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ドムトム領 山岳地帯
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ドムトム領の山岳地帯に、俺達は訪れていた。
現在、周囲に人はいないのでピーちゃんも一緒だ。
ここに来るまでの道のりも、ピーちゃんの背中にのってショートカットしてきた。すごく便利だ。ほんとに、出会った時に殺さないでよかったと、つくづく思うよ。
(主よ、ハイキングは気持ちがいいなあガハハハ)
のっしのっしと、邪魔な木を倒しながらピーちゃんが歩く。
(おいおい、あまり木を倒すなよ。環境破壊はよくないぞ)
(わかった! 気を付けて歩こうぞ)
注意すると、上機嫌かつ従順に従うレッドドラゴン。完全に野生の心を失っている。こいつにはプライドとかないんだろうか? すると、隣を歩いていたリリアが不満そうに口を開く。
「ねえ、結局クラーケン探しにここまできちゃったけど本当によかったの? アイコさんには諦めるって言ったのに・・・・・・」
「だ、だいじょうぶだよ。お、おれはつねに1000手さきをよんでこうどうしてるからね。とっさのいいわけも考えてある」
そう、アイコにはああ言ったが、あきらめの悪い俺は忠告を破り山岳地帯にやってきた。約束を破ったのが悪かったのか、終始リリアが厳しい視線を向けてくる。やりづらいったらありゃしない。
そりゃーね、俺もアイコの夢の話を聞かされた後では、八本足のヌルウネ君を殺そうとまでは思わないよ?
でもさー・・・・・・俺はやっぱ諦めきれないっ
だって、イカロス爺さんの話を覚えてるか?
外はカリカリで中はフワフワの食べ物なんて・・・・・・聞いたこともないっ!
どんな味で、どんな触感がするのか、想像できる?
いんや無理だね。こちとら、伊達に貧乏貴族してない。食卓に並ぶのは痩せて骨ばった川魚と、かったいパンだよっ!?
外はカチカチ、中もカチカチだぁ。
石じゃないんだから。そんな物ばかり食べさせるのは愛する家族に忍びない。
いいじゃん。
足8本もあるんだからさ、少しくらい。
なにも3本とは言わない。たったの1本でいいっ。
最悪、一本なら引っこ抜いてもアイコは気づかないって。どんくさそうだったし。
・・・・・・と、声をだいにして叫びたかったが、流石にそれは出来なかった。これ以上リリアに嫌われても大変だからね。
だから、もちろんリリア用の言い訳も用意してある。
「いいかリリア。おれはヌルウネ君をたおしにきたのではないのだよ」
「じゃあなに?」
「リリアとピーちゃんの修行だよ。ヤマにはつよいモンスターがたくさんいるみたいだからね。いいれんしゅうになるとおもって」
そうこう言ってる内に、目の前に大きな熊のモンスターが現れた。
背中から炎が吹き上げている。
あれは、冒険者が噂していたバーニングベアというやつか?
ちょうどよさそうな相手だ。
俺はリリアに向かって言う。
「とりあえず、あれとたたかってみてよ」
リリアは、バーニングベアをジロジロ観察して
「・・・・・・わかった。やってみる!」
と急にやる気を出す。
すると
(主! さすがにアレはリリアには無理だ。死んでしまうぞ)
とピーちゃんが大騒ぎする。
「だいじょうぶ、かいふく魔法かけながら戦わせるから。だからリリアも気にせずつっこんでいきな」
俺が軽い感じでいうと、リリアは「うん」とうなずき、持ってきた脇差を構える。ちなみに、これはジョーカーから譲り受けた刀だ。いまの俺には大きすぎるからリリアに、旅の間だけ貸し与えている。
バーニングベアに向かっていくリリアを、ピーちゃんはオロオロしながら見守っている。
(あ、悪魔だ。悪魔がここにるぞぉ。普通幼馴染にそんなことする奴おる!? 主、はやく辞めさせるのだ!)
うるさいなぁ。
だって、こうでもしないと人間が人外のように強くなる方法ないじゃん。
「あ、そうだ。あの魔力のコントロールもわすれずにね。さいしょはできないと思うから、リリアにはせんとう中、おれの圧縮した魔力をわたしつづけるから頑張ってコントロールしてみて。失敗したら魔力暴走でからだが、ばくはつするから気を付けるように」
「あい」
魔力って不安定で意外とあぶないんだよね。
俺も初めて自分の魔力を確認した時、大量の魔力垂れ流しにした記憶がある。あれ、俺だから出来たけど、普通の人があんなことしたら、多分周囲一帯弾け飛んでたと思う。
まあ、リリアなら俺のサポートもあるし、センスも高そうだからいけるっしょ。
「あ、ぴーちゃんは邪魔だから、てきとうにえものさがしてたたかってきて。魔法も魔力コントロールできるまで禁止ね」
(なんか我だけ扱い雑くない?)
