわるかったから!」

「よろしい」

ようやくアイコから解放される。
ぜえ、ぜえ、幼児相手にこちょこちょなんて、コイツに常識ってもんはないんか!
とんでもない女だ!

その後、全部終わったことに気が付いたピーちゃんとリリアがこちらに近づいてくる。俺は、戦いの最中に起きた出来事を全部説明した。

理由を話すと、皆事情を理解してくれて、全てが丸く収まった。

「よし、じゃあおれ達は目的をはたしたから、かえるとするかなー」

未だに睨みつけてくるアイコから逃れるため、俺は即座にピーちゃんに飛び乗ろうとジャンプする。スーパーハードボイルドの幼児は、去り際も完璧なのさ。

だが、

「ちょっと待ったぁ!」

「うえ!」

後ろから漆黒のタオルケットをアイコに掴まれてしまい、抱きかかえられた。

「な、なんだよ。もう終わったんだからいいだろ?」

そう不満をぶつけるが、アイコは頑なに譲らない様子で、俺を逃がさないようにぎゅっと抱きしめてくる。

「全然、良くありません! 君のおかげで私は魔女の弟子という職を失いました! お金も全然ないし、職歴もありません。このまま放置されて、私に今後どう生きれというのです?」

「しらないよ。せっかく自由になったんだしすきに選択しなよ。そこそこ強いんだから、冒険者でもすればー?」

「いっやです!」

アイコは片手で杖を空に掲げて堂々と宣言する。

「ハッキリいいます! わたしはっ、ずっと縛られた人生だったからこそっ、二度と働きたくないのですっ!」

は、はあ!?
なんだよそれ!
それが年下の幼児にいうことかよっ。
ニートしたければ勝手にしろ。

「聞けばルーク君、君は曲がりなりにも貴族ということ。つきましては、私をあなたの家で養っていただきたい」

「ふざけんなっ、ただですら貧乏なのに、趣味をこじらせた変態少女をなんで我が家で保護しなきゃいけないんだ!」

「だって~もしネイルニスに私が生きてるのバレたら問答無用でころされちゃうもん。だから、せめて危険がなくなるまでは、私を守ってください。それが、私を救った君の責任なのです」

ああいえばこういう。
どうして、俺のまわりには、こんなのばかり集まるのだろうか。

助けを求めて、リリアをみれば全然興味なさそうに、はやく帰りたそうにしている。

「はあー、分かったよ。しばらくのあいだだけだからね?」

「やったー。ありがとうございます!」

アイコが嬉しそうにわらう。
そして、さらに

「あっ、ついでに私も弟子にしてください。魔女に襲われたら返り討ちにできるくらい強くなりたいので」

と、言う。
あまりに厚かましい少女を、俺は無言で睨む。

アイコの発言が無視できなかったのか、リリアが手をあげる。

「一番弟子は私!」

(二番は我だぞー)

「と、いうことは私は三番目ですね! これからよろしくお願いします。ルーク師匠」

「はあ、もうなんでもいいよ」

俺は諦めて、そう言った。
はやくおうちに帰りたい。


話がまとまり、ようやく帰宅できると思った、その時。

「おーい!」

「私たちも連れて行って!」

そう言って近づいてきたのは陽炎の二人だった。
次から次へとどうなってるんだっ!?

「実は気絶したフリをして途中から君たちの戦いを見ていたんだ!」

「私も、君の元で修業をつみたい。ぜひ連れってくれ!」

レイン、リンネがキラキラした目でそうお願いしてくる。

もう・・・・・・なんかめんどくさいな。
一人増えたら、二人増えるのも同じだろ。別にこいつらは、アイコと違ってニートじゃないしいいだろ。

ああ、はやく母上に会いたい。
俺は陽炎に適当に返事をして承諾した。

行きは一匹と二人。帰りは一匹と五人の大所帯。
一期一会の旅は道ずれ、ここで出会ったのも何かの運命。

初めての遠足で、俺はどっと疲れが襲ってきて、ピーちゃんの背中で、泥のように眠るのだった。

―――次回タコパ!
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