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エピローグ

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 「ルークあーそーぼー!」

 聞きなれた言葉に目を覚ました。
やれやれ、誘拐された次の日だというのに、元気いっぱいだ。

俺はいつものモーニングルーティンで支度をはじめる。
そうそう、昨日ジョーカーから貰った刀は屋根裏に隠しておいた。
部屋に置いてたら父上と母上に、俺が不良少年になったと勘違いされてしまうからね。

冒険者登録してるのも隠しているから、絶対に見つかるわけにはいかないのだ。

支度を終えてリビングにいくと、リリアと母上がいた。

「リリアちゃん、昨日は大変だったね」

労うように、母上がリリアの頭をよちよちしている。リリアも嬉そうだ。


「セニョールが助けてくれたから平気」

「セ、セニョール? 大丈夫、怪しいひとじゃない? 本当になにもされなかった?」

「なにもされてない。気がついたら隣で寝てた」

リ、リリアッ!

なんて紛らわし言い方をすんだ。それでは勘違いされるだろ。
まるで、俺があのロリコン冒険者みたいじゃないか。は、母上、セニョールは不審者ではありません! カッコいい正義の味方ですよ?

「ああ、可愛いそうなリリアちゃん、抱き締めさせてちょうだい」

「あっ、おはようセニョール」

「えっ」

母上が驚いた顔で振り向く。

「びっくりした~、クーちゃんじゃない。てっきり不審者が現れたかと思ったわ」

はっはっはー、そ、そんなわけないじゃないですかぁ。
ルークは良い子なので、夜な夜な家を抜け出すような不良少年ではありません。安心してください母上。

「だめでしょ、リリアちゃん。クーちゃんに変なあだ名をつけちゃ、めっ、ですよ」

そ、そうだ、そうだ!
おお、やはり母上はだけは、わかってくれている。まさに天女のようだ。

「でもルークが自分でセニョールって──」

「り、りりあ、はやくお外で遊ぼっ」

慌ててリリアの手を握り、引っ張って外につれていく。
この恩知らめ!

このままでは、なにを言い出すつもりか分かったもんじゃない。カッコいい月下の騎士セニョールが、1才の子供なわけないだろ。

「クーちゃん、お昼には帰ってくるのよ!」

「はい、ははうえ。いってきます!」

「いってらっしゃーい」







町の公園で、俺はリリアに説教をする。

「りりあ、だめじゃないか。ははうえの前で変なあだ名をつけないでよ」

「でも、ルークが自分でいったんじゃん」

「ななな、なんのこと? おれ、きのうのよるは寝てたから分かんないなー」

「誰も夜に会ったなんて言ってないのに、なんで知ってるの?」

なん・・・・・だと?

この幼女ハメやがッた、策士ッ、策士だなッ!?
くそぉ、やるじゃないかリリア。

ジョーカーの数百倍は手強い。だが認める訳にはいかないッ、月下の騎士セニョールは、謎深き男って設定なのだからッ 秘密のヒーローは、秘密だから格好いいの、バレたらカッコ悪い!

「と、とにかく、ひとまえで変なことをいうのやめておねがい」

「うーん、まぁいいけど。わたしもルークにお願いあるし」

「お願い? りりあが?」

珍しい──というか、初めてだな。
いつもわがまま言わずに、一緒に遊んでくれるのに。どんなお願いだろうか?

「わたしにルークの剣術を教えて欲しい・・・・・・あの、無限一刀流とかいうの」

「ほえっ、あ、あれはほら、あれじゃん? 騎士ごっこのときに適当に言ったやつだよ?」

「昨日、マルティネスのおじさんと草原で戦うの見てた」

「ふぇぇぇぇ!?」

見てたってあの戦いを!?

嘘だろ、てことはつまり、わざわざリリアの家に送り届けたってのに、こっそりついてきたってこと?

君さぁ、なんてことしてるんだよ。
はっ、それはルール違反ってもんだよ?
颯爽と現れ、颯爽と去る謎のヒーローは、追跡しちゃいけないって業界のルールで決まってるの。掟やぶりすぎでしょ・・・・・

リリアのやつ、いつの間にそんな非行少女になってしまったのか。
けど、見られたならしょうがないか。どうせ、いつも一緒にいるリリアにはその内バレてたろうし。

「わたしも、あのピカーって十字架に光るやつやりたい」

「ふふふ、りりあは中々めのつけどころがいいね」

いきなり最終奥義に手をだそうなんて肝がすわってるぜ。
流石は、俺の幼なじみ。しかし教えるとなると大変だな。無限一刀流は才能ごり押しの最強剣術。

それをリリアにも扱えるようにするには、限界まで希釈して薄めないと無理だ。出来るかは分からないけど、幼なじみのために、この最強の俺が稽古をつけてやるか。

「ふぅ、りりあは本当にてがかるよ。無限一刀流の修行はひどくきびちいものだよ?」

「ルークを守るのはわたしの役目、あの奥義できっと大空を輝かせてみせる」

そう言って、リリアは満面の笑みで両腕を青い空に向かって伸ばした。少女の可愛らしい笑顔に、太陽のまぶしい輝きがふりそそぐ。

こうして、俺は幼なじみの弟子ができてしまった。
いつの日にか、リリアにも無限一刀流が扱える日がくるのだろうか・・・・・・・・・

くればいいな。
俺は期待で胸を膨らます幼馴染をみて、心からそう思った。




深夜。
俺はいつものごとく家を抜け出して、ジョーカーが滞在していた宿に訪れていた。

死ぬ間際、俺がジョーカーに聞いたこと。
それはあいつの財産のありかだ。

冒険者狩りなんて野蛮な真似してたのだから、それなりに金を持っていると思ったんだ。

教わった通り、ベッドの下を探るとたんまりと金貨が入った革袋が出てきた。
ジョーカーは、俗物なんて言ってたが俺にとって家族のために金は大切なものだ。これでようやく、母上や父上に美味しい物を食べさせることが出来る。


(悪いねジョーカー、遠慮なく貰っていくよ。どうせ死んだら使えないんだし、いいよね)

まだまだ小さい手に収まり切れないほどの金貨。
もしかしたら、もっと稼げば我が家も底辺貴族から抜け出せるかもしれない。

そうなるために、もっと冒険者として稼いでいこう。
リリアも、強くなることに乗り気だし本気で鍛えてみるか。
きっと、最強の冒険者パーティーとして語り継がれるのもそう遠い未来ではハズさ。

なんの因果か知らないが、成り行きとはいえ俺はこの世に生まれたんだ。
この最強の力を使って、家族と友達と一緒に最高に楽しく、最高に幸せな人生を歩んでやろうじゃないか。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます!

次回は、短いエピソードの幕間を挟んでその後から新しい章がスタートします。

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