そういって、ピーちゃんは一人で寂しそうに飛び立っていった。
◇
「ハア、ハア、ハア・・・・・・うっ」
ボロボロのリリアが、その場でうずくまる。
周囲の木々はほとんどなぎ倒されており、その中心には息絶えたバーニングベアが横たわっている。結局、一匹たおすのに6時間以上かかってしまった。とっくに日は落ちて、夜になっている。
倒すまでに、リリアは何度もバーニングベアの攻撃を受けて大きな怪我を負った。
その度に、俺が治してやったわけだが・・・・・・
倒れたリリアに近づく。息をするのも苦しそうだ。
少しでも楽になればと、背中をなでてやる。
「いつでもやめていい。べつにリリアが強くなくたって、俺はさいきょうだから、困らないし、リリアがこまったら、あの夜の日みたいにすぐにかけつける」
呼吸も絶え絶えなリリアだが、力強く首を横に振る。
「わたしのほうがお姉さんだから・・・・・・」
そう言って、リリアは力尽きて眠ってしまった。
俺はリリアを担ぎ、安全そうな場所に移動する。
お姉さんだから・・・・・・
その後につづく言葉は一体なんだろうか。
お姉さんだから俺を守る?
お姉さんだから諦めない?
答えはわからない。
ただ、どちらもリリアなら言いそうだなと思った。
生まれた時から最強だった俺には、自分の身体を痛めつけてまで強くなろうとするリリアの気持ちを、本当の意味で理解してあげることは難しいのかもしれない。それでも、リリアが修業をしたいと望む限りは、幼馴染として最後まで全力で付き合うつもりだ。
そういう約束だしね。
その後、俺は一人で修業していたピーちゃんと合流して一緒に眠りについた。
―――翌朝。
「君たち! 子供がこんな場所でなにしてるんだ!」
偶然通りかかった2人組の冒険者の声で目が覚めた。
現在、周囲に人はいないのでピーちゃんも一緒だ。
ここに来るまでの道のりも、ピーちゃんの背中にのってショートカットしてきた。すごく便利だ。ほんとに、出会った時に殺さないでよかったと、つくづく思うよ。
(主よ、ハイキングは気持ちがいいなあガハハハ)
のっしのっしと、邪魔な木を倒しながらピーちゃんが歩く。
(おいおい、あまり木を倒すなよ。環境破壊はよくないぞ)
(わかった! 気を付けて歩こうぞ)
注意すると、上機嫌かつ従順に従うレッドドラゴン。完全に野生の心を失っている。こいつにはプライドとかないんだろうか? すると、隣を歩いていたリリアが不満そうに口を開く。
「ねえ、結局クラーケン探しにここまできちゃったけど本当によかったの? アイコさんには諦めるって言ったのに・・・・・・」
「だ、だいじょうぶだよ。お、おれはつねに1000手さきをよんでこうどうしてるからね。とっさのいいわけも考えてある」
そう、アイコにはああ言ったが、あきらめの悪い俺は忠告を破り山岳地帯にやってきた。約束を破ったのが悪かったのか、終始リリアが厳しい視線を向けてくる。やりづらいったらありゃしない。
そりゃーね、俺もアイコの夢の話を聞かされた後では、八本足のヌルウネ君を殺そうとまでは思わないよ?
でもさー・・・・・・俺はやっぱ諦めきれないっ
だって、イカロス爺さんの話を覚えてるか?
外はカリカリで中はフワフワの食べ物なんて・・・・・・聞いたこともないっ!
どんな味で、どんな触感がするのか、想像できる?
いんや無理だね。こちとら、伊達に貧乏貴族してない。食卓に並ぶのは痩せて骨ばった川魚と、かったいパンだよっ!?
外はカチカチ、中もカチカチだぁ。
石じゃないんだから。そんな物ばかり食べさせるのは愛する家族に忍びない。
いいじゃん。
足8本もあるんだからさ、少しくらい。
なにも3本とは言わない。たったの1本でいいっ。
最悪、一本なら引っこ抜いてもアイコは気づかないって。どんくさそうだったし。
・・・・・・と、声をだいにして叫びたかったが、流石にそれは出来なかった。これ以上リリアに嫌われても大変だからね。
だから、もちろんリリア用の言い訳も用意してある。
「いいかリリア。おれはヌルウネ君をたおしにきたのではないのだよ」
「じゃあなに?」
「リリアとピーちゃんの修行だよ。ヤマにはつよいモンスターがたくさんいるみたいだからね。いいれんしゅうになるとおもって」
そうこう言ってる内に、目の前に大きな熊のモンスターが現れた。
背中から炎が吹き上げている。
あれは、冒険者が噂していたバーニングベアというやつか?
ちょうどよさそうな相手だ。
俺はリリアに向かって言う。
「とりあえず、あれとたたかってみてよ」
リリアは、バーニングベアをジロジロ観察して
「・・・・・・わかった。やってみる!」
と急にやる気を出す。
すると
(主! さすがにアレはリリアには無理だ。死んでしまうぞ)
とピーちゃんが大騒ぎする。
「だいじょうぶ、かいふく魔法かけながら戦わせるから。だからリリアも気にせずつっこんでいきな」
俺が軽い感じでいうと、リリアは「うん」とうなずき、持ってきた脇差を構える。ちなみに、これはジョーカーから譲り受けた刀だ。いまの俺には大きすぎるからリリアに、旅の間だけ貸し与えている。
バーニングベアに向かっていくリリアを、ピーちゃんはオロオロしながら見守っている。
(あ、悪魔だ。悪魔がここにるぞぉ。普通幼馴染にそんなことする奴おる!? 主、はやく辞めさせるのだ!)
うるさいなぁ。
だって、こうでもしないと人間が人外のように強くなる方法ないじゃん。
「あ、そうだ。あの魔力のコントロールもわすれずにね。さいしょはできないと思うから、リリアにはせんとう中、おれの圧縮した魔力をわたしつづけるから頑張ってコントロールしてみて。失敗したら魔力暴走でからだが、ばくはつするから気を付けるように」
「あい」
魔力って不安定で意外とあぶないんだよね。
俺も初めて自分の魔力を確認した時、大量の魔力垂れ流しにした記憶がある。あれ、俺だから出来たけど、普通の人があんなことしたら、多分周囲一帯弾け飛んでたと思う。
まあ、リリアなら俺のサポートもあるし、センスも高そうだからいけるっしょ。
「あ、ぴーちゃんは邪魔だから、てきとうにえものさがしてたたかってきて。魔法も魔力コントロールできるまで禁止ね」
(なんか我だけ扱い雑くない?)
そういって、ピーちゃんは一人で寂しそうに飛び立っていった。
◇
「ハア、ハア、ハア・・・・・・うっ」
ボロボロのリリアが、その場でうずくまる。
周囲の木々はほとんどなぎ倒されており、その中心には息絶えたバーニングベアが横たわっている。結局、一匹たおすのに6時間以上かかってしまった。とっくに日は落ちて、夜になっている。
倒すまでに、リリアは何度もバーニングベアの攻撃を受けて大きな怪我を負った。
その度に、俺が治してやったわけだが・・・・・・
倒れたリリアに近づく。息をするのも苦しそうだ。
少しでも楽になればと、背中をなでてやる。
「いつでもやめていい。べつにリリアが強くなくたって、俺はさいきょうだから、困らないし、リリアがこまったら、あの夜の日みたいにすぐにかけつける」
呼吸も絶え絶えなリリアだが、力強く首を横に振る。
「わたしのほうがお姉さんだから・・・・・・」
そう言って、リリアは力尽きて眠ってしまった。
俺はリリアを担ぎ、安全そうな場所に移動する。
お姉さんだから・・・・・・
その後につづく言葉は一体なんだろうか。
お姉さんだから俺を守る?
お姉さんだから諦めない?
答えはわからない。
ただ、どちらもリリアなら言いそうだなと思った。
生まれた時から最強だった俺には、自分の身体を痛めつけてまで強くなろうとするリリアの気持ちを、本当の意味で理解してあげることは難しいのかもしれない。それでも、リリアが修業をしたいと望む限りは、幼馴染として最後まで全力で付き合うつもりだ。
そういう約束だしね。
その後、俺は一人で修業していたピーちゃんと合流して一緒に眠りについた。
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